平安時代に想いを馳せて 和歌が彩る御朱印5選

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大河ドラマの影響を受けて、京都では平安時代にフォーカスをあてた御朱印が数多く登場しています。なかでも今回は、大河ドラマに登場する人物が詠んだ“和歌”をのせた御朱印をピックアップ。期間限定のものもありますので、ぜひチェックしてみてください♪

史実を知れば、大河ドラマ鑑賞がもっと面白くなる!

大原野神社「紫式部御朱印」

参道

参道

洛西にある大原野神社は、藤原氏の氏神である春日大社の神々を祀る古社。大河ドラマの主人公・紫式部も崇敬し、『源氏物語』では天皇が大原野へ行幸するシーンを描いています。

紫式部御朱印(書置きのみ)1,000円

紫式部御朱印(書置きのみ)1,000円

今年(2024)の1月15日より授与を開始した「紫式部御朱印」はパステルカラーが可愛い見開きタイプ。
 
「ここにかく 日野の杉むら 埋(うず)む雪
小塩(をしお)の松に 今日(きやう)やまがへる 」
 
国司に任命された父の為時とともに越前(今の福井県)へわたった紫式部が都を懐かしんで詠んだ歌です。“日野の杉むら”とは、越前富士と称される標高約795メートルの日野山のこと。雪が深く積もる様子を見た紫式部は、大原野にある小塩山にも雪が降っているかしらと想いを馳せました。都を思い出すとき、大原野の風景が心に浮かぶなんて、いかに紫式部にとって大切な場所だったか分かりますね。
 
御朱印では、右に日野山を仰ぎ見る紫式部、左に小塩山と麓の大原野神社がデザインされています。
  • 3種類のクリアファイル

    3種類のクリアファイル

「紫式部御朱印」は可愛らしい鹿の親子のクリアファイルに入れて授与いただけます。鹿は春日の神様の使いです。
 
じつは、クリアファイルは季節によって替わると宮司さんに教えていただきました。春は名桜の千眼桜、秋は参道の紅葉、それ以外の季節は鹿の親子になるのだとか。どれも欲しくなるラインアップです。「紫式部御朱印」は大河ドラマ終了後も引き続き授与されますので、お好みの季節にお参りを♪
 

廬山寺「若紫」御朱印

  • 源氏庭

    源氏庭

  • 桔梗。見頃は6月下旬から9月初めまで

    桔梗。見頃は6月下旬から9月初めまで

紫式部といえば廬山寺もはずせません。かつて同地には紫式部の曽祖父・藤原兼輔の邸宅があり、その流れを受けて紫式部も暮らしたと考えられています。
 
本堂前には、昭和40年(1965)に邸宅址と論証されたことを記念して造られた源氏庭が広がります。
  • 「若紫」の御朱印(書置きのみ)800円

    「若紫」の御朱印(書置きのみ)800円

  • 紫式部の御朱印帳(2,200円)の裏面に和歌がのっています

    紫式部の御朱印帳(2,200円)の裏面に和歌がのっています

和歌が添えられた御朱印は、廬山寺が所蔵する住吉廣尚筆の掛け軸「若紫」を題材にしたもの。
 
「めぐりあひて 見しやそれとも わかぬ間に
雲がくれにし 夜半の月影」
 
紫式部が幼友達に詠んだ歌で、せっかく再会したというのに、あっという間に帰ってしまい、あなたはすぐに雲に隠れてしまう月のようだと、寂しい気持ちを吐露しています。この歌は今年できたばかりの紫式部の御朱印帳にも金字で刺繍されていますので、あわせてチェックしてみてください。

切り絵御朱印

切り絵御朱印

また、廬山寺ではEX会員を対象にした企画にご協力いただいています。拝観とオリジナルの切り絵御朱印がセットになったプランで、今年いっぱいの限定。これから廬山寺の拝観を計画されている方におすすめです♪
 
※プラン購入後、京都駅八条口にあるジェイアール東海ツアーズ 京都支店きっぷうりばで、拝観整理券の引き換えが必要です。

⇒廬山寺のスポット情報はこちら  

清浄華院「望月の和歌」御朱印

大殿

大殿

廬山寺を訪れたなら、北に約100メートルの位置にある清浄華院へもお参りを。今年、開宗850年を迎えた浄土宗の大本山のひとつで、平安時代からの由緒を伝えます。

「望月の和歌」御朱印(書置きのみ)500円

「望月の和歌」御朱印(書置きのみ)500円

清浄華院では、大河ドラマで重要な役どころを担う藤原道長の御朱印を授与されています。
 
「この世をば 我が世とぞ思ふ 望月の
かけたる事も 無しと思えば」
 
「望月の歌」といわれる和歌は、皆さんも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。一般的には栄華を極めた心情を詠んでいるといわれ、月を仰ぎ見る道長の顔もどこか満足気です。
  • 法成寺推定地から出土した石造物

    法成寺推定地から出土した石造物

  • 赤い部分が焼けた跡だそう

    赤い部分が焼けた跡だそう

  • 今は法成寺址碑が立つのみ

    今は法成寺址碑が立つのみ

なぜ、清浄華院で道長の御朱印を授与しているかというと、道長が建立した法成寺の礎石と目される石造物を境内に展示するにいたったご縁から。
 
「望月の歌」は寛仁2年(1018)に道長の邸宅・土御門第で詠まれたと伝わりますが、その隣に設けた寺院が法成寺でした。かの平等院のモデルといわれるほど荘厳な伽藍を有したものの、発掘調査では平安期の瓦などしか見つからず、“幻の寺院”と呼ばれることもあったそうです。しかし、2021年12月、清浄華院から南西に約300メートル離れた法成寺推定地から巨大な礎石が出土。直径60センチほどの柱が立つサイズの礎石を使うのは、法成寺以外に考えられず、大きな話題を呼びました。
 
礎石のほかに火災の焼け跡が残る石や、大日如来の石仏も出土したため、発掘現場の担当者が近くの清浄華院に供養を依頼したそうです。2022年10月、案内版を添えて展示するようになり、道長ゆかりの礎石を広く知ってもらうためにも、大河ドラマにあわせて御朱印を授与されています。

話題をもうひとつ。先ほどご紹介した廬山寺ではかねてより「紫式部邸宅址」の御朱印を授与されているのですが、清浄華院の「望月の和歌」御朱印とセットにすると、道長が紫式部を仰ぎ見る構図になるのです!
 
意図して制作したわけではく、なんと偶然の産物。お寺の方もSNSでアップされているのを見て初めて気付いたそうです。初めに思い付いた方に拍手を送りたくなりますね。「望月の和歌」御朱印は年内限りの授与ですから、期間限定のコラボレーションを実現したい方はお早めに! 
\歳時情報/
2024年7月2日(火)15時より、同志社女子大学 名誉教授 朧谷壽先生による講演会「藤原道長の栄華と紫式部」が14時からの法要「向阿忌」に引き続いて行われます。どなたでも参列、聴講可能です。詳しくはお寺の公式Instagramをご確認ください。
■清浄華院
【拝観時間】6:00~17:00 ※寺務所は9:00~17:00
【拝観料】無料
【アクセス】市バス「府立医大病院前」バス停から徒歩約5分 Google map
【公式ホームページ】https://www2.jozan.jp/

東北院「法成寺殿」御朱印

  • 本堂は明和7年(1770)に安津宮御所を移築したもの。非公開

    本堂は明和7年(1770)に安津宮御所を移築したもの。非公開

  • 本堂の前の柱に「御堂関白」という文字がみえます

    本堂の前の柱に「御堂関白」という文字がみえます

真如堂のほど近くにある時宗の東北院でも道長の「望月の歌」をあしらった御朱印を授与されています。
 
東北院は紫式部が仕えた彰子が、父・道長の菩提を弔うために創建した常行三昧堂が起こり。法成寺の東北にあったことから「東北院」と呼ばれるようになり、彰子自身も晩年を東北院で過ごしたといいます。その後、幾度もの火災を乗り越えながら、元禄6年(1693)に、彰子の子、後一条天皇の菩提樹院陵の真正面にあたる現在地に移転。道長の像や位牌を、今も大切に祀られています。
  • 「法成寺殿(藤原道長)」御朱印(書置きのみ)600円

    「法成寺殿(藤原道長)」御朱印(書置きのみ)600円

  • ハンコを重ね押しするなど、細やかな手仕事が光ります

    ハンコを重ね押しするなど、細やかな手仕事が光ります

御朱印は見開きタイプ。道長をはじめ、満月や雲などのスタンプは手作りで、一枚一枚心を込めて丁寧に仕上げられています。
 
授与いただけるのは第1・3日曜日の10時から16時。それ以外の平日は公式ホームページに掲載されている連絡先に電話して、対応可能か事前に確認をおすすめします。お参りの際は、安津宮御所を御寄附いただいたという本堂や、和泉式部ゆかりの「軒端の梅」にも注目を。
 
■東北院
【拝観時間】第1・3日曜日10:00~16:00
【拝観料】境内無料
【アクセス】市バス「錦林車庫前」バス停から徒歩約8分 Google map
【公式ホームページ】https://kyoto-toubokuin.com/

旧嵯峨御所 大本山 大覚寺「名古曽滝跡と公任」切り絵御朱印

大沢池

大沢池

平安時代に嵯峨天皇が建立した離宮を前身とする大覚寺。境内の東側には嵯峨天皇が唐の庭湖を模して造らせたという大沢池が広がります。春は桜、秋は紅葉と、現代も風光明媚な場所として知られています。

名古曽滝跡

名古曽滝跡

じつは、大河ドラマに登場する道長、行成、公任らが、長保元年(999)9月12日に大沢池を訪ねたことが行成の日記『権記』に書かれています。一行は嵐山をめぐってもみじ狩りを楽しみ、大沢池にある「名古曽滝跡(なこそのたきあと)」では、公任が和歌を披露したそう。

「名古曽滝跡と公任」切り絵御朱印 1,500円

「名古曽滝跡と公任」切り絵御朱印 1,500円

公任が詠んだ和歌をあしらった切り絵御朱印がこちら。
 
「滝の音は 絶えて久しく なりぬれど
名こそ流れて なほ聞こえけれ」
 
百人一首にも収められた名歌で、枯れてもなお人の心を捉える滝の風情を詠んでいます。今年の2月6日には、名古曽滝跡近くに、切り絵御朱印と同じように檜造りの「名古曽橋」がお目見えしました。ぜひ、新造の橋をわたって、道長、行成、公任らが見た景色に想いを馳せてくださいね。
 
※「名古曽滝跡と公任」切り絵御朱印はお堂エリアの五大堂で授与いただけます。お堂エリアと大沢池エリア、両方を参拝する場合はそれぞれで参拝料が必要です。
※掲載内容は2024年6月28日時点の情報です。最新情報は各掲載先へご確認ください。

Written by. 「そう京」編集部

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