2025年は昭和元年から数えてちょうど100年の年にあたり、ふたたび昭和の文化に注目が集まっています。流行したものは数えきれないほどありますが、「回転展望レストラン」もそのひとつといえるでしょう。
馴染みのない方には、いったい何が回転するのか分かりづらいかもしれませんが、じつはレストランフロアが回って、景色を360度堪能できる仕組みになっています。1980年代には全国に50店舗近く建てられるなど、人気を博しました。しかし、多くが老朽化に伴って閉店し、いまや都市型ホテルの回転展望フレンチレストランはリーガロイヤルホテル京都だけに。
唯一と聞くと、いっそう興味がわきませんか。今回は昭和の思い出とともに、魅力をたっぷりとレポートします♪
ホテル最上階にある「フレンチダイニング トップ オブ キョウト」
まずは概要をご紹介しましょう。リーガロイヤルホテル京都は昭和44年(1969)11月1日に「京都グランドホテル」として開業しました。回転展望レストランは創業時からあり、昨年(2024)11月で55周年に。
最上階の14階、地上約39メートルに設けられたお店の名前は「フレンチダイニング トップ オブ キョウト」。京都は景観保護の観点から2007年より建物の高さ制限を設けているため、周辺に高い建物はあまりありません。まさに“京都の頂”から眼下に広がる眺望は抜群です。しかも全席が窓際に配置され、座っているだけで古都の景色がぐるりと見渡せるなんて贅沢すぎませんか。
直径約20メートルのドーナツ状のフロアは、1周約90分かけてゆっくり動きます。最初は動いているのか分からないほどで、いつの間にか風景が変わっているような感覚です。世界遺産の東寺や西本願寺、ニデック京都タワーを望め、時折、新幹線の姿も。
各テーブルには名所の方角を示したイラストマップが置かれています。京都好きなら、景色の話題だけであっという間に時間が過ぎてしまいそうですね。
貴重な資料を参考に、昭和へタイムスリップ!
リーガロイヤルホテル京都に遺る貴重な資料から、昭和の姿を振り返ってみましょう。
お見せいただいたモノクロ写真は、昭和44年(1969)4月中旬の撮影。回転展望レストランの鉄骨の組立が終わり、この半年後にホテルはオープンを迎えます。
技術スタッフの藤井公生さんは、当時、新入社員としてこの現場に立ち会ったそうです。「堀川通を挟んで向かい側に建設事務所があり、そこから鉄骨が組み上がっていく様子を見たのを覚えています」と藤井さん。
開業当時のホテルパンフレット
昭和44年(1969)といえば、大阪万博の一年前。リーガロイヤルホテル京都が回転展望レストランを設けたのは、万博に向けて機運を盛り上げる役割もあったそうです。当時の人々にとって、話題のスポットは憧れの的だったはず。
月日とともに周辺の街並みも変化していきました。京都タワーはすでにありましたが、京都駅周辺に大きなビルは少なかったそうです。
「蒸気機関車や0系新幹線が走る姿も記憶に残っています。ホテルのそばには川が流れていて…」と藤井さん。川と聞いてビックリ! 1980年代に暗渠(あんきょ)になりましたが、リーガロイヤルホテル京都の西側には堀川が流れています。開業当時の写真をよく見ていただくと、0系新幹線の先頭車両の下に橋が架かっているのが分かるでしょうか。
変わりゆく景色のなかで、変わらずに営業を続ける回転展望レストランの存在が、いっそう素晴らしく感じられます。
レストランを支える影の立役者
床下にあるモーター
藤井さんをはじめとするスタッフとともに、長い歴史を支えてきた影の立役者といえばレストランを動かすモーターです。3基のモーターで床面を回す仕組みで、回る方向やスピードを変えることもできます。1周約90分のところ、8月16日の「五山の送り火」の夜だけは約30分に短縮しているという興味深いお話も。
年に3回の定期点検を行い、それ以外にも、日頃から働くスタッフが通常とは異なる音を耳にすれば、すぐに点検するなど、細心の注意を払っているそうです。
お客様の安全はもちろんですが、モーターを大事に扱うのは、もうひとつ理由があります。
他店の多くが設備の老朽化を理由に閉業するなか、リーガロイヤルホテル京都にとってもモーターの維持は大きな課題だったといいます。というのも、設計を担当した神戸製鋼が長らく保守点検を務めていましたが、担当者の退職などにより継続が難しい状況に陥ったそうです。それでもあきらめることなく調整を続けた結果、大阪にある会社の協力を得られ、現在に至っています。
「ホテルは2016年にリニューアルしましたが、回転展望レストランをなくすという選択肢はありませんでした。再建するとしても、京都は建物の高さ制限があるため、地上約39メートルの回転展望レストランは二度とできません。モーターとともに回転展望レストランを受け継いでいくのが使命です」とマネジャーの吉永忍さん。ホテルの皆さんの思い入れの深さが伺えますね。
おすすめしたい! こだわりの朝食
眺望だけが目立ってしまいがちですが、レストランの味も確かです。特におすすめしたいのが、昨年(2024)4月1日よりリニューアルした朝食。
“京都を五感で感じる”がコンセプトで、京都府産の食材をがふんだんに使われているのが特徴です。南丹市日吉町「日吉ファーム」で育てられた「京都ぽーく」のソーセージ、ベーコン、ボンレスハムに、とろっと半熟の京都府産平飼卵。亀岡市小島農園のリーフサラダに、聖護院かぶなど、京野菜もいただけます。
メニューを発案したのはシェフの寺田篤史さん。「せっかく京都にお越しいただいたなら、京都の食材で提供したい」との想いから、ご自身で産地に出向いて食材を選ぶという力の入れよう。
水尾の柚子を使ったドリンクはその最たる例です。果汁を絞ったあとに廃棄されてしまう実に注目し、外果皮と内果皮から不純物を取り除いてペースト状にして、なんとドリンクを作る会社までご自身で選定したそうです。本来廃棄される予定だった実がホテルでしか味わえないドリンクに生まれ変わり、しかもスッキリ美味しいなんて、非のうちどころがありません。
他の食材にもそれぞれストーリーがあり、食べる楽しみが増します。最近は宿泊の際にホテルの朝食は付けないという方も多いそうですが、リーガロイヤルホテル京都最上階にある「フレンチダイニング トップ オブ キョウト」の朝食と眺望は、きっと旅の良い思い出になるはずです。
※ご利用当日にお席の空きがあれば、宿泊者以外でも朝食をいただけます(予約はできません)。
ランチ、ディナーにも寺田シェフのこだわりはたっぷりと。テーブルに置かれているメニューの裏側には「シェフ寺田のメニュー説明」も掲載されています。
また、春や秋には華やかな装飾が施され、季節ごとに訪れる楽しみがあります。
前菜「お菓子見立てのオードブルバリエーション」2名様分 イメージ
2025年2月1日(土)から14日(金)はバレンタインデー限定のコースが登場(ランチ2名15,000円、ディナー2名30,000円)。前菜はプレゼントに見立てたBOXに、寺田シェフのアイデアが詰まった料理が並びます。京都府産にこだわった食材を中心にコースが構成され、バレンタインらしくチョコレートを使ったデザートもあり、可愛らしさ満点です。
古都の街並みを見ながら旅の予定を立てたり、訪ねた名所の思い出話をしたり、「フレンチダイニング トップ オブ キョウト」のお食事は会話も自然とはずみます。昭和からアップデートしつづける回転展望レストランを、ぜひ体感してみてくださいね。
■リーガロイヤルホテル京都14階「フレンチダイニング トップ オブ キョウト」
【営業時間】
朝食7:30~10:00(ラストオーダー 9:30)
ランチ12:00 ~15:30(ラストオーダー 14:00)
ディナー17:00~21:30(ラストオーダー 20:00)
【料金】
朝食 3,542円
ランチ 6,325円~
ディナー 13,156円~
※2025年3月に価格改定があります。詳しくは公式ホームページよりご確認ください
【定休日】不定休
【電話】075-361-9221
【アクセス】「京都駅」から徒歩約7分 Google map
【公式ホームページ】https://www.rihga.co.jp/kyoto
※掲載内容は2025年1月29日時点の情報です。最新情報は掲載先へご確認ください。