「タイル」になって100年目! 京都のレトロ・麗し「タイル」スポット

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INDÉPENDANTS

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建物の外壁や内装を彩り、町のあちこちで目にする「タイル」。今ではあたりまえの建築材料となりましたが、その利用が日本で一般化したのは明治時代のこと。そして、敷瓦や腰瓦・化粧煉瓦など様々な名前で呼ばれていた素材が「タイル」という統一名称で呼ばれるようになったのは、大正11年(1922)4月12日のことでした(全国タイル業者大会にて制定)。

それから100年。様々に進化を遂げたタイルですが、今、ひそかに注目を集めているのが、大正から昭和初期にかけて作られた“レトロモダン”なタイル装飾です。戦争や災害の被害が少なかった京都市内では、これらの歴史あるタイルが、今も現役で活躍しています。その中から、気軽に訪れることのできるスポットをピックアップしてご紹介します!

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船岡温泉

船岡温泉

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※新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、京都旅行の際は、政府およびお住まいの都道府県と京都府の要請をご確認ください。京都にお越しの際は、マスクの着用・手指のアルコール消毒など、感染拡大防止の徹底にご協力をお願いいたします。日々、状況は変化しておりますので、事前に最新情報をご確認ください。

★【レトロタイルのキーワード】「和製マジョリカタイル」とは?

船岡温泉

船岡温泉

「和製マジョリカタイル」とは、日本で生産された多彩色のレリーフタイルのこと。華やかで機能性も優れた近代イギリスの「ヴィクトリアンタイル」を模倣し、主に大正時代初期から昭和10年代にかけて盛んに生産されました。国内で内装用として使われただけでなく、世界各国へも輸出され、最近では台湾の和製マジョリカタイル博物館も人気を集めているとか。

カラフルで幻想的なタイル絵巻
【船岡温泉】

京都でタイルといえば真っ先に思い浮かぶのが、こちら、「船岡温泉」です! 大正12年(1923)に料理旅館「船岡楼」の付属浴場としてはじまり、大正・昭和の空気が今も色濃く残されていて、幅広い年代の方から愛されています。
玄関・脱衣所・浴室への通路に張り巡らされる、色鮮やかな和製マジョリカタイルの数々。まるで万華鏡のようにめくるめく世界が展開し、精巧な美しさが見るものを圧倒します。
  • バラやチューリップのようなモチーフも。

    バラやチューリップのようなモチーフも。

  • 浮き上がったレリーフ。周りのリボンのような模様も可愛らしい。

    浮き上がったレリーフ。周りのリボンのような模様も可愛らしい。

  • 男湯にある、七福神(?)のタイル。

    男湯にある、七福神(?)のタイル。

じっくり眺めると、タイルのモチーフにも様々な種類があることが見えてきます。タチアオイなど、植物を中心に15種類ほどのタイルが使われているそうで、その組み合わせの妙にもため息を禁じえません。
■船岡温泉
【営業時間】15:00~23:30(日曜日は8:00~)※営業時間短縮中(2022年1月現在)
【定休日】無休
【料金】430円
【電話】075-441-3735
【アクセス】市バス「千本鞍馬口」バス停から徒歩約5分 Google map
【公式ホームページ】http://funaokaonsen.net/
★「ととのうセット」の入浴券利用可能施設です。

当時の浴槽は、今も床下に!
【さらさ西陣】

船岡温泉の少し東にある「さらさ西陣」は、平成11年(1999)に廃業した「藤の森温泉」をリノベーションした人気カフェ。昭和5年(1930)に建てられた建物をそのままに利用していて、船岡温泉と同じく文化庁の登録文化財に指定されています。
どことなく、船岡温泉に似ているなぁと感じませんか? 実は、「藤の森温泉」も船岡温泉の初代が建てたものなのだとか。現在の船岡温泉の浴槽は白いタイルに改修されていますので、「往時の湯舟は、かくや」と想像を巡らせながら、お風呂気分でカフェタイムを楽しんでみてはいかがでしょうか。
■さらさ西陣
【営業時間】11:30~22:00
【定休日】不定休
【電話】075-432-5075
【アクセス】地下鉄烏丸線「鞍馬口駅」から徒歩約15分、市バス「大徳寺前」バス停から徒歩約5分 Google map
【公式ホームページ】https://www.cafe-sarasa.com/さらさ西陣/
【公式Instagram】https://www.instagram.com/sarasa_nishijin/

\銭湯をリノベーションしたカフェをご紹介しています/
⇒元銭湯をリノベーション! レトロモダンな京都カフェ(2021年12月掲載)

★【レトロタイルのキーワード】「泰山タイル」とは?

  • 先斗町歌舞練場

    先斗町歌舞練場

  • 先斗町歌舞練場

    先斗町歌舞練場

「泰山(たいざん)タイル」とは、大正から昭和初期にかけて、京都の「泰山製陶所」で生産された装飾タイルのこと。愛知県に生まれた池田泰山(1891-1950)が、京都市陶磁器試験場(1896年に設立された日本初の陶磁器試験研究専門機関)に学んだ後、大正6年(1917)京都市南区に泰山製陶所を設立(その後移転をし、1973年に閉鎖)。カラフルなタイルを貼り合わせる「集成モザイク」や、温かみのある布目タイルなど、「美術タイル」と呼ばれるほどに芸術的な、工芸品のようなタイルを手作業で生み出し、人気を博しました。

京都では先斗町歌舞練場や京大北門前カフェ進々堂、下記に紹介する施設などで見ることができ、そのほかにも大阪の綿業会館や兵庫県の武庫川女子大学 甲子園会館(旧甲子園ホテル)などが有名です。

\京大北門前カフェ進々堂など、レトロな喫茶店をご紹介しています/
⇒久々の京都旅で訪れたい、京都のレトロ喫茶店(2021年9月掲載)

元遊郭の建物で、様々なタイルに出会う
【UNKNOWN KYOTO 五条楽園】

サウナ—の聖地として人気の「梅湯」(「ととのうセット」の入浴券も利用できます!)周辺には、かつて「五条楽園」と呼ばれた京都市内最大級の遊郭地帯がありました。今も当時の面影を遺す趣ある建物が並び、歩いていると「泰山タイル」などレトロタイルを発見することができます。

そのなかで、実際に遊郭として使われていた2棟の建物を改装し、ホステル&コワーキングスペース&レストランとして営業しているのが、「UNKNOWN KYOTO 五条楽園」です。
  • 手前がレストラン、奥がホステル&コワーキングスペースです。

    手前がレストラン、奥がホステル&コワーキングスペースです。

  • レストラン入り口の腰壁にも、泰山タイルが。

    レストラン入り口の腰壁にも、泰山タイルが。

100年以上前に建てられたという建物は、迷路のように入り組んだ遊郭らしい不思議な造り。当時の雰囲気をそのままに生かしながら現代風にリノベーションした空間は、落ち着いていてなおかつ機能的で、現在はワーケーション(work&vacation)滞在する方も多いのだとか。
外壁の腰壁や、コワーキングエリア内リビングスペースにある暖炉は「泰山タイル」の特徴である布目タイルが使用されていて、温かみのある雰囲気がそのままに遺されています。玄関エントランスや2階の手洗い場、ワーケーションスペースにも当時のモザイクタイルが。
  • ホステル&コワーキングスペースのエントランス。床や階段のタイルは以前からのもので、カウンターのタイルは新しいもの。

    ホステル&コワーキングスペースのエントランス。床や階段のタイルは以前からのもので、カウンターのタイルは新しいもの。

  • コワーキングスペースのタイルは、改修時に畳をはがしたら出てきたものなのだとか。

    コワーキングスペースのタイルは、改修時に畳をはがしたら出てきたものなのだとか。

  • 2階の水回りのタイルも当時のもの。レトロな雰囲気が今は新鮮に感じられます。

    2階の水回りのタイルも当時のもの。レトロな雰囲気が今は新鮮に感じられます。

タイル装飾の良さを生かして、キッチンなどにも新たなタイルを利用されていて、改めてタイルの可愛らしさを感じられる空間です。レストランだけの利用もできますので、気軽に訪れてみてくださいね。
■UNKNOWN KYOTO 五条楽園
◇レストラン
【営業時間】11:30~15:00(ラストオーダー14:30)
      17:30~23:00(ラストオーダー食事22:00、ドリンク22:30)
【定休日】日曜日
【電話】075-746-4665
【アクセス】地下鉄烏丸線「五条駅」から徒歩約10分、市バス「河原町五条」バス停から徒歩約3分 Google map
【公式ホームページ】https://unknown.kyoto/
【公式Twitter】https://twitter.com/unknown_kyoto

奇跡的に遺された、竣工当時の泰山タイル
【INDÉPENDANTS】

昭和3年(1928)、「関西建築界の父」と称される建築家・武田五一の設計で誕生した、アールデコ様式の毎日新聞社京都市局ビル。モダン建築が立ち並ぶ三条通に位置し、昭和58年(1983)には京都市登録有形文化財に指定されました。平成10年(1998)に新聞社が移転すると、一時は解体の計画もあがりましたが、耐震改修やリノベーションが行われ「1928ビル」として新たな文化スペースに生まれ変わりました。
  • 店内

    店内

  • お昼には週替わりのスペシャルランチ(スープ・サラダ付き1,200円)が登場。この日はアマトリチャーナでした。

    お昼には週替わりのスペシャルランチ(スープ・サラダ付き1,200円)が登場。この日はアマトリチャーナでした。

このビルの地下にあるのが、「INDÉPENDANTS」。現在は音楽を楽しめるカフェレストランとして、京都のアートシーンに欠かせない空間となっていますが、改装直前には膝まで水に浸かり、工事も難しいとされたほど荒れていたのだとか・・・ 幸いにも水を抜くことができ、壁面を覆っていたパネルをどけると、奇跡的に竣工当時のタイルがそのままに現れたのだそうです!
  • 色合いのバランスも美しい。

    色合いのバランスも美しい。

  • この曲線はどうやったのでしょう・・・

    この曲線はどうやったのでしょう・・・

1枚1枚色の異なる美しいタイルが「泰山タイル」だとわかったのは、ここ最近のこと。「窯変タイル」という焼成温度や酸素の量により釉薬の色目が変わるタイルで、「これぞ泰山タイル」と言われるほどに、池田泰山が得意としていた作風です。ひとつとして同じ色がないタイルは焼きものの持つ温かみも感じられ、この地下空間を唯一無二のスペースとしています。
床のモザイクタイルは、「1928ビル」として生まれ変わったときに、当時の京都の芸大生が作った作品。階段のタイルは10年ほど前に、こちらも京都の芸大生が作ったもの。重層的なタイルアートの歴史も、ぜひ感じてみてください。
■INDÉPENDANTS/アンデパンダン
【営業時間】11:30~23:00※変更の場合あり
【定休日】不定休
【電話】075-255-4312
【アクセス】地下鉄東西線「京都市役所前駅」から徒歩約5分 Google map
【公式ホームページ】http://www.cafe-independants.com/

【おまけ】

アンデパンダンを出たら、近くの寺町京極商店街(Google map)にある羅針盤のモザイクタイルにもご注目。三条と四条、どちらの出入り口にもあって、寺町京極商店街の愛称「コンパッソ(羅針盤)寺町」にちなんで設置されたとか。

リニューアル後も大切に遺されています
【京都市京セラ美術館】

撮影:来田猛

撮影:来田猛

昭和8年(1933)、昭和天皇即位の大礼を記念し「大礼記念京都美術館」として創建された、京都市京セラ美術館。令和2年(2020)春にリニューアルし、“公立美術館として日本で現存する最も古い”創建当時の建築を生かしながら、現代的な美術館へと生まれ変わりました。
旧デザインを大切に遺していることがよくわかるのが、西広間。旧エントランスがそのままに保存されていて、この床を彩るモザイクタイルが「泰山タイル」です。多くの人を出迎え模様が擦り切れているのも時代の厚みを感じさせ、長くこの場を守っているのだなと、愛おしささえ感じてしまいます・・・
同館のタイルスポットとしてもうひとつあげたいのが、2階にある談話室。元々は「休憩室」として使われていた部屋で、リニューアルにあたり、子どもも大人も一緒になって学び合えるラーニング活動の場としてリスタートしました。時代を感じさせるモザイクタイルの上に色とりどりの「トリドリ・スツール」が置かれ、市民も旅行者も誰でも気兼ねなく学び合える、開かれたスペースとなっています。月に3回ほど、「ぽよよんタイム」というラーニング担当スタッフが在室する時間も設けられています。

西広間や談話室など展示室以外のスペースはご自由にお入りいただけますので、散歩がてらに立ち寄って、レトロタイルの世界を感じてみてはいかがでしょうか。
■京都市京セラ美術館
【開館時間】10:00~18:00(展覧会の入場は17:30まで)
【休館日】月曜日(祝日は開館)、年末年始(12/28~1/2)
【料金】展覧会ごとに異なる
【電話】075-771-4334
【アクセス】市バス「岡崎公園 美術館・平安神宮前」バス停から徒歩すぐ、地下鉄東西線「東山駅」から徒歩約8分 Google map
【公式ホームページ】https://kyotocity-kyocera.museum/
★「そうだ 京都、行こう。」エクスプレス・カード特典協力先です。
参考文献・映像
『和製マジョリカタイル —憧れの連鎖』INAXライブミュージアム企画委員会、LIXIL出版 2018年
『モダン建築の京都100』石田潤一郎、前田尚武、株式会社Echelle-1 2021年
「京都 タイルと建築めぐりのお供」鷹野律子、大福書林 2021年(非売品)
「モザイクタイル作家・池田泰佑」MBS 2020年12月13日放送
※掲載内容は2022年1月20日時点の情報です。最新情報は各掲載先へご確認ください。

Written by. みさご

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