ぶらり、“南山城”の紅葉名所を旅しよう。

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禅定寺

禅定寺(撮影日:2017年11月4日)

叔母と行く穴場編


紅葉シーズンまっただ中の京都。秋になると京都を訪ねてくる叔母が、「今年は少しちがうところに行きたいな~」と、ぽつり。京都に何年も通っていて、市内の紅葉スポットはほぼ回ってしまったという京都好きなのですが、どうやら今年は少しちがう秋を楽しみたくなったようです。
「それなら、“南山城”の方に行ってみない?」
「みなみやましろ?」と首をかしげる叔母を連れて、観光名所とは違う“穴場の紅葉”を訪ねてきました♪



南山城ってどのあたり?


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茶源郷・和束(わづか)の茶畑は、南山城らしい風景


京都駅付近でレンタカーを借り、いざ出発! 京都市街地から阪神高速8号京都線を南下します。

「ところで、“南山城”って、そもそもどの辺なの?」
叔母のふとした疑問は、ごもっとも。

“南山城”エリアというのは、なかなか明確な指定が難しいのですが、狭義には京都府内唯一の村「南山城村」を指し、広義には旧山城国の南部を指すようです。
奈良・平城京と京都・平安京のちょうど真ん中が、“五里五里の里”城陽(じょうよう)市。それよりも南側なので、市町村でいえば、京田辺市・宇治田原町(うじたわらちょう)・井手町などのあたりから、三重県・滋賀県・奈良県との境までが“南山城”エリアと呼ばれることが多いようです。

奈良と京都の間にあるということで、古くから往来が盛んで、荘園や別荘地なども多かったため、歴史あるお寺や文化財が数多く遺っているエリアです。

「最近、わたしのお気に入りは“一休寺”なんだよ♪」という言葉に、少し考え込んでいる叔母。
「・・・一休さんって、大徳寺じゃないの?」
そう。一休宗純和尚は、大徳寺の第47世住持。がしかし、そのつとめを果たしていたときに住んでいたのが、現在の京田辺市にある「酬恩庵(しゅうおんあん)」というお寺であったことは、あまり知られていないのではないでしょうか。



一休さんが晩年に暮らしたお寺は、紅葉も逸品! 酬恩庵 一休寺


応永元年(1394)に生まれ、文明13年(1481)11月21日に88歳で入寂した一休さん。臨終の際に「死にとうない」と呟いたのは、有名なお話です。


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方丈


「すてきなお庭ね!」
と、初めて訪れた一休寺の紅葉に感動した様子の叔母。
「一休さんが大徳寺の住持となったのは、81歳のとき。応仁の乱で荒廃した大徳寺の復興にあたったそうなんだけど、なんとここから船で木津川をさかのぼって、大徳寺まで通っていたんだって!」


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一休禅師木像


方丈には、一休さんが亡くなる前年に、弟子に命じてつくらせたという木像が祀られています。この像に、一休さんは自らの頭髪とヒゲを抜いて植え付けたのだとか!
「なんでそんなことをしたのかしら?」
「一休さんは禅僧なのに、ざんばら頭の無精ヒゲ姿だったんだって。当時としたらありえない僧侶の姿だったらしく、“形にとらわれるんじゃなくて、精神が大事なんだ”ということを説いた・・・ らしいよ?」
受け売りの文言をしたり顔で語ったのですが、叔母は「なるほどね~、よく知ってるわね」と頷いています。

ちなみに、方丈の襖絵は狩野探幽の筆であったり、宝物館にも意外なお宝があったりと見どころが多い一休寺。またゆっくり見に来ようね、といいながら次のスポットへと向かいます。

※11月21日は一休禅師のご命日で、「開山忌」が行われます。

■酬恩庵 一休寺
【拝観時間】9:00~17:00、宝物殿9:30~16:30
【拝観料】500円
【電話】0774-62-0193
【アクセス】近鉄京都線「京田辺駅」から徒歩約15分、京阪バス「一休寺」バス停から徒歩約5分 Google map
◆京都駅付近から車で約40分(駐車料金300円)
【公式ホームページ】http://www.ikkyuji.org
★紅葉の色づき具合をチェック! ⇒一休寺の紅葉情報はこちら



猿・猿・猿の猿丸神社は、知る人ぞ知る紅葉の穴場!


次に向かったのは、宇治田原町。地図で見ると町の形がハートになっているため、「ハートのまち」としてPR中です。最近ではハート形の「猪目(いのめ)窓」がある正寿院がSNSで大人気となっています。

「ハートの窓!? 見てみたいわぁ♡」
密かにインスタをはじめた(!)という叔母。でも、「その前に! 宇治田原町にはもっと見どころがあるんだから」と車を走らせます。


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表参道


そして到着したのは、猿丸(さるまる)神社
「わぁ! モミジがいっぱいなのね!」
「百人一首に “奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿の 声聞く時ぞ秋は悲しき” って歌があるでしょう? その歌を詠んだ、猿丸大夫(さるまるだゆう)を祀った神社なんだよ」と、得意気に説明する私ですが、下見に来たときに初めて知った神社だというのは内緒のハナシ・・・(笑)


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社紋のモミジもかわいらしく、狛猿さんと紅葉などいいアングルもいっぱいで、叔母も「インスタ映えするわね~♪」とご満悦。そして、お猿さんのかわいいおみくじも発見! これは、まさに「ゆるみくじ」! お猿さんの顔を書ける絵馬もあったりと、叔母と一緒に(年甲斐もなく)はしゃいでしまいました♪

※訪れたときは青葉が多かったのですが、現在(11/15)は8割ほどの色づき具合。来週末まで見頃が続き、12月はじめまで紅葉を楽しめるそうです。

■猿丸神社
【参拝時間】境内自由、社務所8:00~16:00
【参拝料】無料
【電話】0774-88-3782
【アクセス】JR奈良線「宇治駅」・京阪宇治線「宇治駅」・近鉄京都線「新田辺駅」下車、京都京阪バス「維中前」バス停から徒歩約40分 Google map
◆一休寺から車で約30分
【公式ホームページ】http://www.sarumarujinja.jp/index.html



風景と仏像に心癒やされる、清々しいお寺 禅定寺


「じゃあ、次はハートの窓?」
「いいえ、まだまだ。この近くにね、仏像がステキなお寺があるんだよ♪」


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と、続いて訪れたのは「禅定寺(ぜんじょうじ)」というお寺。創建は、平安時代中期の991年という歴史ある古刹です。


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「これなに?」
叔母がふと足を止めて指さしたのは「柿屋」。このあたりは「古老柿(ころがき)」と呼ばれる干し柿が名産で、その柿を干すための棚なのです。渋柿を甘くするための知恵であり、全国でもここでしか見られないという宇治田原の秋の風物詩。今では少なくなってしまった柿屋に出会えて、叔母も「へぇ~」と驚き顔です。でも、驚くのはまだ早い!
※写真の柿屋は、307号線沿いで見られる大型の柿屋。禅定寺門前の柿屋はもう少し小ぶりです。


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境内に足を踏み入れると、叔母はまたもや驚き顔。茅葺き屋根の本堂に、手入れの行き届いたお庭。
「すてきなお庭ね! こんなきれいなところがあるのね~」
でも、驚くのは、まだまだ早い!!



私が案内したのは、門前にある宝物館。一歩入れば、「わぁっ!」と叔母さんが狙い通りの反応です♪


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こちらのご本尊は、国の重要文化財に指定される「十一面観音立像」。10世紀末の仏像で、とても優美なお姿なのです。その左右には、「日光菩薩」と「月光菩薩」。そして何より見て欲しいのは、「文殊菩薩騎獅像(もんじゅぼさつきしぞう)」なんです!


10-南山城

左:文殊菩薩騎獅像 右:大威徳明王像


「あら、この獅子はなんだか猫みたいね♪」
そうなんです。もちろん仏像もステキなのですが、かわいらしい顔であんぐり口を開ける獅子の像が、たまらなくかわいらしいんです~♪ その隣にいらっしゃるのが、「大威徳明王像(だいいとくみょうおうぞう)」。
「東寺にもね、同じ大威徳明王の像があるんだけど、そっちは“水牛”に乗っているの(以前に“東寺のおみやげもの”で紹介しました)。でも、この明王が乗ってるのは“象”。しかも、足が猫みたいでしょ? 象を見たことがない時代に造られたからなのかな?」と、はしゃぐ私。仏像好きの叔母も、「この宝物館、何時間でもいられそうね~」と十一面観音さまに手を合わせます。

■禅定寺
【拝観時間】9:00~16:00
【拝観料】500円
【電話】0774-88-4450
【アクセス】JR奈良線「宇治駅」・京阪宇治線「宇治駅」・近鉄京都線「新田辺駅」乗換、京都京阪バス「維中前」バス停から徒歩約30分 Google map
◆猿丸神社から車で約2分
【公式ホームページ】http://zenjyoji.jp//



緑茶の祖は、宇治田原生まれ! 永谷宗円生家


途中の茶店で、抹茶ソフトクリームを食べていると、「このあたりはお茶が有名なの?」と、叔母。そうなんです。このあたりは、“宇治茶”の主要な産地。“碾茶(てんちゃ)”という抹茶の原料になる最高級のお茶などが生産されています。そして、ここが“日本の緑茶・煎茶”が生まれたところなのです!

「煎茶が生まれたところ?」
お茶も大好きな叔母。さっそく食いついてきました。


11-宗円

そして到着したのが、こちら。永谷宗円(ながたにそうえん)の生家です! 宇治田原の中でも山深い、「湯屋谷(ゆやだに)」という谷の一番奥が、緑茶の祖・永谷宗円が生まれたところ。1681年生まれの宗円は、その頃庶民が呑んでいた粗末なお茶を美味しいものにしようと工夫を重ね、50才を過ぎてから「青製煎茶製法」を編み出し、キレイな緑色の、旨みのあるお茶を広く普及させました。


12-宗円

宗円の生家で、永谷さん(ご子孫だそう!)が淹れてくれるお煎茶をいただきながら、叔母もホッとひと息。
「一休さんといい、宗円さんといい、皆さんお歳を取られてからも頑張っているのねぇ。そして、長生き! 私も美味しいお茶をいただいてがんばらなくっちゃ♪」


13-宗明

茶宗明神社


宗円生家の隣には、宗円を祀る「茶宗明神社」があり、そこも紅葉の名所なんだそう。訪れたときは少し早かったのですが、モミジのグラデーションを楽しめました♪

■永谷宗円生家
【拝観時間】土・日曜日・祝日のみ見学可能(平日は要問合せ)
【拝観料】無料
【電話】0774-88-6638(宇治田原町産業観光課)
【アクセス】JR奈良線「宇治駅」・京阪「宇治駅」近鉄京都線「新田辺駅」乗換、京都京阪バス「工業団地口」バス停から徒歩約25分 Google map
◆禅定寺から車で約12分
【公式ホームページ】http://www.town.ujitawara.kyoto.jp/sightseeing/walk/p06.html



そして、ようやくハートの窓へ 正寿院


14-正寿院

そして、ラストは、叔母念願のハートの猪目窓がある「正寿院」へ。
「今すごく人気があって、うちのスタッフも“窓マニア”“アートなお寺”とかでいっぱい紹介しているんだよ」
という私の説明もそこそこに、「インスタ映えね~」なんていいながら写真に夢中になる叔母。私はといえば、快慶作の不動明王が表紙になった『御朱印帳』(2,000円)を手に入れてホクホクでした♡(なんと、残り2冊でした! 増刷は未定とのこと・・・)


15-快慶

■正寿院
【拝観時間】8:30~16:30
【拝観料】400円(お茶・お菓子・散華・叶紐付き ※叶紐は8のつく日のみ)
【電話】0774-88-3601
【アクセス】JR奈良線「宇治駅」下車、京都京阪バス「維中前」バス停下車、コミュニティバス「奥山田」バス停から徒歩約10分 Google map
◆永谷宗円生家から車で約15分
【公式ホームページ】http://shoujuin.boo.jp/



「すごいわね、宇治田原! 見るところがいっぱいね!」
「宇治田原もだけど、最初に訪れた一休寺のある京田辺市や、この山向こうにある茶源郷・和束町、あたらしい道の駅ができた南山城村や、文化財が多い木津川市、後醍醐天皇ゆかりの笠置(かさぎ)町とか、ほんとに南山城は見どころが多いんだよ~」
熱く語る私に若干あきれ気味の叔母でしたが、なんだか少し嬉しそうな感じもしたのは、私の気のせいかもしれません。

「さて、次はどこに行く?」
と、楽しそうな叔母。まだまだ南山城めぐりを続けたいけれど、もうそろそろ夕方、旅も終了です。またこれからも、京都と一緒に南山城の旅も楽しもうね、といいながら京都市へと戻る私たちでした。

Written by. みさご

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