「そう京」スタッフが感動した、京都の仏像[醍醐寺の明王編]

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醍醐寺 不動明王像

 

京都のお寺を巡っているときに出会う、麗しい仏様。そのなかで、今回注目するのは「明王」像。麗しい・・・ といっても、明王様は忿怒(ふんぬ)の形相をされていることが多く、優しげな表情の多い仏様の中では、異形のお姿。正直なところ、「怖い・・・」と感じる方もいらっしゃるかと思います。

でも、その“怒り”を表現するために仏像も多種多様なお姿をされていて、平安時代以後、日本でもたくさんの尊像が作られてきました。密教系の寺院を中心に祀られ、京都では、東寺・講堂の立体曼陀羅や、大覚寺神護寺などが有名。そのなかで特に私が好きなのが、伏見区・醍醐にある醍醐寺。平安期以降の様々な明王像を伝えられています。明王様に会いに、醍醐寺を訪ねました♪

※お寺の仏像は、原則として撮影禁止です。今回は特別な許可を得て撮影・掲載しています。

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毎年2月23日は「五大力さん」の日。
醍醐寺最大の年中行事は、“五大明王”を祀る法要です。


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毎年2月23日に行われている醍醐寺最大の年中行事、「五大力さん」。正式には「五大力尊仁王会」といい、五大明王の力を授かり、その化身・五大力菩薩によって国の平和や国民の幸福を願う法要です。

「明王」とは、“密教の最高仏・大日如来の命を受け、仏教に帰依しない民衆を忿怒の形相で教化する”という仏様で、“悪を打ち砕き仏法を守る”非常に強い力を持ちます。様々な明王が存在し、特に中心的な役割を担うのが、大日如来の化身ともされる「不動明王」を中心とした5体の明王、「五大明王」です。


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餅上げ力奉納


「五大力さん」は平安時代・醍醐天皇の御代にはじまるという歴史ある法要。大きなお餅を持ち上げる「餅上げ力奉納」は毎年ニュースになりますので、ご存じの方も多いのではないでしょうか。「御影(みえい)」というこの日だけに授与されるお札もあり、災難・盗難除けのご利益があるそう。ちなみに、「五大力さん」に先立つ2月15日から21日まで、国宝・金堂にて「五大力尊仁王会前行法要」が行われ、どなたでも参座できるんですよ♪

⇒詳細は公式ホームページをご確認ください


醍醐寺に伝わる五大明王像とは?


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金堂とソメイヨシノ


五大明王を篤く信仰する醍醐寺。広大な境内は、醍醐山の麓に広がる「下醍醐」と山上の「上醍醐」に分かれていて、「五大力さん」は、元々、上醍醐の五大堂で行われていました。現在では、下醍醐の国宝・金堂で行われ、下醍醐の不動堂に安置される「木造五大明王像」が移座され、法要が行われています。この木造五大明王像は現在修復プロジェクトを実施中で、4年前から一体ずつ修復に入られているそう。

そのほかに伝わる五大明王像は、境内の霊宝館で拝見できます。

※醍醐寺霊宝館は、本館・平成館・仏像棟に分かれ、時期により公開箇所が異なります。
 春期・秋期は全館開館予定。それ以外の時期は本館・平成館・仏像棟のいずれか1~2ヵ所が開館。
 詳しくは、醍醐寺までお問合せください。【電話】075-571-0002

上醍醐五大堂 「木造五大明王像」@霊宝館・平成館


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霊宝館・平成館に安置される「木造五大明王像」(重文)。元々は上醍醐の五大堂で祀られていて、平成26年(2014)に初めて山を降り、霊宝館に遷座されました。五大堂は醍醐寺創建の頃、延喜13年(913)に建てられたという歴史あるお堂。幾度かの火災に遭い、当初の明王像も焼けてしまい、現在の像は江戸時代に彫られたもの。大威徳明王の乗る水牛像のみ火災を免れ、平安時代のままのお姿なのだとか。


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大威徳明王像


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水牛像


ひとつひとつのお像を近くで拝見すると、明王像の威容がよくわかります。五大堂壁画の下絵をバックに、左から大威徳、軍茶利(ぐんだり)、不動、降三世(ごうざんぜ)、金剛夜叉の順に並ばれているのですが、ふと「どうしてこの順番なのだろう」と思い、醍醐寺霊宝館参与の長瀬さんにお話を伺いました。


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長瀬さん 「明王像は、東寺の立体曼陀羅を思い出していただけばわかりやすいのですが、不動明王を中心に、東(降三世明王)西(大威徳明王)南(軍茶利明王)北(金剛夜叉明王)、4体の像が配置されます。不動明王の左手側に東、右手側に南、南の後ろに西、東の後ろに北と並び、当初は前後の像が一直線におかれていました。時代が下がると、前列が少し開き、正面からすべての像が見えるように配置された。それを横一列に並べる時、中央の正面から見た場合の距離感に合わせると、左から“西・南・中央・東・北”となります」

そう伺うと、像の並びにも奥行きを感じられます。

※平成館は~2020年3月1日(日)まで公開。3月22日(日)~5月15日(金)春期特別展にて公開。


上醍醐中院「木造五大明王像」@霊宝館・仏像棟


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不動明王像


醍醐寺霊宝館には、もうひとつの五大明王像が祀られています。仏像棟のなかにいらっしゃるのは、平安時代に作られた木造五大明王像(重文)。こちらは、元は上醍醐・中院に祀られていたそうで、中院というのは醍醐寺を開いた聖宝(しょうぼう)の弟子・観賢が建てたお堂。925年頃までにはこの像も造られたと考えられているそう。

この五大明王像。目を剥き、歯をくいしばる忿怒の形相が強調して表現され、動きもダイナミック。どこかコミカルな感じもします♪

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金剛夜叉明王像


光背の火炎も荒々しく、漫画のキャラクターに出てきそうな、とても現代的なお姿。平安時代の作と思えません・・・


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大威徳明王像


私が特に好きなのが、こちらの大威徳明王像。怒りの明王像と水牛のつぶらな瞳の対比がおもしろく、表現がとてもユニークです! この愛らしさはずっと拝んでいたくなります・・・

ちなみに、仏像棟には、快慶による不動明王像も祀られていて、この迫力!


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快慶作・不動明王像


※仏像棟は2020年3月22日(日)~5月15日(金)春期特別展にて公開。

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すばらしい仏像が一堂に会する、醍醐寺霊宝館。かつては上醍醐まで登らなければ出会うことができなかった仏像に、麓の霊宝館でお会いできるのは、現代の私たちの特権かもしれません。2月は「五大力さん」もあり、特に明王様とのご縁が強い時期なので、ぜひお参りに訪れてみてくださいね。

■醍醐寺
【拝観時間】
 [三宝院・霊宝館・伽藍]9:00~17:00(発券終了16:00)※12月第1日曜日の翌日~2月末は16:30(発券終了15:30)
 [上醍醐]9:00~16:00 ※12月第1日曜日の翌日~2月末は15:00
【拝観料】
 3箇所共通券[三宝院・霊宝館・伽藍]春期・秋期1,500円(それ以外の期間800円)
 [上醍醐]600円
【電話】075-571-0002
【アクセス】地下鉄東西線「醍醐駅」から徒歩約13分 Google map
【公式ホームページ】https://www.daigoji.or.jp/

★「五大力さん(五大力尊仁王会)」の詳細はこちら

★醍醐寺 霊宝館特別展
【日程】2020年3月22日(日)~5月15日(金)9:00~17:00(受付終了16:30)
【料金】1,500円(霊宝館、三宝館、伽藍3箇所共通券)

 

Written by. みさご

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