祇園祭を感じる、7月の和菓子 ~長久堂~

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京の和菓子の玉手箱 10



7月を迎え、昨日(1日)から祇園祭がはじまりました!「京都三大祭」のひとつとして、最も人気を集めるお祭りだけに、和菓子屋さんにも祇園祭をモチーフとした様々なお菓子が並びます。今回、小倉夢桜(おぐら ゆめ)さんにご紹介いただくのも、もちろん「祇園祭の和菓子」! 美しい3種類の和菓子を、どうぞご覧ください♪



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ついに、この季節がやって来ました。文月(7月)の京都。祇園祭で賑わう1ヶ月間がはじまりました。

京都市の中心部では“祇園祭”をいたる所で感じることができます。駅のホームや商業施設には、「祇園祭」の文字が躍り、祇園囃子(ぎおんばやし)が繰り返し流されています。そして、山鉾の各会所の軒を飾る、提灯や御幣。日が暮れると本番に向けて祇園囃子の練習がはじまり、街に響き渡る様々なお囃子を聴きながら過ごす日常。いやが上にも気分は盛り上がっていきます。

今年も祇園祭を存分に感じて、無病息災を祈りたいと思います。
 

京都は祇園祭一色! ・・・でも、実は??


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京都三大祭のひとつである、祇園祭。「京都の街全体が祇園祭一色になっている」と思われる方も多いのではないでしょうか。しかしながら、実際には、少し様相が異なります。四条烏丸界隈から祇園・八坂神社一帯にかけては盛り上がっているのですが、その周辺は意外にも冷静。

特に、北は丸太町通を、西は堀川通を境にして、盛り上がりが違うように感じられます。

その状況は、和菓子でも同じです。
祇園祭が行われるエリアで営まれている和菓子屋には、祇園祭にちなんだ上生菓子が数多く並びます。ところが、それ以外の和菓子屋は、比較的控えめ。なかには、まったく販売をされないというお店もあります。

今回は、あえて「祇園祭が行われるエリアから離れたお店が作る、祇園祭にちなんだお菓子」をご紹介させていただきます。
 

北山で和菓子店を営む老舗、長久堂(ちょうきゅうどう)


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創業天保2年(1831)の老舗和菓子店である、「長久堂」。現在は北山の地にお店を構えていますが、創業当時は四条室町(Google map)にあり、函谷鉾(かんこぼこ)の傍で店を営まれていました。


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店内


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店内の喫茶室には、その当時の様子が描かれた額が飾られています。

この時期になると、店頭には様々な祇園祭の意匠のお菓子が並びます。



「コンチキチン♪」の音色が聞こえてきそう 遠囃子(とおばやし)


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遠囃子454円(7/8~17販売予定)※事前にご予約いただきますと確実です


八坂神社のご神紋は、左三巴(ひだりみつどもえ)と木瓜紋(もっこうもん)。その「左三巴」の紋を外郎(ういろう)生地にすり込み、赤こしあんを包んだお菓子です。

召し上がられる方が想像を働かせてそれぞれの祇園祭を感じていただけるように、外郎生地には、あえて色をつけずに神々しい雰囲気に仕上げられています。「遠囃子」という銘が付けられていることを知り、手のひらにのせ、お菓子に心を寄せて見つめるひと時。

「コンチキチン♪」と、鉾の上で賑やかに奏でられる祇園囃子が聞こえてくるかのよう。皆さんは、こちらのお菓子からどのような情景を思い描かれるでしょうか。



神聖なる鴨川の水に思いを寄せて 神輿洗式(みこしあらいしき)


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神輿洗式454円(7/1~17販売予定)※事前にご予約いただきますと確実です


祇園祭の前祭(さきまつり)で巡行する鉾の鉾建てが始まる、7月10日。その夜には、3基の神輿が八坂神社の舞殿に据えられます。

そのうちの1基、素戔嗚尊(すさのおのみこと)をまつる中御座(なかござ)の神輿が、松明に照らされながら四条大橋の上まで担がれます。そして、橋の上で鴨川の水を榊(さかき)に含ませて神輿に水をかけて清める、「神輿洗式(みこしあらいしき)」が行われます。

祇園祭の意匠は数多くありますが、神輿洗式を題材にした意匠のお菓子は、私が知るところでは、こちらのお菓子のみ。道明寺羹と小倉羹で構成された暑いこの時期にぴったりのお菓子です。

神聖なる鴨川の水を感じながらいただいてみてはいかがでしょうか。



祇園囃子が響く夜、願いを掛けてお詣りを 無言詣り(むごんまいり)



祇園祭の前祭。建ったばかりの鉾や山を動かす「曳き初め(ひきぞめ)・舁き初め(かきぞめ)」(7/10~14)、山鉾が建ち並ぶ鉾町のそぞろ歩き、そして宵山(7/14~16)や、八坂神社の献茶祭(7/16)などで京都の夏を感じ、迎える「山鉾巡行」(7/17)、そして「神幸祭」(7/17)。

祇園囃子の音色が耳で鳴り響く、余韻—

山鉾巡行で山や鉾が通るたびに、手を合わせて祈るおばあちゃんとお孫さん。山鉾町に暮らす人々にとって「祇園祭」は、大切な神事であることを忘れてほしくはありません。

祭りの期間中には多くの習わしがあり、今なお大切に守り継がれています。祇園の花街に伝わる「無言詣り」もそのひとつ。舞妓さんが、願い事を叶えてもらうために行う風習です。

八坂神社を出発したお神輿は、神幸祭の後、7月24日まで四条の御旅所に滞在します。その1週間の間に、八坂神社から御旅所まで、“道中誰とも言葉を交わさずに7往復して願掛け詣をする”というものです。


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無言詣り454円(7/8~17販売予定)※事前にご予約いただきますと確実です


外郎で舞妓さんのお袖を表現したお菓子。舞妓さんのイメージが出るように水色とピンクのぼかしで、はんなりとした色合いに仕上げられています。

「無言詣り」にあやかって、誰とも言葉を交わさずにこちらのお菓子を召し上がって願掛けをしてみてはいかがでしょうか。ひょっとすると願いが叶うかもしれませんよ。

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今回は3種類のお菓子をご紹介いたしましたが、その他にも祇園祭にちなんだお菓子が、その日によってお店に並ぶこともあります。

お菓子で祇園祭を感じられるのも、この時季の楽しみのひとつ。様々なお菓子から新しい祇園祭の楽しみ方を見つけるのも、面白いかもしれませんね。

■長久堂 北山店
【営業時間】9:00~18:00
【定休日】不定休
【電話】075-712-4405
【アクセス】地下鉄烏丸線「北山駅」から徒歩約10分  Google map
【公式Facebook】https://www.facebook.com/chokyudo/

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文・写真:小倉夢桜 —Yume—
和菓子ライフデザイナー/ライター/フォトグラファー。京都五感処・京都Loversフォーラム代表。2012年よりホームページ『きょうの「和菓子の玉手箱」』を運営し、毎日京都の和菓子を紹介し続けている。現在は『月刊京都』(白川書院)で「月刊京都版・きょうの『和菓子の玉手箱』」を連載中。
【きょうの『和菓子の玉手箱』】http://kyoto-lovers-forum.com
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~みさごレポ~
「長久堂」さんは、以前にも雪だるまの和菓子オリジナルの干支菓子をご紹介させていただいたお店。どの和菓子も、女性の職人さんならではの美しい色合いと可愛らしい意匠が特徴的です。今回も見ているだけで雅さを感じる、はんなりとした祇園祭の雰囲気が伝わってくるようなお菓子で、うっとり見とれてしまいました。神輿洗式の、水のなかに沈んでいるかのような木瓜紋・・・ 涼やかで、とっても美しいですよね。

お菓子はそれぞれの儀式の日程に合わせて作られるため、販売時期が少しずつ異なります。また、今回ご紹介した以外にも祇園祭をモチーフとした和菓子が店頭に並ぶこともあるとのこと! おかいものの際には事前に問い合わせてみてくださいね♪


 

Written by. みさご

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