マルチクリエイターの先駆け! 近代京都の絵師・神坂雪佳ゆかりのスポットをご紹介

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明治から昭和の初めにかけて活躍した神坂雪佳という京都出身の絵師がいます。琳派に傾倒し、「光琳の再来」とまで称されるほどになりますが、驚くべきは多種多様な工芸の分野に能力を発揮したことです。彼はまさに現代でいうところのマルチクリエイター。その活躍ぶりが分かる、ゆかりのスポットをご紹介します。
 
“芸術の秋”にあわせて、めぐってみませんか。

粟田神社 神楽殿

古くより旅行守護のご利益で知られる粟田神社。神坂雪佳は幕末の慶応2年(1866)、粟田神社の近くに生まれました。16歳で四条派の門を叩き、技を磨いたといいます。次第に工芸図案に興味をもち、ヨーロッパに渡って最新のデザインを学ぶも、海外を知ることで日本の素晴らしさを改めて認識。なかでも大胆な構図とデフォルメした美しさを有する琳派に惹かれ、影響を受けていきます。
  • 神楽殿

    神楽殿

  • 松と竹がダイナミックに描かれています

    松と竹がダイナミックに描かれています

粟田神社の神楽殿の鏡板に描かれた松は、まさに琳派らしい大らかさが特徴です。大正8年(1919)、54歳のときの作品で、生まれた町の馴染み深い神社に自身の絵を奉納できたのは喜びも大きかったのではないでしょうか。
  • 神坂雪佳が描いた四季の花

    神坂雪佳が描いた四季の花

  • 宝物殿 内観

    宝物殿 内観

神楽殿の隣にある宝物殿では、神社所蔵の神坂雪佳の作品を見られることも。展示替えで作品がないときもありますが、観覧無料ですので神楽殿とあわせてチェックしてみてくださいね。
 
【参拝時間】境内自由、授与所8:30~17:00
【参拝料】境内無料
【電話】075-551-3154
【アクセス】市バス「神宮道」バス停から徒歩約5分、地下鉄東西線「東山駅」から徒歩約7分 Google map
【公式ホームページ】http://www.awatajinja.jp/

京指物資料館(事前予約制)

内観

内観

事前予約制での見学となりますが、神坂雪佳を知るうえでぜひ訪れていただきたいのが京指物資料館です。安政3年(1856)創業の宮崎家具本店の向かいにある宮崎平安堂ビルの2階にあり、金釘を使わずに組手だけで作る伝統技法「京指物」について学べます。
  • 神坂雪佳が描いたトータルコーディネート

    神坂雪佳が描いたトータルコーディネート

  • 図案集は神坂雪佳が手掛けたものが一番多いそう

    図案集は神坂雪佳が手掛けたものが一番多いそう

神坂雪佳との関わりは、三代目の宮﨑平七さんが家具を美術品の域まで高めたいという想いから、京都画壇に図案を依頼したことに始まります。竹内栖鳳、上村松園、堂本印象といった名だたる画家にも後々に図案を依頼しますが、最初に図案を依頼したのが、当時はまだ若手に属した神坂雪佳だったそうです。
 
すると、神坂雪佳は図案どころか室内のトータルコーディネートまで提案。平七さんは時間とお金を惜しむことなく、図案通りの室内装飾を完成させたそうです。出来栄えは評判を呼び、現在の主力となる内装業に大きく舵を切るきっかけになりました。
 
ほとんどの画家は平面の図案を提案するのが一般的だったと聞くと、神坂雪佳のマルチぶりが分かりますよね。
  • 文机

    文机

  • 右下にサインがあります

    右下にサインがあります

画家と作った家具の多くは、なんと画家本人にプレゼントしてしまうケースが多く、宮崎家具にすべてが残っているわけではないそうです。今から考えると惜しいと思ってしまいますが、平七さんの人柄がうかがえます。
 
伝わっている文机は神坂雪佳のデザイン。造形はもちろん、透かし彫りや取っ手まですべてを監修しています。さらに、天板には直筆で金彩を施しています。いやはや、センスが良すぎませんか。

『野々宮斎宮蒔絵硯箱』

『野々宮斎宮蒔絵硯箱』

弟の祐吉が漆芸作家であったため、神坂雪佳は蒔絵を施した調度品も数多く手掛けています。尾形光琳が弟の乾山とタッグを組んだように、神坂雪佳もまた弟の力を借りて自身の思い描く芸術を形にしていきました。兄弟が力を合わせて作り上げた硯箱は、神坂雪佳にとっても思い入れのある品だったに違いありません。
  • 神坂雪佳が絵付けした茶碗は京焼の窯元 高橋道八作

    神坂雪佳が絵付けした茶碗は京焼の窯元 高橋道八作

  • 宮崎家具で使っている包装紙も神坂雪佳のデザイン

    宮崎家具で使っている包装紙も神坂雪佳のデザイン

展示品ではありませんが、さらに神坂雪佳のマルチぶりが分かる例として京焼の茶碗を見せていただきました。暮らしを彩る必需品として陶磁器や金工、染織の制作にも力を入れていたため、多くの工芸作家と共演しています。いったい、神坂雪佳自身はどんな素敵な暮らしをしていたのか、ますます気になるばかりです。
 
■京指物資料館
【開館時間】平日10:00~17:00
※事前予約制(日程はメールにて応相談)。詳細はこちら
【入館料】無料
【アクセス】地下鉄烏丸線「丸太町駅」から徒歩約5分 Google map
【公式ホームページ】http://www.kyoto-t-f-museum.jp/ 

三千院「盛花図御所車衝立」

大原の三千院には、拝観ルートの最後に門跡寺院の由緒を伝える寺宝が並ぶ「円融蔵展示室」があります。

⇒三千院を含む、初秋の大原の魅力をご紹介した記事はこちら♪

「盛花図御所車衝立」

「盛花図御所車衝立」

入ってすぐの常設展に展示されているのが「盛花図御所車衝立」。台座は桃山時代から江戸時代初期にかけて制作された貴重なもので、衝立部分を神坂雪佳が手掛けました。大輪の牡丹を中心に、椿や紫陽花、菊、萩、桔梗など、春から秋の花々を描いています。

左:表面、右:裏面

左:表面、右:裏面

展示室では見られないのですが、裏面は冬の植物、千両が竹籠に添えられた絵になっています。堂内に飾っていた頃の写真をお寺にお借りしたのですが、色彩豊かでダイナミックな絵は、お寺という大きな空間でも映えるように意識していると感じられます。場に応じた使い分けを想定して、裏面はつつましやかに。利用者を想った行き届いたデザインは流石です。
 
※展示替えにより展示内容は不定期で変更になる場合があります。
 
【拝観時間】9:00~17:00(11月/8:30~17:00、12月~2月/9:00~16:30)
【拝観料】700円
【電話】075-744-2531
【アクセス】京都バス「大原」バス停から徒歩約10分 Google map
【公式ホームページ】http://www.sanzenin.or.jp/

二條若狭屋「不老泉」

  • 外観

    外観

  • 内観

    内観

  • 店内には和菓子に関する展示もあります

    店内には和菓子に関する展示もあります

神坂雪佳はさまざまなジャンルの文化人と交流がありました。大正6年(1917)創業の和菓子店、二條若狭屋の初代である藤田芳次郎さんもそのひとり。芳次郎さんは幼い頃に画家を志したこともあり、菓子づくりにおいてもアイデアあふれる人だったといいます。
  • 不老泉(6個入) 2,095円

    不老泉(6個入) 2,095円

  • 掛け紙

    掛け紙

  • 箱に収められている説明書

    箱に収められている説明書

  • 葛湯(雪)、抹茶(月)、しるこ(花)の3種類

    葛湯(雪)、抹茶(月)、しるこ(花)の3種類

銘菓「不老泉」を考えたのも芳次郎さんです。可愛らしい小箱に材料が入っていて、器に出してお湯を注ぐと葛湯をいただけます。
 
神坂雪佳が携わったのは掛け紙と、箱に収められている説明書のデザイン。菓銘にあわせて不老長寿のシンボルである松をあしらっています。粟田神社の神楽殿の松とは異なり、掛け紙の松はお菓子の楽しい時間を演出するような愛らしさがあります。
  • 黒糖わらび餅 410円

    黒糖わらび餅 410円

  • 別添えのきなこをかけていただきます

    別添えのきなこをかけていただきます

もうひとつ、神坂雪佳の絵をパッケージにしている商品が黒糖わらび餅。亀に乗った可愛らしい童子が描かれた色紙がお店にあったため、せっかくなら商品にということで採用されたそうです。どちらも通年購入でき、日本画が好きな人へのプレゼントにもぴったり♪
 
■二條若狭屋
【営業時間】8:00〜17:00
【定休日】水曜日
【電話】075-231-0616
【アクセス】地下鉄東西線「二条城前駅」から徒歩約5分 Google map
【公式ホームページ】http://www.kyogashi.info/

細見美術館 ARTCUBE SHOP 

内観

内観

いま見てもオシャレな神坂雪佳のデザインは、さまざまにグッズ化されています。京都で購入するなら、琳派の作品を数多く所蔵する細見美術館のミュージアムショップ「ARTCUBE SHOP」がおすすめ。
 

一番人気は、「狗児(くじ)」をモチーフにした六兵衛窯の器。六兵衛窯は江戸時代後期に五条坂で開窯し、神坂雪佳は四代・五代 清水六兵衛と親交がありました。
 
カタツムリを見つめる可愛らしい子犬は、手元に置いておきたくなります。
  • 金魚コレクション!

    金魚コレクション!

  • 琳派ポーチ(12,100円)、扇子(8,800円)

    琳派ポーチ(12,100円)、扇子(8,800円)

  • 琳派団扇(各8,800円)、団扇立て(各2,420円)

    琳派団扇(各8,800円)、団扇立て(各2,420円)

細見美術館が所蔵する神坂雪佳筆『金魚玉図』をモチーフにしたグッズはラインアップが豊富です。山田松香木店、宮脇賣扇庵、阿以波など、京都の老舗とコラボレーションした逸品が揃います。

御朱印帳 各2,200円

御朱印帳 各2,200円

神坂雪佳の図案集『百々世草』を木版多色摺りで発行した版元の芸艸堂からは、和文具を。動物の表情がかわいらしい御朱印帳や、使い勝手の良い一筆箋があります。
 
取り扱いが多いので、「これだ!」と思える神坂雪佳グッズを探してみてくださいね。
 
 
■細見美術館 ARTCUBE SHOP 
【営業時間】10:00~17:00
【定休日】月曜日(祝日の場合は翌日)、展示替期間、年末年始
【電話】075-761-5700
【アクセス】市バス「東山二条・岡崎公園口」バス停から徒歩約3分 Google map
【公式ホームページ】https://www.artcube-kyoto.co.jp/

ZENBI—鍵善良房—KAGIZEN ART MUSEUM

最後にご紹介するのは、神坂雪佳をはじめとする琳派に影響を受けた山本太郎さんの作品展です。和菓子の老舗、鍵善良房が運営する美術館「ZENBI」で2024年11月10日(日)まで開催されています。
 
  • 芸艸堂の木版画と山本太郎さんの作品がセットで展示されています

    芸艸堂の木版画と山本太郎さんの作品がセットで展示されています

  • 『Flowers Iris』

    『Flowers Iris』

神坂雪佳が200年から300年前に活躍した本阿弥光悦や尾形光琳に影響を受けて、再び琳派のムーブメントを起こしたように、現在活躍されている山本太郎さんも琳派にインスパイアされた作品を次々に発表されています。
 
今回の作品展では、芸艸堂が所蔵する神坂雪佳、中村芳中の木版画をあわせて展示し、山本太郎さんがどの琳派の作品をオマージュしたか分かりやすい構成になっています。
 
今後も続いていくであろう琳派の進化。アートファンなら見逃せません。
  • 展覧会限定の干菓子「Iris」1,000円

    展覧会限定の干菓子「Iris」1,000円

  • 手ぬぐい 各2,200円

    手ぬぐい 各2,200円

会場の隣の棟にあるミュージアムショップzplusでは、展覧会オリジナルグッズを購入できます。鍵善良房のオリジナル干菓子「Iris」や、山本太郎さんがデザインした手ぬぐいなど、お土産にいかがでしょう。
 
【開館時間】10:00~18:00(最終入館17:30)
【入館料】1,000円(企画内容により変更の場合あり)
【定休日】月曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始、臨時休館日あり
【電話】075-561-2875
【アクセス】京阪本線「祇園四条駅」から徒歩約3分 Google map
【公式ホームページ】https://zenbi.kagizen.com/
【公式Instagram】https://www.instagram.com/zenbinokancho/
※ミュージアムショップzplusのInstagramはこちら
※掲載内容は2024年9月27日時点の情報です。最新情報は各掲載先へご確認ください。

Written by. 「そう京」編集部

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