寺社に代表される観光名所はもちろん、町並み、自然、文化、食事、風習など、京都は撮りたくなるシーンとの出会いにあふれています。そんなとき、サッと撮れるスマホは便利。でも、せっかくの京都旅行、本格的なカメラでファインダー越しに「お気に入りの京都」を切り取ってみませんか? 興味あるけど難しそう—— そう思った方もいるかもしれませんが、実は最新のカメラはとっても簡単。スマホ連携もワンタッチで、SNS投稿もスムーズ。京都の高精細な写真もシェアできるはず。今回は、京都旅行の“撮りたい”をプロカメラマンがレクチャー。シーン別撮り方のコツからちょっとした工夫まで、本格的カメラの楽しみ方を中心にご紹介します。
協力:Panasonic
※掲載写真はイメージです。撮影は他の方の迷惑にならないよう行いましょう。また、撮影禁止などのルールが設けられている場合もありますのでご注意ください。
京都の撮り方
「京都の撮り方」と題して、いくつかの撮影技術をご紹介します。「寺社での撮り方」「お店など室内での撮り方」「人物の撮り方」「植物の撮り方」と、4つのテーマを用意しました。スマホのカメラ機能は進化していますが、本格的カメラだからこそ見つけられる写真のよさ、撮影の楽しみをお伝えしたいと思います。そして、京都ならではの「旅と撮影」の楽しみ方を深めていけたらと考えております。
社寺での撮り方
室内では積極的に正座をしてみる。
お庭をどう見るのがよいのか、それは座ったときにこそ感じられます。もちろん季節やその日の天気によって、お庭の表情は変わるため正解はありません。ゆっくり楽しみながらも、落ち着いて座る時間を忘れずに。余裕があれば一歩下がって、室内の雰囲気を感じる1枚を撮影してみてはいかがでしょうか。
手前に植物を入れると途端に奥行きが出る。
ここからのお庭がきれいだと感じるけれど、カメラを向けると少し違って見える—— そう感じたときは自分の近くに木々やお花、葉っぱなど、植物がないか探してみてください。例えば足元の丸い生垣。これをちょっとだけ構図に入れて撮ると、奥行きを感じさせる写真になりました。
苔を印象的に撮ってみる。
フカフカの苔。実は山あり谷あり、起伏がとっても面白いって知っていました?モニターの角度を変えられるカメラなら、地面にカメラをおろしてコケ目線の構図で写真が撮れます。スマホだとなかなか撮れません。ほらね、苔っておもしろいんです。
お店など室内での撮り方
おいしい写真は座席選びからはじまる。
「行きたかった喫茶店、静かな店内のどこに座ろうかな?」と、入口で少し悩むのも楽しいですね。もし窓があるお店なら、そのそばの席を選んでみては? 自然の光は料理に当たることで「おいしい」を引き立たせてくれるはずです。ポイントは、料理の向こう側(真横でもよい)に窓があること。
いい背景はつくれる。
雰囲気のよいお店だからこそ、いい背景を探して、あっちもこっちも撮りたくなっちゃうものです。目移りしはじめたら、器ごと持っちゃいましょう。席に座っていても見回しながら撮ってみると、一味ちがう雰囲気の構図が見つけられるはず。
迷ったら真俯瞰で。
「雰囲気はすてきだけど、なんだかうまくお料理が撮れていない気がする。この感じどうしたらいいんだろう?」と悩みはじめたら、真上からファインダーをのぞいてみましょう。この視点は真俯瞰(まふかん)といいます。きっといい感じに撮影できますよ。
人物の撮り方
自然な雰囲気は動作の途中に。
路地を抜けてちょっとカフェで休憩しましょう。甘いものと楽しい時間ですね、会話は続けつつそっとカメラを向けてみましょう。ポーズをお願いしたら出来ない瞬間には自然な友達の姿が写っているはずです。カメラ目線とは違う自分の姿も喜ばれるポイントになるのかも。
きれいな景色より、きれいな光。
旅といえば青空を期待しますが、この日はちょっと曇り空。実は京都の細い路地には、曇り空こそが「きれいな光」なんです。強い日差しは影を強めて町家の細部が写りません。曇り空がつくり出す、こうした柔らかい光が、はんなりとした京都の美を写し出してくれるんです。
スマホで撮って、自然な私の写し方。
ちょっと一休みしましょう。場所は岡崎公園です。カメラとスマホを連携させるとカメラに映る自分の姿をスマホの専用アプリで確認できます。自分を見ながら自然な自撮り。気に入いった1枚はその場でSNSに投稿、なんてことも可能です。
植物の撮り方 〜京椿篇〜
安心の「日の丸」構図。
きれいなお花を見つけたら、まずは真ん中に。だってそれだけでお花ってかわいいですから。あとは周囲の写り込みを気にしましょう。ここでは、きれいな葉が揃っている椿を選んでみました。ボケ感の中に、まだまだ蕾の椿。これから咲くことを感じるのも、ちょっと気に入っているポイントです。
マクロ撮影に挑戦してみる。
手軽にここまで近づけるのってすごく撮っていて楽しいと気づかせてくれるはず。一度近づいて撮ってみてください。きっと今までとは違う写真が撮れるはず。ここではお花のマクロ撮影を紹介しましたが、お寺やお店でもそっと撮りたいものに近寄ってみてください。そのおもしろさに気づくと思います。
※マクロ撮影モードの無い機種もございます。
コントラストが美しい落ち椿。
散りゆく美しさを表現できるお花の代表格が、この椿ではないでしょうか。和歌、日本画、着物、茶の湯など、さまざまな日本文化や芸術の題材として選ばれてきた椿。幾重に編まれた文化的接続詞としてお花が咲くとき、椿という存在を切り離すのは難しいかもしれません。ちょっと大袈裟ですが。
お散歩しながら撮りたい京都
観光名所の移動にはバスや電車にタクシーと、いろいろありますが、「お散歩」でも楽しめるのが京都です。徒歩の時間だからこそ撮影できる写真、その魅力を3つのお散歩ルートに沿ってゆっくりとした目線でお伝えします。僕自身がお散歩しながら写真を撮ってきました。つい集めたくなる京都の写真、そのきっかけになさってはいかがでしょうか。
哲学の道 ルート
琵琶湖疏水沿いに続く約1.5kmの小径。かつて文人墨客がこの道を歩きながら思索に耽ったことから「哲学の道」と呼ばれています。桜や紅葉など四季折々に風景を変え、鳥や猫の憩いのスポットになることも。いつ出会えるかわからない動物たちにもわくわく。みつけたらシャッターチャンスを逃さないで。界隈のカフェでひとやすみをしたり、思索に耽りながら、お気に入りのアングルをみつけましょう。
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静かな道です。古くからの町並みを感じつつ新しいお店も見つかります。明治の頃「文人の道」と称されたこの道が今は哲学として残っています。散歩に思索と相性の良い組み合わせにカメラを足せば、写る道々どれも意味が生じるでしょう。時代が変わり、人の行き来も変わっても、この道のお散歩は特別なのです。
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哲学の道、花もおすすめ。小さな水路に沿って数多くの植物のお花がかわるがわる咲いています。ここではお花の構図を遊んでみましょう。手前のお花をぼやかして半分構図を埋めてみます。目の行く先が何のお花かわかるように。晴れていると水面を照らす木漏れ日がお花を優しく照らしてくれます。
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和の歴史とは違う洋の建築。実は京都のあちこちにこういった古い洋館が存在しています。こちらのGOSPELは中に入って喫茶を楽しめる貴重な洋館です。散歩に疲れた休憩に、町家の趣や流行りのカフェもいいですが、こうした洋の美に心落ち着ける時間も楽しいですね。
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やってきました法然院。彩りのグラデーションに目線が上へと動きます。お寺では瓦屋根を見るようにしてみてください。きれいな紅葉もこの造形があってこそ趣きを深めてくれるはず。鬼瓦にハマると望遠レンズも欲しくなりますね。角がある鬼もいれば、ない鬼もいます。
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やっぱり苔、見ていて飽きない存在です。触れるくらいに近づいてふさふさの苔を楽しみましょう。日向の苔より日陰の方が生き生きしていたり、水気があってツヤツヤしていたりします。季節の花とのコントラストも苔の魅力です。一年を通して写真におさめてみてください。
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哲学の道を散歩していると、小さな橋が多いことに気がつくはずです。腰掛けてちょっと休憩している人も多くみられます。手すりの間、額縁の様にして構図を埋めてみましょう。正方形のような構図に水路のバランスを考えて、こんな感じ。その場所にある構造物を入れ込むことで物語も深まります。
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木漏れ日に続く石畳の道に水路がゆっくりと続いて行きます。ここはとりわけ真っ直ぐなストローク、何かに気づくにはもってこいの場所かもしれません。あっもうすぐ春ですね。この水面が桜の花びらでピンクに染まると、ちょっと落ち着いて考えていられないかもしません。
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鴨に会いました。鴨夫妻です。カメラを水路へせり出して撮影していても、まったく動じません。のんびり流れてくる鴨を待ち構えて撮ることができます。哲学の道には、いくつか生き物がいます。僕の印象では、南側に行くほど鴨と猫に会える確率が高くなります。ちなみに季節が合えば蛍にも会えるそうです。
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祇園宮川町 ルート
京情緒にあふれ、絵になる風景に出会えるエリア。花街の祇園・宮川町では、伝統的な京町家が建ち並び、石畳の道が続きます。京町家をよく見ると、犬矢来(いぬやらい)や守り神・鍾馗(しょうき)さんなど、さまざまな意匠が。全体ではなく、一部を切り取っての撮影も楽しいものです。朱塗りの玉垣が続く白川や鴨川が流れ、京都の日常の自然を感じながら、のんびりとお散歩ができます。
※祇園は撮影禁止の場所が多く、高札が掲げられています。よくご確認ください。
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通りに面したちょっとした窓、竹と木を重ねてできています。思わずカメラを向けてしまいました。こうした意匠にカメラを向けてはゆっくり写真を楽しむ時間、京都を散歩する醍醐味ですよね。古いだけではない細かな美意識を自分なりのハッシュタグで集めてみましょう。
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たまにはこうして目線を変えてみましょう。普通のカメラやもちろんスマートフォンでも、レンズを向けている先の構図を確認しながら撮ることができない、こんなアングル。モニターの角度を上に向けることで手軽に撮影ができます。おもしろい目線を探しながのお散歩も楽しかったり。
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たまに見かけるこちらの竹、ご存じでしょうか。名前は「犬矢来」。いぬやらいと読みます。犬が悪さをしないようにとか諸説あるそう。実はかなりいろんな種類があります。上手に室外機を隠していたり、綺麗に扉を作って収納場所にしていたり、見た目のよさ以上に活躍する犬矢来、路地を進む中でぜひ頭の片隅におぼえておいて欲しい存在です。
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きれいな路地ですね。時代を超える錯覚を覚えます。実は京都で路地というと「ろーじ」、行き止まりの道のことを言います。ここは進んでいける道でしょうか、もし別の通りへとつながっていたら「図子(ずし)」と呼びます。ちょっとドキドキしてしまいます。こちらは隣の通りへつながる道でした。みなさんも探してみてください。
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やってきました恵美須神社。関西独自のお祭りになる商売繁盛を祈願した十日ゑびすで有名ですね。七福神えべっさんに会える場所。何やらどこかをのぞいて撮っている写真ですね。こうした隠れた縁起物、探してみて欲しいです。場所も宮川町から祇園の方へ歩いてちょうど途中にあたります。
(場所:恵美須神社)
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いいお天気です。四条大橋まできました。橋の上から南を向いた景色です。これから温かくなってくると右の建物に床が出現します。そう「川床」です。夕暮れの景色に涼む人たちの声が今年は賑やかとなって欲しいですね。ちなみに「かわゆか」と言います。貴船に行くと「かわどこ」。ちょっとした豆知識。
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鴨川沿いを北へ、白鷺がいますね。桜の葉が赤く染まっています。もうすぐしたら春、鴨川にもたくさんの桜が咲き並びゆく川の流れに色をつけます。もし時間が許せばもっともっと北の方へ足を伸ばしてみてください。賀茂川と高野川へわかれるあたり、亀の甲羅に乗って川を渡るのも、楽しいものです。
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祇園を歩きます。なんでしょうか、松の影すらもデザインされているかのようです。規則正しい格子の並びに弾けるような植物の生命感、ぜひ写真に撮っておきましょう。広角レンズで建物全体を撮るのもいいですし、格子部分的に切り取る写真も楽しいですよね。もっと近寄ってみたり、いろいろためしましょう。
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嵯峨野・嵐山 ルート
京都を代表する観光地。渡月橋や竹林の小径、神社仏閣など、メディアでもおなじみの風景が点在しています。人気さゆえに混雑することも多いですが、そんな時は見上げるなど視点を変えて撮影をしてみましょう。中心地から離れ、嵯峨野まで行くと混雑は少なく、のどかな風景に出会えます。自然だけでなく、カラフルなキモノフォレストなどの観光地ならではのオブジェも。さまざまなフォトスポットが楽しめるエリアです。
撮影のポイント
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渡月橋、嵐山といえばの場所ですね。実はよく見る渡月橋の写真は対岸が多いんですが、こちらからもきれいに見えます。少し望遠で橋だけを狙ってみましょう。季節によって山の色合いが違うのでいつ来ても発見のある場所です。
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歩いていると気になるお店に出会いました。近づきたい気持ちを抑えながら、そっとレンズを付け替えます。お借りしているレンズ「LUMIX G 42.5mm」はF値(絞り)がf1.7と大変明るいレンズになります。このように絞り開放で撮るとピントのボケ感もよく、スマホで撮る写真とは違う雰囲気に仕上がりました。
(場所:パンとエスプレッソと嵐山庭園)
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たくさん並んだものをきれいに撮りたいとき、今度は真正面から撮影してみました。被写体に規則性が見られる場合はこうして正対したアングルがハマると思います。こんな感じです。ちなみに風車は動くものですからシャッタースピードを遅くしてみて動いている風車をブラして撮りました。手振れ補正が効いています。
(場所:嵐山昇竜苑)
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たくさん並んだものをきれいに撮りたいとき、ひとつはこんな感じで奥行きを活かす撮り方はどうでしょうか。ちょっとだけ手前側をピンボケにすることで奥行きが増した写真に。ここは夜もきれいなライトアップがされる場所です。機会があればぜひ夜にも足を伸ばしてみてください。
(場所:キモノフォレスト)
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ひと恋 100円。目があった瞬間なにかはじまったような。伝えたい思い。こんなときは、とにかくど真ん中にその思いを配置して構図を考えましょう。ハートとおみくじのアクセントを入れながらサイドの黒が構図を締めてくれます。もし正方形でトリミングしたい場合はぐっと寄ってしまうのもアリです。
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京都に数多ある神社、祀られている神々もそれぞれです。よいご縁に恵まれるように手を合わせたくなる場所を見つけました。ここまで寄れる単焦点レンズは柔らかいボケ感で写真が変わりますね。今回使ったレンズのように、こんな風に寄れて手振れ補正が効いて明るいレンズってなかなかないんですよ。
(場所:野宮神社)
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嵐山といえば竹林、こちらも有名ですね。よくある構図だけじゃなく、こうして見上げて撮影するのもきれいです。広角レンズに変えてみましょう。逆光の中でもモニターにどう写るのかが見えていると設定を変えながら好みの明るさまですぐに寄せていけます。キットレンズでもハイライトに柔らかく滲む光の表現はとてもきれいですね。
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貴族や文人の別荘地としての嵯峨野、その歴史を感じ取れる場所が今でもありました。松尾芭蕉の弟子・向井去来の草庵である落柿舎からの眺望です。遠くをゆく人力車の姿とついに寺社の屋根が構図を締めてくれます。
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今回協力いただいたプロカメラマン
協力:Panasonic
※写真はイメージです。
※掲載内容は2022年3月25日時点の情報です。