泉涌寺『大涅槃図』
お釈迦様を偲ぶ冬の仏教行事といえば涅槃会(ねはんえ)です。お釈迦様の命日である旧暦2月15日、もしくは現在の暦にあわせた3月15日前後に行われ、多くのお寺では涅槃図が掲げられます。
その昔、涅槃図は文字を読めない人々への説法に重宝され、お寺は一流の絵師に頼んだり、サイズを大きくしたりと、さまざまに趣向を凝らしました。数あるなかから、伝承や題材に特徴のある涅槃図をピックアップしてご紹介しますので、ぜひ参考にしながらお参りください♪
涅槃図鑑賞のポイントとは?
涅槃図にはおおよそ定型の描き方があり、ポイントが分かると見比べる楽しみが生まれます。6つのポイントに注目しながら、鑑賞しましょう。(※異なる描き方や解釈もあります)
1.満月
お釈迦様が亡くなった日は満月でした。場面上空には満月が描かれています。
2.お釈迦様の向き
宝台の上に横たわり、頭を北にして、お顔は西を向いています。
3.沙羅双樹
8本の沙羅双樹が描かれ、青々とした4本と、枯れ果てた4本で構成されます。沙羅双樹は常緑樹ですが、深い悲しみで枯れてしまったともいわれます。
4.天上から現れるお母さま
雲に乗る人が描かれている場合、その方はお釈迦様を生んで7日目に亡くなってしまったという摩耶夫人です。
5.沙羅双樹の枝に掛けられた袋
一説には、摩耶夫人がお釈迦様を救うために投げた薬袋が枝に引っかかってしまったともいわれます。
6.嘆き悲しむ人々や動物
種の垣根を越えて、皆がお釈迦様の死を嘆き悲しんでいます。どんな動物が描かれているか、見比べる楽しみも。
1.満月
お釈迦様が亡くなった日は満月でした。場面上空には満月が描かれています。
2.お釈迦様の向き
宝台の上に横たわり、頭を北にして、お顔は西を向いています。
3.沙羅双樹
8本の沙羅双樹が描かれ、青々とした4本と、枯れ果てた4本で構成されます。沙羅双樹は常緑樹ですが、深い悲しみで枯れてしまったともいわれます。
4.天上から現れるお母さま
雲に乗る人が描かれている場合、その方はお釈迦様を生んで7日目に亡くなってしまったという摩耶夫人です。
5.沙羅双樹の枝に掛けられた袋
一説には、摩耶夫人がお釈迦様を救うために投げた薬袋が枝に引っかかってしまったともいわれます。
6.嘆き悲しむ人々や動物
種の垣根を越えて、皆がお釈迦様の死を嘆き悲しんでいます。どんな動物が描かれているか、見比べる楽しみも。
修理費用を出したのは…?!
高台寺『八相仏涅槃図』
『八相仏涅槃図』
北政所ねねが豊臣秀吉の菩提を弔うために創建した高台寺には、お寺の歴史よりも古い南北朝時代の『八相仏涅槃図』が伝わっています。
中央に入滅の様子を、周りに8つの場面に分けてお釈迦様の生涯を描いた、縦約182センチ、幅約238センチの作品です。
なんと、慶長6年(1601)に北政所ねねが寄進して修理を行ったという記録が残っているそう。
利生堂 内観
境内にある利生堂では、壁一面に描かれた『八相仏涅槃図』の複製画を鑑賞できます。大きく拡大されているため、衣の文様など細やかな部分まで楽しめます。
『八相仏涅槃図』は2月いっぱい方丈に飾られていますが、それ以外の期間は利生堂のダイナミックな壁画でご覧ください。
■仏涅槃図 特別公開
【日程】2025年2月1日(土)~28日(金)
9:00~17:30(受付終了17:00)
【場所】高台寺 詳細情報はこちら
【拝観料】600円 ※利生堂の拝観料はございません。
【問合せ】075-561-9966
【アクセス】市バス「東山安井」バス停から徒歩約7分 Google map
【公式ホームページ】https://www.kodaiji.com/
『大涅槃図』
京都御所の東に位置する清浄華院。今年(2025)は2月2日(日)に涅槃会が行われたあと、大殿に『大涅槃図』が15日(土)まで掛けられています。
正徳3年(1713)に海北友賢によって描かれた作品で、面白いのは画面右下に海の動物が描かれているところ。タコ、イカ、エビにクジラまで、遠路はるばるお釈迦様を偲びにきた様子です。波打ち際にいる赤い肌をした仁王様は、海からの来訪者に驚いて足を上げているようにも見えます。絵師の遊び心が伺えますね。
■大涅槃図 特別公開
【日程】2025年2月2日(日)~15日(土)
6:00~17:00
【場所】清浄華院
【拝観料】ご志納
【問合せ】075-231-2550
【アクセス】市バス「府立医大病院前」バス停から徒歩約5分 Google map
【公式ホームページ】https://www2.jozan.jp/
【公式Instagram】https://www.instagram.com/jozan_860/
『大涅槃図』
女性を救う「うなずきの弥陀」をご本尊に祀る真如堂には、三井家の女性たちが寄進した寺宝が数多く伝わります。宝永6年(1706)に描かれた縦約6メートル、幅約4メートルの『大涅槃図』もそのひとつ。
登場人物と動物の多さで知られ、その数なんと127種類で日本最多と伝わります。画面下では、動物たちが花を手向ける可愛らしい様子もみられますので探してみてください。
花供曽
真如堂で花とくれば、忘れてはならないのが「花供曽(はなくそ)」。言葉の響きにビックリしますが、お正月に供えられた餅を焼いて黒砂糖で味付けしたお菓子です。食べれば無病息災というありがたい縁起物で、『大涅槃図』公開中にだけ授与されます。
■大涅槃図 特別公開
【日程】2025年3月1日(土)~3月31日(月)
9:00~16:00(受付終了15:45)
【場所】真如堂 詳細情報はこちら
【拝観料】1,000円(拝観料、花供曽あられ代込)
【問合せ】075-771-0915
【アクセス】市バス「真如堂前」・「錦林車庫前」バス停から徒歩約8分 Google map
【公式ホームページ】https://shin-nyo-do.jp/
糸が紡ぎだす、輝く仏様
天龍寺『刺繍八相大涅槃図』
世界遺産 天龍寺が所蔵する涅槃図は、なんと刺繍で作られています。涅槃の様子とお釈迦様の生涯を、21色の絹糸で表現。さらに、仏様の螺髪部分には寄進者の毛髪が編み込まれているそうです。
絹糸のきらめきが美しい
縦横約3メートルの大きさで、刺繍の涅槃図としては国内最大級。絹糸による立体感や美しい輝きは必見です。
■「刺繍八相大涅槃図」特別公開
【日程】2025年3月1日(土) ~23日(日)
9:00~16:30(受付終了16:20)
【場所】天龍寺 法堂内に展示 詳細情報はこちら
【参拝料】法堂500円(庭園・諸堂参拝料は別途必要)
【電話】075-881-1235
【アクセス】JR山陰本線(嵯峨野線)「嵯峨嵐山駅」から徒歩約13分、嵐電嵐山本線「嵐山駅」からすぐ Google map
【公式ホームページ】https://www.tenryuji.com/
お堂に収まりきらないほどの大きさ!
泉涌寺『大涅槃図』
『大涅槃図』
数ある涅槃図のなかで日本最大を誇るのが泉涌寺の『大涅槃図』です。享保2年(1717)に描かれた縦約16メートル、幅約8メートルの大作で、約150キロ。若手僧侶をはじめとする関係者の皆さんがロープと滑車を用いて人力で吊るすそうです。
天井から床まで使ってコの字型に折り畳むことで、ようやく収まります。お堂と不釣り合いの大きさに感じられますが、見上げると満月が浮かぶように計算しているのではないかと考えられているそうです。目の前いっぱいに広がる仏の世界に、昔の人々も驚嘆したに違いありません。
■「大涅槃図」特別公開
【日程】2025年3月11日(火) ~16日(日)
9:00~17:00(受付終了16:30)
【場所】泉涌寺 仏殿 詳細情報はこちら
【参拝料】500円
【電話】075-881-1235
【アクセス】市バス「泉涌寺道」バス停から徒歩約12分 Google map
【公式ホームページ】https://mitera.org/
猫が登場する最古の例
東福寺『大涅槃図』
『大涅槃図』
涅槃図にはたくさんの動物が描かれていますが、よく話題になるのは猫がいるかどうかです。じつは猫が登場するのはレアケース。というのも、沙羅双樹に引っ掛かってしまった薬袋を、ネズミがなんとかお釈迦様に届けようとしたところ、猫が邪魔してしまったため嫌われ者になってしまったというのです。
象の足元に、ちょこんと座る姿が可愛らしい!
しかし、いつの世にも猫好きはいるもの。東福寺の画僧明兆が縦約12メートル、幅約6.5メートルの大作『大涅槃図』を描いていた折に、どこからともなく猫が現れ、絵の具を運んでくれたそう。感謝した明兆は猫を描き加えたのだとか。
応永15年(1408)に完成し、画聖と称された明兆の作品は、数々のお手本になったのです。
■「大涅槃図」御開帳
【日程】2025年3月14日(金) ~16日(日)
9:00~16:00(受付終了15:30)※16日は~15:30(受付終了15:00)
【場所】東福寺 本堂 詳細情報はこちら
【拝観料】無料
【電話】075-561-0087
【アクセス】JR奈良線「東福寺駅」から徒歩約10分 Google map
【公式ホームページ】https://tofukuji.jp/
有名絵師の作品を実物鑑賞
本法寺『佛涅槃図』
泉涌寺、東福寺とともに“京都三大涅槃図”に数えられる本法寺の『佛涅槃図』。描いたのは、かの長谷川等伯です。早くに亡くした長男の久蔵を弔うために、慶長4年(1599)にお寺に寄進したと伝わります。
縦約10メートル、幅約6メートルの大作で、国の重要文化財に指定されています。普段は複製が展示されているのですが、「春の寺宝展」に限り、実物の鑑賞が可能です。
お釈迦様が横たわる宝台の左上隅にいる、緑色の衣をまとった人物は等伯自身ともいわれます。息子を悼む気持ちが伝わってくるようです。ぜひ、細部までじっくりご覧になってくださいね。
■春の特別寺宝展 涅槃図公開
【日程】2025年3月14日(金)~4月15日(火)
10:00~16:00(拝観終了)
【場所】本法寺 詳細情報はこちら
【拝観料】1,000円
【電話】075-441-7997
【アクセス】市バス「堀川寺ノ内」バス停から徒歩約3分 Google map
※掲載内容は2025年2月5日時点の情報です。最新情報は各掲載先へご確認ください。