京都には、雨の日だからこそ出会える風景があります。しっとり濡れて鮮やかさを増す青もみじや苔、雨音さえもすてきな演出のひとつに。天気予報が“雨”マークならチャンス到来。雨の日ならではの魅力・楽しみ方をご紹介します。
雨の京都の魅力とは?
「京都旅は、やっぱり晴れが良い!」と思いがちですが、実は、あえて雨の日にずらすと、思いがけない体験ができます。歴史ある神社仏閣、町並みが残る古都ならではの、知っておきたい“雨の魅力”に迫ります。
雨の日ならではの景色
青もみじや苔、花々など、彩り豊かな初夏の京都。雨の日は、しっとり濡れて瑞々しさ鮮やかさを増し、一段と美しい景色をもたらしてくれます。他にも、京都らしい風情の町家や石畳、竹林などが雨に濡れる美しさもひとしお。タイミングがあえば、山に霧がかかる神秘的な光景を楽しむことができます。
雨音に耳を傾ける
景色だけでなく、しとしと降る“雨音”も一期一会。耳を澄ますと、雨が瓦に打つ音、池に落ちる音、それぞれに違いがあります。時には鹿(しし)おどしなどとあわさることも。そんな様々な雨音に耳を傾けながら、お寺で心静かなひとときを過ごすのもおすすめ。庭園鑑賞をはじめ、写経や写仏、坐禅など、じっくり向き合うと新たな発見がありそうです。
人気スポットを満喫
お出かけが億劫なイメージが強く、比較的空いている雨の日の京都。観光でもインドアで楽しめるスポットを探しがちなので、屋外の人気スポットは混雑が少なく、意外とゆっくり過ごすことができます。雨の日はこれまで行ってみたかった人気スポットを、あえて目指すのがおすすめ。さらに午前中の早い時間帯であれば、独り占めできることも。
雨の日の楽しみ方別スポット
雨の日の魅力を知ったら、京都へ。おすすめスポットを楽しみ方別にご紹介します。大定番の青もみじ・苔鑑賞から、景色の眺め方など、お気に入りの雨の日の過ごし方をみつけてください。
新緑の青もみじ・苔
東福寺
京都随一の紅葉名所。雨の渓谷に雲海のようにたなびく艶やかな青もみじは、また違った趣があります。臥雲橋や開山堂へ続く通天橋から、そぼ降る雨を眺めれば、静かな雨音と濃密な緑の匂い。心からリラックスできそうです。
建仁寺
青もみじと苔が調和する「潮音庭」。雨の日ともなれば、緑は一層鮮やかに、三尊石は艶やかに濡れ、宝石のような輝きを放ちます。堂内には、《風神雷神図屏風》(国宝、複製)。風雨と雷鳴のなかで見る姿は、さらに迫力を増しそう。
三千院
宸殿から望む「有清園」は、お寺の代表的な風景。往生極楽院を中心に杉木立と苔のじゅうたんが広がり、梅雨を迎えると、潤いたっぷりの苔が楽しめます。特に瑞々しい苔を眺めたいなら、“雨の日の翌朝”がおすすめです。
南禅寺 南禅院
しっとりとした空気に包まれ、人もまばらになる雨の日の南禅寺。さらにゆっくり楽しむなら、赤レンガの水路閣を抜け南禅院へ。青もみじに包まれる池の周りを歩き、お堂の軒に腰掛け苔鑑賞。雨の日にこそ訪れたいお寺です。
常寂光寺
小倉山の中腹に建つお寺。青もみじと苔が広がる境内は、雨の日はより趣ある雰囲気を楽しめます。雨を受け、苔は一層深い緑に、しっとりと濡れた青もみじは、茅葺きの仁王門にわびた風情を添えてくれます。
圓光寺
青もみじと杉苔に包まれた「十牛之庭」は、書院から柱を額縁に見立てて楽しむのが定番。心地良い雨音と、雨で色濃くなった緑の光景は、まるで映画のワンシーンのよう。潤いに満ちた風景に、心も満たされそうです。
〜 青もみじ おすすめ情報 〜
窓から望む雨景色
東福寺 光明院
昭和の作庭家・重森三玲が手がけた「波心庭」。雨の日は苔と青もみじが瑞々しく、濡れた石は色濃くなり存在感が増します。堂内の丸窓から眺めると、拝観者の姿がさえぎられ、私だけの特別な雨景色のよう。
東福寺 天得院
桔梗の開花時季にあわせて特別公開される、東福寺の塔頭寺院。おすすめは禅寺に多く見られる“花頭窓”越しに眺める風景。星の形をした紫の花や青もみじ、杉苔は、雨に濡れ一層鮮やかに。灯篭もアクセントとなります。
泉涌寺 雲龍院
「蓮華の間」には4つの雪見窓が並び、左端から眺めると、雨に濡れる灯籠や青もみじなどが収まる“色紙の景色”が現れます。泉涌寺山内の一番奥に位置するため、静けさに包まれ、一層雨の風情を感じることができます。
雨の季節の花々
柳谷観音 楊谷寺
四季折々の“花手水”や“押し花朱印”など、花のお寺として人気。特に賑わうのは梅雨の時季で、約5,000株が境内を彩ります。屋根のある「あじさい回廊」なら、雨に濡れずに潤いに満ちた花々を愛でることも。
勧修寺
菖蒲や半夏生など、水を好む花がたくさん咲くお寺。梅雨の時季、満々と水をたたえる氷室池を彩るのは睡蓮。雨に濡れ、より艶やかな花を楽しめます。時おり姿を見せる鯉やカルガモも絵になる風景です。
岩船寺
こんもりとした木々に覆われた境内を彩る紫陽花は、その数、35品種約5,000株。雨に濡れ黒々と佇む建物と、緑の濃さを増す樹林、樹影を映す池とが重厚な雰囲気を作り出し、その中に咲く紫陽花はひときわ鮮やかです。
耳を傾けるひととき
宝泉院
庭園「盤桓園(ばんかんえん)」を望む、客殿隅の縁側には水琴窟。竹筒に耳をあてると、「キーン、コーン・・・」と澄んだ音色が聞こえます。降りしきる雨音も相まって、“立ち去りがたい”というお庭の意味も納得できそう。
瑠璃光院
春秋に特別公開される、“モミジのリフレクション”で有名なお寺。耳を澄ませば、しとしと降る雨音に、時折あわさるモリアオガエルのかわいい鳴き声。心地よい気分にさせてくれる、雨の日の庭園鑑賞は格別です。
詩仙堂
自然に囲まれた境内は今も山居の趣を残しており、美しく手入れされたお庭には、静かに降る雨がとてもよく似合います。そして、時おり境内に響き渡るのは「カコーン」という鹿おどし。どちらも心地よい音です。
お寺で特別な体験
東福寺 勝林寺
【座禅】雨の空気を感じる開かれた堂内で、坐禅体験(1,000円※要予約)。雨粒に濡れる美しいお庭を前に、雑念を拭い去り、心と身体を癒すひととき。静かに降る雨の音が、さらに集中力を高めてくれそうです。人気の花手水もお見逃しなく。
旧嵯峨御所 大本山 大覚寺
【写経】嵯峨天皇が浄書した般若心経が伝わることから、写経の根本道場として有名。五大堂では、本尊の五大明王に見守られながら写経(1,000円)を。御所の名にふさわしい雅な堂内は、回廊で繋がっているので雨天時の拝観もスムーズ。
隨心院
【写仏】開基である仁海僧正は法力により何度も雨を降らせ「雨僧正」と呼ばれたという、“雨”に縁深いお寺です。人気の写経・写仏体験(各2,000円※拝観料込)は、お庭を望む部屋にて。雨音に耳を傾けながら取り組みましょう。
濡れた石畳を歩く
二年坂〜三年坂
石畳が続く二年坂~三年坂。甘味処やお土産店が軒を連ね、清水寺参拝前後の定番のお散歩コースです。雨の日ともなれば、しっとりとした風情に様変わり。普段よりも空いていて、ベストショットを押さえられるかも。
祇園白川
花街・祇園の巽橋付近。昔ながらの町家がたたずむ石畳の道で、こちらも京情緒あふれる一帯です。雨が降ると、桜や柳の緑は色濃くなり、朱塗りの玉垣とのコントラストが一層美しく感じられます。
八坂通
大通りから一歩入るだけで別世界のような風景に出会えるのも、京都ならでは。八坂塔(法観寺)へと続く八坂通はその魅力がつまった、石畳のゆるやかな坂道です。雨に洗われ、八坂塔もどこか存在感ある印象となります。
雨を眺める喫茶
無鄰菴 庭園カフェ
近代日本庭園の傑作といわれる元老・山縣有朋の別荘。母屋の一室には庭園を施主目線で見晴らすカフェもあり、色濃くなる青もみじを眺めながらひとやすみ。耳をすませば雨音とあわさる流れのせせらぎに、心も洗われそうです。
茶寮 宝泉
数寄屋造りのお座敷で、枯山水を前に甘味がいただけます。しっとりとした雨の日の庭園には、雨粒を閉じ込めたような名物・わらび餅(1,300円)がおすすめ。手作りの味わい、雨の庭、全てにおいて贅沢な気分が楽しめるお店です。
茂庵
吉田山の山頂近く、豊かな自然に包まれるカフェ。晴れの日の混雑も、雨の日にずらして訪れると、比較的ゆっくり過ごせます。格子窓の外には潤う緑の木々、雨音も心地よく、雨の日ならではの趣が楽しめます。