2022年祇園祭。ついにお目見え!“鷹山”巡行復帰目前のリハーサルをレポート

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7月1日よりスタートした祇園祭。3年ぶりに山鉾巡行が行われますが、2022年、巡行(後祭)復帰となる“鷹山”も大きな話題となっています。2021年11月より本番にむけてさまざまな練習が始まり、今年のゴールデンウィークには祇園祭本番を想定したリハーサルが6日間にわたり行われました。

今回は、熱気に満ちたリハーサルの様子とともに、気になる鷹山の宵山・巡行スケジュールをご紹介。2022年祇園祭では、鷹山の雄姿をお見逃しなく!

\リハーサルを前に行われた鷹山の練習風景は、こちらをチェック!/
⇒2022年祇園祭。約200年ぶりとなる“鷹山”巡行復帰までのカウントダウンが始まる!
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【4月29日・30日】櫓(やぐら)組みと縄がらみ

慣れた手つきで縄を操る手伝い方

慣れた手つきで縄を操る手伝い方

リハーサル初日の4月29日と30日は、山車(だし)の本体である櫓の組み立てから始まりました。手伝い方(てつだいかた)に所属するメンバーが、「縄がらみ」と呼ばれる技法を用い、釘を使わず藁縄(わらなわ)で縛りながら部材を固定していきます。

2021年の11月から練習を重ね、縄を操る手は熟練の域に。着々と作業が進みます。

【5月1日】真木建て(しんぎたて)

  • 真松と真木を繋ぐために、接続部は斜めにカット

    真松と真木を繋ぐために、接続部は斜めにカット

  • 真松と真木を重ね合わせ、鉄の輪と柱の隙間にクサビを打ち込んで固定します

    真松と真木を重ね合わせ、鉄の輪と柱の隙間にクサビを打ち込んで固定します

  • 強度を高めるために、2本の柱の接合部を麻縄と荒縄で二重巻きに

    強度を高めるために、2本の柱の接合部を麻縄と荒縄で二重巻きに

  • 繋いだ真松を横倒しの櫓に差し込みます

    繋いだ真松を横倒しの櫓に差し込みます

3日目は、横倒しにした櫓に真松(しんまつ)を固定してから起こす「真木建て」と呼ばれる作業が行われました。

祇園祭の巡行に参加する山車は大きく分けて「鉾」と「山」の2種類に分けられ、山は「舁き山(かきやま)」「曳き山(ひきやま)」に分かれます。

鉾は、屋根を突き抜けるように20数メートルの真木(しんぎ)と呼ばれる柱をたてますが、山は真木の代わりに松(真松)をたてるのが一般的です。なかでも、鉾に近い形をした曳き山は、屋根の上に松をたてるため迫力満点。今まで、この形の山は北観音山、南観音山、岩戸山の3基だけでしたが、2022年から鷹山が加わります。
  • 復元された雉の人形

    復元された雉の人形

  • 雉の足についた半円型の板を枝に沿わせ、縄で縛って固定します

    雉の足についた半円型の板を枝に沿わせ、縄で縛って固定します

江戸時代の災害で、山車の部材や懸装品(けんそうひん)の多くを失った鷹山。復元にあたり昔の絵図を調べたところ真松にとまる雉の姿が確認されました。残念ながら実物は現存していなかったため、「桐塑(とうそ)人形」の人間国宝(重要無形文化財保持者)である林駒夫さんの監修のもと、仏師の佐川俊夫さんの手によって新調されることに。

羽の重なりが立体的に表現され、今にも羽ばたきだしそうなほどリアルな造型です。櫓を起こすと真松は10数メートルの高さになりますが、木彫りの雉は意外と大きく、雄特有の赤い顔と緑の鮮やかな羽が目立つので、ぜひ探してみてください。
  • 掛け声にあわせて全力で引っ張れ!

    掛け声にあわせて全力で引っ張れ!

  • 無事に建ち上がった真松

    無事に建ち上がった真松

真木建ては、機械を使わず人力で行います。音頭取(おんどとり)による「エン、ヤーラ!」のかけ声にあわせて「ヤー!」と綱を引っぱれば、ギシギシと音を立てて真松が建ちあがりました。

天を貫く真松の立派な姿を見上げれば、拍手をせずにはいられません。

【5月2日】舞台と屋根の組み立て

  • 欄干など、ひとつのパーツとして保管してあるため、全体の組み立ては驚くほど早い

    欄干など、ひとつのパーツとして保管してあるため、全体の組み立ては驚くほど早い

  • 複雑そうな構造の屋根も、あっという間に形に。まるでプラモデルのよう

    複雑そうな構造の屋根も、あっという間に形に。まるでプラモデルのよう

4日目は、真木建てを終えた櫓に、舞台と屋根が組み上げられます。

作業を担当するのは、大工方(だいくかた)。熟練の技術が必要なため、基本的にはメンバーは大工さんばかりです。

鷹山の御神体人形。左から鷹遣、樽負、犬遣

鷹山の御神体人形。左から鷹遣、樽負、犬遣

鷹山を復元するにあたり、江戸時代の文献や絵画資料を参考に実施設計を担当したのは、設計士の末川協(きょう)さん。いちから設計図を引く際に特に力を入れたのは、舞台と屋根を繋ぐ柱の構造だと言います。

鷹狩りを表現する鷹山には、鷹遣(たかつかい)、樽負(たるおい)、犬遣(いぬつかい)の3体の御神体人形が祀られています。宵山や巡行の際には、3体すべてを山に飾り、その姿を観衆に見てもらわなければなりません。

末川さん 「多くの鉾や曳き山では、屋根を支える四隅の化粧柱(けしょうばしら)のほかに補助柱が入ります。補助柱があると構造的に強くなるという利点はありますが、限られたスペースを圧迫し視界を遮ってしまうため、“3体の御神体人形を飾り、見せる山”を目指す鷹山としては採用できませんでした」

舞台下まで伸ばした柱と横向きの構造材が連結され、逆さ向きの鳥居型に

舞台下まで伸ばした柱と横向きの構造材が連結され、逆さ向きの鳥居型に

そこで考えられたのが、4本の柱を舞台の下で固定する特殊な構造です。

末川さん 「床下まで伸ばした縦向きの化粧柱を横向きの構造材で固定することで、ちょうど鳥居を逆さにした形にします。山車の4面で同じ構造をとることで、補助柱を使わず山の強度を高めるとともに、巡行の激しい動きに耐えることを目指します」
  • 中央付近の真木以外は広々とした舞台上

    中央付近の真木以外は広々とした舞台上

難題を解決した鷹山は、他の山鉾と比べても、屋根と舞台の空間がかなり広い山になりました。この柱の構造は、残念ながら懸装品を飾ると隠れてしまうそう。興味のある方は、ぜひ山建ての日(7月18日)に見に行ってみてください。

【5月3日】懸装品の飾り付け準備

  • 懸装品を掛けるための枠組みを設置

    懸装品を掛けるための枠組みを設置

  • 水平を確認しながら金具を取り付けます

    水平を確認しながら金具を取り付けます

  • 音頭取が持つ力綱(ちからづな)の取り付け位置も確認

    音頭取が持つ力綱(ちからづな)の取り付け位置も確認

この日は、懸装品を山へ飾るための金具を山車に取り付ける日。新調されたばかりの水引(みずひき)胴懸(どうかけ)をあわせながら慎重に作業が行われます。

網隠し(あみかくし)や胴懸など、2022年までに鷹山が新調した懸装品はたくさんありますが、なかでも一際目を奪われたのが一番水引(いちばんみずひき)です。
  • 夕日に照らされ金糸の輝きが美しい一番水引

    夕日に照らされ金糸の輝きが美しい一番水引

  • 真松の下部を覆う真っ赤な網隠し

    真松の下部を覆う真っ赤な網隠し

  • ハスの花やザクロの文様が描かれたペルシャ絨毯の胴懸

    ハスの花やザクロの文様が描かれたペルシャ絨毯の胴懸

水引とは山車の胴回りの上部に飾られる懸装品で、一番水引はその最上部に位置します。

伝説上の生き物である麒麟(きりん)が金地に鮮やかな色の糸で織られた西陣織で、龍村美術織物が1年がかりで手織りされたそう。龍村美術織物は、長きにわたり山鉾を飾る装飾幕の新調、復元、修理を行ってこられた老舗。お祭りでは、熟練の技によって完成した、4面あわせて10頭いる麒麟の躍動感ある姿にご注目ください。

【5月4日】鷹山完成、そして試し曳きへ

天候に恵まれた最終日。朝から保存会の皆さまの手によって、すべての懸装品が飾られ、鷹山がその雄姿を現しました。
  • 山車の上で祭囃子を奏でる囃子方

    山車の上で祭囃子を奏でる囃子方

  • 舞台正面に見えるのは御神体人形の鷹遣

    舞台正面に見えるのは御神体人形の鷹遣

3体の御神体人形が飾られたあと、山へと乗り込んだ約30人の囃子方(はやしかた)が祇園囃子を奏でます。そして、山車の正面に登った音頭取が扇子を構え・・・

「エン、ヤーラ、ヤー!!!!」

関係者が握る綱に曳かれ、ついに鷹山が動く!

関係者が握る綱に曳かれ、ついに鷹山が動く!

力一杯の掛け声に導かれ、ギシギシと産声のように音をたてながら鷹山が動き出します。盛大な拍手のなか、復興への活動が始まった2012年から10年という時をかけて、196年ぶりに鷹山が復活しました!

2022年祇園祭の鷹山のスケジュール

本番さながらの迫力ある辻廻し

本番さながらの迫力ある辻廻し

巡行さながらに試し曳きや辻廻しを行ったとはいえ、本番は7月24日(日)に行われる後祭巡行です。当日観覧したいという方のために、2022年の鷹山における山建てから後祭巡行までのスケジュールの一部をご紹介します。
◆7月18日(月・祝)・19日(火) 山建て
◆7月20日(水) 懸装品の飾り付け・曳き初め
◆7月21日(木) 【宵々々山】お囃子・授与品販売
◆7月22日(金) 【宵々山】山搭乗・お囃子・授与品販売
◆7月23日(土) 【宵山】山搭乗・お囃子・授与品販売
◆7月24日(日) 後祭巡行(8:00町内出発~12:30頃帰町)

※7月21日(木)~23日(土)の授与品販売は10:00~21:00まで
※山の一般搭乗は22日(金)・23日(土)のみ

鷹山町内で行われる“鷹”ゆかりの特別展にもご注目

  • 姫川明輝 作「鷹絵」

    姫川明輝 作「鷹絵」

  • 諏訪流放鷹鷹師 大塚紀子さん

    諏訪流放鷹鷹師 大塚紀子さん

  • ちおん舎は歴史ある京町家。伝統的な京都の夏の室礼にもご注目

    ちおん舎は歴史ある京町家。伝統的な京都の夏の室礼にもご注目

最後に、鷹山にちなんだ素敵な特別展をご紹介します。

会場は、鷹山近くの衣棚町にあり、鷹山保存会副理事長がオーナーを務めるちおん舎。鷹山の3体の御神体人形が「鷹狩り」を表現していることにちなみ、世界で活躍するアーティスト 姫川明輝さんが手がける鷹の墨絵と、現役の鷹匠 大塚紀子さんが実際に使用されている装束や道具が同時に展示される特別展『鷹で繋がる縁展』が開催されます。

会期は7月22日(金)~24日(日)の3日間。入場無料ですので、宵山や巡行の観覧とあわせて訪ねてみてください。

⇒『鷹で繋がる縁展』とちおん舎の詳細情報はこちら

ご来場の前に、最新情報の確認をお忘れなく

お披露目後の5月5日に行われた練習。本番まで手が抜けません

お披露目後の5月5日に行われた練習。本番まで手が抜けません

いよいよ間近に迫ってきた「鷹山の巡行復帰」という、約1150年の祇園祭の歴史に刻まれる一大事。ここまでお読みいただいた皆さまも、その日が待ち遠しいことかと思います。

本記事の掲載時点では、2022年の宵山や山鉾巡行は大部分が本来の形で開催される予定です。しかし、新型コロナウイルスの感染状況によっては、計画の大幅な見直しや再検討が行われる場合も。

訪れる前に必ず、鷹山保存会のFacebookや、祇園祭山鉾連合会のホームページに記載の最新情報をご確認ください。マナーを守って、2022年の祇園祭を楽しみましょう!

⇒鷹山保存会のFacebookはこちら

⇒祇園祭山鉾連合会のホームページはこちら
※掲載内容は2022年7月7日時点の情報です。最新情報は掲載先へご確認ください。

Written by. きのこ

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