重森先生と東福寺のお庭めぐり~本坊庭園編~

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現在展開中の「そうだ 京都、行こう。」秋キャンペーンでは紅葉の東福寺の風景を中心にお届けしています。CMやポスターに誘われて東福寺を訪れたなら、ぜひご覧いただきたいのが昭和の名作庭家・重森三玲が手掛けた庭園です。
 
「そう京」ホームページでは、キャンペーンにあわせてお庭の魅力に迫る記事を短期連載。第1回の芬陀院に続き、今回は重森三玲の代表作と名高い本坊庭園を訪ねました。
 

市松模様のお庭が生まれたきっかけ 

ご案内いただいたのは、重森三玲のお孫さんで、ご自身も作庭家の重森千靑さん(以下、重森先生)。本坊庭園は、方丈を囲む東西南北4つのお庭で構成されています。なかでも人気が高いのが市松模様を配した北庭です。
 
アートな意匠は日本画家の東山魁夷の目にも留まり、連作『京洛四季』に作品が収められています。
  • 南庭。お庭の中央にあるのが勅使門です

    南庭。お庭の中央にあるのが勅使門です

  • 勅使門の周りに切石がわずかに残されています

    勅使門の周りに切石がわずかに残されています

重森三玲の感性によって市松模様のお庭が生まれたのは間違いないのですが、誕生にはきっかけがあったと重森先生は言います。それは作庭にあたって東福寺から提示された「本坊にあるものは移動しても構わないが、廃棄せずに必ず再利用する」という条件でした。
 
じつは、重森三玲は南庭を作庭する際に勅使門から方丈に向かって敷き詰められていた切石を撤去しています。「大量に出た切石を前に、お寺からの条件がよぎり、三玲さんは頭を悩ませたかもしれません。しかし、制約があったからこそ、新しいアイデアが生まれたとも言えます」と重森先生。
  • 開山堂

    開山堂

  • 通天橋をわたって、右奥に進むと開山堂があります

    通天橋をわたって、右奥に進むと開山堂があります

「結果的に切石を並べた市松模様の北庭が出来上がるのですが、その作庭のヒントになったであろう場所が境内にあります」と重森先生に連れられて向かったのが開山堂です。
 
東福寺を開いた聖一国師が入寂した場所で、いまは堂内に尊像が祀られています。
 
※通天橋エリアの拝観には、本坊庭園とは別に拝観料が必要です
お参りを済ませたら、振り返ってお庭に注目を。江戸時代初期に作庭されたお庭に、なんと砂紋で市松模様が描かれているのです!
 
「三玲さんは本坊庭園を作庭する際にここのお庭の修復にも携わっていました。東福寺は公家の九條家が聖一国師を開山に迎えて創建したお寺です。お公家さんにとって市松模様はもともと馴染み深い意匠。それが東福寺で一番大切な開山堂の前にも用いられているということを知り、リスペクトの意味も込めて北庭をデザインしたのでしょう」と重森先生。
 
モダンで斬新と評されることの多い重森三玲の作風ですが、その根底には歴史への温かい眼差しが感じられます。

北庭の見どころ①「ぼかし表現」

  • 廊下左端からの眺め

    廊下左端からの眺め

北庭の鑑賞ポイントはまだあります。お庭に向かって左手は市松模様が均等に並んでいるのに対し、右へいくほど切石がランダムに配置されているのが分かるでしょうか。重森三玲は日本画家を志していたこともあり、“ぼかし表現”が作庭に採り入れられているそうです。
 
廊下の左端に立って庭園の右奥を眺めてみると、より分かりやすいはずです。

北庭の見どころ②「隠れ市松模様」

  • 北庭の五石

    北庭の五石

  • 東庭。北斗七星の七石

    東庭。北斗七星の七石

  • 西庭の三尊石。お庭に向かって左隅にあります

    西庭の三尊石。お庭に向かって左隅にあります

右へ進むにつれて市松模様がフェードアウトしていく…  と思いきや、右端にも切石が使われています。これは東庭の北斗七星の七石、ここにある五石、そして西庭にある三尊石で“七五三”としています。重森三玲の遊び心をぜひチェックしてみてください♪

北庭の見どころ③「切石の大きさ」

お庭を見ると市松模様を構成するひとつひとつの切石はそれほど大きくないように感じますが、一辺約45センチもあるそうです。
 
北庭から東へ進んだところにある雨樋には、なんと切石が受け皿に使われています。周りを苔に囲まれていない分、大きさがよく分かるはず。

北庭の見どころ④「季節の彩り」

  • 紅葉の見頃は例年12月初旬頃

    紅葉の見頃は例年12月初旬頃

  • 北庭にサツキが咲くと、ピンクのハートが出現します

    北庭にサツキが咲くと、ピンクのハートが出現します

市松模様に美しい彩りを添えるのが秋の紅葉です。北庭の奥には東福寺のモミジや苔を育む洗玉澗という渓谷があり、毎年、鮮やかなモミジに出合えます。比較的色づきは遅く、見頃は12月初旬あたり。また、5月末頃の可愛らしいサツキの花もおすすめです。
  • 東庭

    東庭

  • 西庭

    西庭

今回は北庭を中心にご紹介しましたが、本坊庭園には北斗七星を象った東庭や、大市松模様の西庭など、それぞれに魅力があります。「もっとお庭について学びたい!」という方は、重森先生とお庭を巡るイベントに参加してみませんか。本坊庭園をはじめ、龍吟庵光明院を訪ねます。11月2日(日)、11月16日(日)、12月7日(日)の3日間限定開催ですので、気になる方は早めにお申込みを♪
 
 
知れば知るほど面白い庭園の世界。最終回は龍吟庵を訪ねます。11月7日(金)に公開予定ですので、どうぞお見逃しなく!
 
【拝観時間】9:00~16:30(受付終了16:00) 
※11月15日~12月7日は8:30~、12月8日~3月は16:00まで(受付終了15:30) 
【拝観料】通天橋・開山堂600円(11月15日~12月7日は1,000円) 
本坊庭園500円 
共通券拝観券1,000円(通天橋・開山堂、本坊庭園 ※11月15日~12月7日を除く) 
【アクセス】JR奈良線「東福寺駅」から徒歩約10分 Google map 
【公式ホームページ】https://tofukuji.jp/
※掲載内容は2025年10月22日時点の情報です。最新情報は掲載先へご確認ください。

Written by. 「そう京」編集部

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