重森先生と東福寺のお庭めぐり~龍吟庵編~

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昭和の名作庭家 重森三玲のお孫さんでご自身も作庭家の重森千靑さん(以下、重森先生)と、東福寺のお庭を訪ねるシリーズ。第1回芬陀院、第2回本坊庭園とご紹介してきましたが、短期連載の最終回を飾るのは塔頭の龍吟庵です。今秋の「そうだ 京都、行こう。」キャンペーンCMにも登場するお庭の見どころを重森先生にお聞きしました。
 

11月8日(土)より特別公開がスタート!

表門(重文)

表門(重文)

龍吟庵は東福寺第三世 大明国師の住居跡。塔頭のなかでも一番の格を有し、常日頃は拝観できません。春と秋に特別公開が行われることもあり、今年(2025)は11月8日(土)から12月7日(日)まで拝観できます。少し奥まったところにあるため、東福寺のなかでも穴場感があります。
  • 偃月橋

    偃月橋

  • 偃月橋の入口

    偃月橋の入口

龍吟庵へ向かうには渓谷「洗玉澗(せんぎょくかん)」に架かる「偃月橋(えんげつきょう)」を渡ります。通天橋、臥雲橋とあわせて東福寺三名橋のひとつに数えられ、3つのなかで唯一の重要文化財です。
 
慶長8年(1603)に架けられた橋は趣があり、敷き詰められた板の隙間から谷底が見えるのも一興です。

国宝の方丈を意識した南庭

  • 方丈

    方丈

  • 扁額。龍吟庵の文字は足利義満の筆

    扁額。龍吟庵の文字は足利義満の筆

  • 方丈の裏に開山堂があり、大明国師の像が祀られています

    方丈の裏に開山堂があり、大明国師の像が祀られています

お庭を理解するうえで重要となるのが方丈です。建物の正面に架かる扁額の裏に建立年を示す「嘉慶元年(1387)」の銘があり、室町時代初期に建てられた現存最古の方丈として国宝に指定されています。昭和33年(1938)から4年かけて解体修理が行われ、昭和39年(1964)、装いを新たにした方丈の周囲にお庭を作ることになったのが重森三玲でした。

南庭

南庭

南庭は一面の白砂が印象的です。巨大な石組など、あっと驚くような重森三玲の作風が感じられないと思う方もいるかもしれません。「三玲さんは国宝の方丈に敬意を払い、禅寺の方丈前庭として一般的な無の空間をあえて作っています」と重森先生。

しかし、期待を裏切らないのが重森三玲。お庭の奥にある竹垣に注目すると、なんと稲妻が描かれています。重森先生によると、重森三玲は竹垣のデザインにかなりのこだわりがあったそう。龍吟庵には3つのオリジナル竹垣があり、じつは稲妻は次のお庭への伏線。廊下を歩いて西側へ進むと…

ダイナミックな龍のお庭

  • 龍吟庭

    龍吟庭

  • 重森先生が指さしている石組が龍の頭にあたります

    重森先生が指さしている石組が龍の頭にあたります

雷を呼ぶ龍のお出ましです! 重森三玲は龍吟庵という庵号にちなみ、西庭に「龍吟庭」を作り上げました。モルタルで縁取った白砂と黒砂は雲をあらわし、龍が巨大な体をうねらせながら飛ぶ様子を見事に表現しています。立石で組まれた龍の頭はいかにもという感じで、作品の完成度の高さに見惚れてしまいますが、重森三玲が龍を題材として、これほどダイナミックに表現したのは龍吟庵以外にないそうです。
  • 円を描くように石が組まれています

    円を描くように石が組まれています

  • 石の表情や向きを考慮して、龍の体のラインを巧みに形作っています

    石の表情や向きを考慮して、龍の体のラインを巧みに形作っています

「龍の頭から反時計周りに円を描くように石を配置しているのが分かりますか?」と重森先生。第1回の芬陀院編で“渦巻状に石を据えるのは室町期のお庭に見られる特徴”とご紹介しましたが、重森三玲は「龍吟庭」の作庭にも同じ手法を用いています。これは室町時代に建てられた方丈にふさわしいお庭であるようにと意識していると重森先生は言います。

北西側にあるオリジナル竹垣も要チェックです。渦巻き模様は中国で雷雲をあらわすといいます。龍にちなんでいるのはもちろん、仏教が中国から伝来したこと、大明国師が宋にわたって修行したことを加味しているそうです。重森三玲の細やかな気配りに、あらためて尊敬の念を抱きます。

日本画の経験をいかした作庭

  • 奥に見える庫裏は重要文化財に指定されています

    奥に見える庫裏は重要文化財に指定されています

方丈をぐるりと進むと、赤砂が印象的な坪庭があります。題材は大明国師の幼い頃のエピソード。高熱で山中に倒れた大明国師をオオカミの群れが襲い、今まさに二匹の犬が救い出さんとしている場面が形作られています。
 
中央の横石が大明国師、その前後に犬、四方に据えられている群れがオオカミです。「オオカミに立ち向かう犬や、逃げていくオオカミなど、石の向きを観察すると想像が膨らみます。赤砂は傷ついた大明国師をあらわし、日本画を嗜んだ三玲さんならではの発想がいかされています」と重森先生。

奥にあるのが3つ目のオリジナル竹垣です。一般的な造りに見えますが、よ~く観察すると細い竹の枝が挟まれているのが分かるでしょうか。大明国師が倒れた山に見立てたデザインで、作庭時はもっと多くの枝が使われていたそうです。もはや言われないと気付かない、ツウな鑑賞ポイントです。

重森先生と龍吟庵を訪れたのは9月のため周りの木も青々としていますが、11月下旬から12月上旬にかけてはご覧の紅葉を楽しめます。通天橋エリアのモミジに比べると見頃の時季が遅く、例年12月初旬が狙い目です。枯山水の印象ががらりと変わる晩秋ならではの景色を、ぜひ堪能してくださいね。
 
9月、10月、11月とお届けしてきた「重森先生と東福寺のお庭めぐり」もこれにて終了です。最後までご覧いただいた皆さん、ありがとうございました!
  
■国宝龍吟庵 特別公開
【日程】2025年11月8日(土)~12月7日(日)
    9:00~16:30(受付終了16:00)
【拝観料】1,000円
【場所】龍吟庵 詳細情報はこちら
【公式ホームページ】https://tofukuji.jp/
※掲載内容は2025年11月7日時点の情報です。最新情報は掲載先へご確認ください。

Written by. 「そう京」編集部

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