苔のはなし。 ~京都の苔屋さん~

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「苔World・京都」への誘い 2


梅雨に入り、シトシトと降る雨が木々や草花を潤す頃となりました。

先日から苔に関するブログをいくつかお届けしておりましたが(「祇王寺で“苔”について聞きました」「お気に入り”苔スポット”10選」)、改めて考えてみると「苔ってどんな植物なのかなぁ」と不思議に思えてきました。

そこで今回は、「京都の苔屋さん」で、苔についてのお話を伺いました! 種類や見頃の時季など「苔の基本」をチェックして、京都の苔めぐりをさらに楽しんでみてくださいね♪



「京都の苔屋さん」って?


京都市内から神護寺高山寺のある三尾エリア、そしてその先にある京北町を結ぶ、「周山(しゅうざん)街道」龍安寺仁和寺など世界遺産の寺院が点在する、「きぬかけの路」。このふたつの道が交わる交差点を、「福王子(ふくおうじ)」といいます。「京都の苔屋さん」があるのは、この福王子交差点のすぐそば。12月の大根焚きで有名な了徳寺の門前にあります。

「京都の苔屋さん」というのは愛称で、「竹村造園資材」が正式名称です。“造園資材”ということで、造園屋さんにお庭作りの素材となる“資材”を卸していて、その資材の主なものが“苔”なのです。


ずらっと並んだ苔のトレー


竹村さん 「苔を扱いはじめて、もう40年になります。造園屋さんも自分たちで苔を育成するわけではなく、分業制なんですよ。京北町に“苔畑”があって、そこで苔の育成をしています」

苔畑! 残念ながら現在は「育成中」のため畑は見られなかったのですが、扱われている苔を見せていただくことに。主に5種類の苔を育成されているということで、それぞれの特徴を聞いてみました♪



苔の種類
【スギゴケ】



竹村さん 「日本庭園でよく見かけるのが、この“スギゴケ”ですね。直立する背の高い苔で、日光にも強くて人気があります」

ツンツンした形状が特徴的なスギゴケ。たしかに、お庭でよく見かけます(先日の「祇王寺」ブログにも登場していました)。細かく分ければオオスギゴケとウマスギゴケの2種類があるそうなのですが、スギゴケとして総称されています。



【スナゴケ】



竹村さん 「同じツンツンした苔でも、こちらは”スナゴケ”。スギゴケよりも背が低く、日光にとても強くて、乾燥にも強い。屋上緑化用の苔としても使われ、いま非常に注目されています」

日光にも乾燥にも強い。そんな苔もあるんですね! 「(用途の)可能性が広いんです」とのことで、確かに「スナゴケ 緑化」をネットで検索してみると、いろいろな事例があがってきます。お庭の日当たりがよくて「苔庭は無理かも・・・」という方にも、嬉しい苔かもしれませんよ!?



【ホソバシラガゴケ(ホソバオキナゴケ)】



竹村さん 「これも、日本庭園や盆栽で使われている苔。日なたで乾燥すると白っぽく見えるので“シラガゴケ”と呼ばれています。半日陰で湿気の多い場所では、きれいな緑色になりますよ」

う~んと思い返せば、三千院銀閣寺など、いろいろなお寺で見たことがあるような気がします。ヴィロードのようにお庭を覆うこのシラガゴケは、まさに“みどりの絨毯”のようですね!



【シノブゴケ・ハイゴケ】


シノブゴケ


竹村さん 「苔玉によく使われるのが、”シノブゴケ””ハイゴケ”。シノブゴケの方が、ハイゴケよりも葉先が細かく繊細。ハイゴケは比較的丈夫です。どちらもネット(編み目)状に生えていくので、土玉につきやすいんです」

苔玉に適した種類があるんですね! そういえば、苔玉の苔の種類って考えたことがありませんでした・・・


苔玉は購入も可能です


いろいろな種類の苔玉も作られているという、竹村さん。バラなどのお花を植えているのもかわいらしいですね♪ この苔玉、植えている植物は枯れたりもしますが、苔自体はとっても長持ちするのだとか。手入れのコツは「水をあげすぎないこと」。もし苔が乾燥してしまっても、また水をかけ、できれば戸外に出して夜露にあてると生き返るそう。私も、以前に世話を焼きすぎて苔玉をダメにしたことがありました。苔とのつきあいは、ほどよい距離感が大事なようです・・・


日本の苔は、1,000種類以上あるといわれています。京都のお庭で見られる苔も様々な種類があり、そのなかには“自生している苔”もあれば、“植えている苔”もあります。「ヒノキゴケ」など自然のなかでしか育たない苔も多く、流通に耐えられる苔は限られています。

そのなかでも「スギゴケ」がお庭での需要も多く、竹村さんのお父様は、人工で苔の育成をすることに取り組まれました。竹村さんもいま、その苔畑を守り、育てているのです。



苔の見頃って、いつなのでしょうか?


初夏の苔のイメージ(神護寺)


ところで、梅雨時になると「苔の美しい季節!」ということばをよく見かけるようになります。緑色が鮮やかになって確かに美しいのですが、そもそも“苔の見頃”ってあるのでしょうか?

竹村さん 「春と秋に新芽が出て、きれいなんですよ」

春と秋!? 意外なおことばにびっくり! てっきり、梅雨時が見頃なのかと思っていました。

竹村さん 「苔は、春に成長し、夏の暑さが和らぐ初秋から秋にかけてもう一度成長期を迎えます。もちろん、これからの季節も緑が濃くなってきれいですが、春と秋の2回の成長期もきれいですね。特に、青葉・紅葉と限らず、“もみじ”との組み合わせはいいものですよ」

なるほど・・・ 苔にもライフサイクルがあり、そのなかで少しずつ変化をしているんですね。それにしても、1年に2回見頃を迎えるということに驚きです! 初秋から秋にかけての苔も注目してみたいですね♪


お話をお伺いした竹村さん


日常生活にも取り入れやすい苔


最近では“苔玉”や“苔テラリウム”などが流行っていて、日常生活にも取り入れやすくなってきました。竹村さんの奥様も、「お庭にちょっと敷くだけでも雰囲気が変わりますよ」と玄関横の植え込みを見せてくださいました。



ふかふかの苔! 植え込みに敷くだけであれば、実践しやすそうです。ちなみに、こちらはスナゴケ。苔を敷くことで乾燥も防げ、見た目の印象も変わる、一石二鳥の効果があります♪



寄せ植えも苔があると、印象が変わりますね。和風だけでなく、洋風の素材にも合うのが苔のいいところ。まだまだいろいろな可能性を秘めているようです。

竹村さん 「苔は脇役じゃないですよ。目立たない存在ではないし、おもしろいものなんです」

深く知れば知るほど、お庭めぐりの楽しみも増えてきそうな「苔」。初夏、そして夏場を越えて初秋・秋へと、苔の見頃は続きます。ぜひ皆さまも、目線をいつもより少し下に向け、苔に注目しながら京都のお庭めぐりを楽しんでみてくださいね♪


■京都の苔屋さん(竹村造園資材)
【営業時間】ご来店の際は、事前に電話にてご連絡ください。
【電話】075-461-0697(平日9:00~18:00)
【アクセス】市バス・JRバス「福王子」バス停から徒歩約5分 Google map
【公式ホームページ】http://kokeya3.com/

 


 

Written by. みさご

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