50年愛される「恵文社 一乗寺店」の魅力とは?

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学生の街・京都にある多くの書店のなかでも、個性派書店として名高い「恵文社 一乗寺店」。街の中心部から少し離れた一乗寺に位置しながら、芸術文化に精通する人を中心に、観光客や学生、ご近所の家族連れなど幅広い層の人々が訪れています。2025年に創業50周年を迎える書店の、長きにわたり愛されてきた魅力をご紹介します。

なぜ一乗寺に創業?

創業は1975年。当時20代だったオーナーが「一般的な書店ではなく、他と違う書店を作りたい」と開業に選んだ場所は一乗寺でした。近くに芸術系の大学があり、アートやカルチャーへの意識が高い人が集う芸術文化の街であったことに加え、わざわざ足を運んでもらえるようなお店にしたいとの思いから、あえて郊外を選んだそうです。

レンガ造りの壁面が印象的

レンガ造りの壁面が印象的

イメージしたのは「イギリスの街中にぽつんとある書店」。どこか異国情緒が漂う建物ながら、商店街の一角にあるため、ご近所の方たちがふらっと入れる親しみやすさもあります。
また、2010年にイギリスのガーディアン紙による「世界で一番美しい本屋10」に日本で唯一選ばれたことで世界的に注目を集め、海外からのお客さんも多く訪れます。

心躍る本棚と選書

中央のテーブルは、新刊を中心に陳列

中央のテーブルは、新刊を中心に陳列

恵文社の特徴であり大きな魅力が、本の選書と棚の並べ方。
棚は作家別に並んでいるのではなく、おおまかなジャンルごとに分けられ、共通のテーマをもとに本の内容や背景といった「文脈」を意識して並べられる配置です。
開業当時から、スタッフがそれぞれ選書をして仕入れを行い、棚づくりをしています。今でこそ珍しくはなくなりましたが、当時はそのような形態の書店はなく、独立系書店の先駆けでした。

リトルプレスのコーナー

リトルプレスのコーナー

店内は、国内外の文学、アート、建築、カルチャー、ファッションなど、さまざまなジャンルの書籍や雑誌が並び、本好きにはたまらない空間!
20~50代の個性豊かなスタッフ10名が、それぞれのアンテナに引っかかるものと、お客さんのニーズに合うものを考慮しながら本を選び、独自の棚を作っています。

  • 「乙女の本棚」と呼ばれる棚には、乙女心をくすぐる本がずらり

    「乙女の本棚」と呼ばれる棚には、乙女心をくすぐる本がずらり

見せ方によって本の印象はガラリと変わります。「ディスプレイはお客さんとのコミュニケーションツール。本が動いていないなと思うと、日々ディスプレイを変えます。それが腕の見せどころです」と企画広報の岡本沙織さんが教えてくれました。

何度訪れても毎回新しい発見があるのは、日々進化していたからかと納得!
じっくりと一冊ずつ眺めていると、思いもよらない本との出会いがあります。

「書斎のギャラリー」。装丁が凝っていて美しい本はガラス棚に並べられています

「書斎のギャラリー」。装丁が凝っていて美しい本はガラス棚に並べられています

恵文社の顔となっているコーナーが「書斎のギャラリー」。
長年勤めるスタッフが担当するコーナーで、幻想文学やシュルレアリスム(※)の書籍が数多く並びます。これほど揃うのは、京都では他にないといいます。

※1920年代にフランスの詩人アンドレ・ブルトンを中心に起こった文学・芸術運動。夢や無意識の世界を表現することを目的とし、現実と非現実の境界を曖昧にすることが特徴。日本語訳は「超現実主義」。

澁澤龍彦や山尾悠子らの書籍。アンティークのインテリアとも調和しています

澁澤龍彦や山尾悠子らの書籍。アンティークのインテリアとも調和しています

「密やかで怪しげ。気軽に飛び込めないジャンルと思われるんですが、こうやって集まっていると人を惹きつける力があるみたいで、老若男女問わず長く滞在される方が多いです」と岡本さん。未体験の人は一度、手に取ってみてはいかがでしょうか。

衣食住に関する雑貨と本を集めた「生活館」

「生活館」。書店と中でつながっています

「生活館」。書店と中でつながっています

恵文社のコンセプトは「本にまつわるあれこれのお店」。書店の西隣には、衣食住をはじめとする暮らしに関する本と、それにまつわる生活雑貨を取り扱う「生活館」があります。2006年のオープン当時は、一般的に書店で雑貨を扱うことはほぼなかったようで、こちらもまた時代を先取りする形態だったそうです。
  • 本と雑貨が所狭しと並びます

    本と雑貨が所狭しと並びます

  • おしゃれなキッチンツール

    おしゃれなキッチンツール

店内には、器や調理器具、調味料、洋服、バッグなど、生活に彩りを添える可愛い雑貨がいっぱい。料理の本や暮らしに役立つ本を読んだ後に雑貨を見ると、使用感のイメージがグッと湧きやすくなります。
  • WONDER BAGGAGEとのコラボ商品<br/>
左:バッグ「読書三余」(ひろせべに)4,345円 右:ブックケース「読書三余」(関美穂子)2,310円<br/>

    WONDER BAGGAGEとのコラボ商品
    左:バッグ「読書三余」(ひろせべに)4,345円 右:ブックケース「読書三余」(関美穂子)2,310円

  • イラストレーター・ニシワキタダシさんが描き下ろしたオリジナルエコバッグ 660円

    イラストレーター・ニシワキタダシさんが描き下ろしたオリジナルエコバッグ 660円

  • 手描きのロゴデザインが入った「木軸ボールペン」550円など

    手描きのロゴデザインが入った「木軸ボールペン」550円など

恵文社のオリジナルグッズも充実。イラストレーターが描き下ろしたエコバッグや、本を持ち歩くのに最適なブックケース、木製軸のボールペンなどのステーショナリーが揃います。来店の記念やおみやげにぜひ。

理科学系の雑貨などを扱う「ギャラリーアンフェール」

「ギャラリーアンフェール」。書店から中庭を通り中からも行き来できます

「ギャラリーアンフェール」。書店から中庭を通り中からも行き来できます

書店の東側に隣接するのは、「ギャラリーアンフェール」。
作家やアーティスト、地元の学生らへの貸出を行い、定期的にさまざまなジャンルの展示会が開催されています。
  • アンティークの調度品を生かした店内

    アンティークの調度品を生かした店内

  • 「本屋の理科室」をテーマにした展示スペースも

    「本屋の理科室」をテーマにした展示スペースも

また常時、理科学系の雑貨や文具などを揃え、それに準ずる書籍や雑誌なども置いています。
  • 「コテージ」

    「コテージ」

  • 中庭

    中庭

ギャラリーアンフェールの奥には、1日単位でレンタルできるイベントスペース「コテージ」があります。トークイベントやワークショップのほか、カフェスペースとして借りる人も。
書店の奥の出入口を進むと中庭があり、その横に併設されています。

書店入口横の窓には京都在住のイラストレーター・ひろせべにさんが描いた可愛いイラストが。季節ごとに変わるので毎シーズンのお楽しみ

書店入口横の窓には京都在住のイラストレーター・ひろせべにさんが描いた可愛いイラストが。季節ごとに変わるので毎シーズンのお楽しみ

50年の間に街の様子は変わりましたが、変わらずお客さんにワクワクと新しい発見を与え続けてきた恵文社。スタッフの皆さんは「これまでのつながりを大切にしながら、これからも柔軟に、新しい価値観やモノを提案する場所でありたい」と、この先の未来を見据えています。私たちの好奇心をさらに掻き立てる、新たな本との出会いが待っています。

■恵文社 一乗寺店
【営業時間】11:00~19:00
【定休日】無休(元旦除く)
【電話】075-711-5919
【アクセス】叡山電鉄叡山本線「一乗寺駅」から徒歩約3分 Google map
【公式ホームページ】https://www.keibunsha-store.com/
【公式X】https://x.com/keibunshabooks
【公式Instagram】https://www.instagram.com/keibunsha_books

\恵文社も登場!/
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※掲載内容は2025年5月7日時点の情報です。最新情報は掲載先へご確認ください。

Written by. 「そう京」編集部

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