毎年8月16日に行われ、祇園祭とともに京都の夏を代表する伝統行事として知られる「京都五山送り火」(以下、「送り火」)。 お盆に迎えたご先祖様の霊を、再び冥界に送る“精霊送り”の意味を持ち、京都市内を囲む5つの山に火が灯ります。今年(2025年)は土曜日に執り行われるとあって、例年以上に注目を集めそうですが、「どこから眺めるのがいいのかな・・・」と悩まれている方も多いことでしょう。各送り火のおすすめ鑑賞スポットを写真とともにお届けします♪
※ご紹介する鑑賞スポットは、“各送り火の見やすい場所”をピックアップしています。たくさんの方が訪れるのに加え、鑑賞スペースが限られている場所もあるので、ご覧になりたい方は時間に余裕をもって足を運んでくださいね。また突然の夕立も多い時季なので、折り畳み傘などを携帯しておくと安心です。
そもそも「送り火」とは?
「大文字」の火床
全国的にも有名な「五山送り火」。東山の「大文字」を皮切りに、「妙・法(ふたつでひとつ)」「船形(ふながた)」「左大文字」「鳥居形」の順に浮かび上がり、それぞれが約30分の間、灯り続けます。起源に関しては諸説ありますが、一般的には仏教行事と考えられ、「松明の火を空に向かって投げ、虚空を行く霊を見送る」という風習に由来するそうです。室町時代以降、山に点火されるようになり、現在見られるような「送り火」となった・・・ という説もあります。昭和58年(1983)には、京都市登録無形民俗文化財に指定されました。
⇒京都観光Naviでも詳しくご紹介されています。
⇒京都観光Naviでも詳しくご紹介されています。
知ってなるほど! 送り火の豆知識
続いて、送り火鑑賞前に知っておきたい、送り火の豆知識をご紹介します。
・護摩木ってなに?
送り火の点火資材となる護摩木。送り火当日までに、各山の麓に設けられた受付に行くと奉納(有料)することができます。護摩木に自身の名前と病名を書き、火床の割木に載せて焚くことで、病が治るという言い伝えも。なくなり次第終了の場合もありますので、ご注意ください。
・井桁(いげた)の炎は、高さ数メートルにも!
送り火の火床に設けられる井桁は赤松(松割り)を使って組み上げられ、点火後の炎は数メートルにも及ぶそう! 病気治癒の願いが書かれた護摩木は点火後に入れられます。
・大文字の“大”を飲む?
水やお酒の入った丸いお盆や杯に、送り火の「大文字」を映して飲むと、無病息災に暮らせると伝わります。また、“茄子に穴をあけて大文字を見ると目を患わない”という変わりネタも。
・送り火の「その後」は?
送り火を終え、火床に残った炭のことを「から消し(消し炭)」といいます。奉書紙に巻いて水引をかけ家に吊しておくと、魔除け、厄除け、盗難除けのお守りになるとされ、銀閣寺界隈の旧家などで見かけます。また、から消しを煎じて飲むと腹痛がおさまり、病気封じになるという言い伝えもあるそう。送り火の翌日に、から消しを拾いに登山してみるのもよさそうです。
「送り火」の主な鑑賞スポットは?
それでは、各送り火ごとのおすすめの鑑賞スポットを、写真とともにご紹介しましょう!
※気象条件によって、点火時間が変更される場合があります。
※鑑賞スポットによっては、暗い場所や足元の悪い場所もあるので十分にご注意ください。
大文字(20:00点火)
清和院御門付近
まず最初に点火され、全国的に最も知られているのが「大文字」。銀閣寺や法然院の東側にそびえる東山如意ヶ嶽(大文字山、Google map)に灯されます。市内様々な場所から眺められますが、アクセス面も踏まえておすすめなのは京都御苑。清和院御門(Google map)付近からは真正面に「大」の字がくっきりと! 蛤御門(Google map)から京都御所の建礼門(Google map)付近も広々としていて、比較的ゆったりと見ることができるため、人気の鑑賞スポットとしても知られています。
続いては京都御苑から歩いて15分ほど、賀茂川(鴨川)の中でも特に大人気スポットである出町柳へ。
賀茂川と高野川が合流する出町柳の賀茂大橋(Google map)~出町橋あたり(Google map)から眺めてみました。広い範囲で「大」が眺められるのは、川沿いならでは。送り火当日はこのあたり一帯は、歩行者用道路(19~21時)となるほど人気で、例年大勢の見物客で賑わいます。
また出町橋の東側、高野川にかかる河合橋(Google map)から北側を眺めると「法」もはっきりと確認できたので、うまく巡れば複数の送り火鑑賞を楽しめるかもしれません。
また出町橋の東側、高野川にかかる河合橋(Google map)から北側を眺めると「法」もはっきりと確認できたので、うまく巡れば複数の送り火鑑賞を楽しめるかもしれません。
「やっぱり一番有名な“大文字”をゆったりと楽しみたいな…」という方は、出町柳から北大路橋までの賀茂川右岸、とりわけ出雲路橋(Google map)周辺がおすすめ。地下鉄烏丸線「鞍馬口駅」(Google map)から、鞍馬口通を東にまっすぐ10分ほど歩けばたどり着くので、京都駅や市街地からのアクセスも容易です。
この界隈は、京都市の眺望景観創生条例に基づき、送り火を見るにふさわしい景観が保全されているのだそう。確かに高層建築など、眺望を妨げるものが少ないように感じます。河川敷も広く、例年、出町柳ほどの混雑はないそうです。
「大文字をもう少し近くで眺めてみたい!」という方向けに、次は吉田山(Google map)をご紹介しましょう。
大文字山のちょうど真西に位置する吉田山は人気の鑑賞スポット。ややスペースが限られますが、展望台(Google map)や広場、竹中稲荷神社(Google map)の参道付近から東側を眺めれば「大」の字がはっきりと見えます。険しいというほどではありませんが、訪れる際は歩きやすい靴がおすすめです。虫も多いので苦手な方は覚悟の上、お越しください。
白川通今出川交差点のやや西側
吉田山の近く、銀閣寺や哲学の道への入口ともいえる、白川通と今出川通の交差点付近(Google map)でも、もちろんのこと「大」はよく見えます。ただし近づきすぎると、大の字の「払い」の部分が短くなるなど、木々や建物などの影響で文字の見栄えが崩れていきますので、交差点よりも西側がおすすめです。
妙・法(20:05点火)
「大文字」の次に点火されるのが「妙」と「法」。“ふたつでひとつ”とされていますが、徳治2年(1307)に「妙」が先に登場し、それから約350年後に「法」ができたそう。「妙・法」は点火と同様、消火も同時に行われます。
「妙」は松ヶ崎西山(万灯籠山、Google map)、「法」は松ヶ崎東山(大黒天山、Google map)に点火されます。よく見える場所を探して、地下鉄「松ヶ崎駅」(Google map)から北山通を西へ。宝ヶ池通(Google map)との交差点付近に出ると、大きな「妙」が! 比較的低い山に点火されるので、この界隈の開けた場所であれば、煌々と燃え上がる迫力のある送り火鑑賞が楽しめます。続いて、「法」はというと・・・
「妙」は松ヶ崎西山(万灯籠山、Google map)、「法」は松ヶ崎東山(大黒天山、Google map)に点火されます。よく見える場所を探して、地下鉄「松ヶ崎駅」(Google map)から北山通を西へ。宝ヶ池通(Google map)との交差点付近に出ると、大きな「妙」が! 比較的低い山に点火されるので、この界隈の開けた場所であれば、煌々と燃え上がる迫力のある送り火鑑賞が楽しめます。続いて、「法」はというと・・・
地下鉄「松ヶ崎駅」を今度は東へ進み、市バス「松ヶ崎大黒天」バス停(Google map)を越えたあたりで「法」の字が確認できました。こちらも大迫力のサイズ感!
また、さらに東に進んで、高野川に架かる松ヶ崎橋(Google map)から下流方向に進んだところにある馬橋(Google map)周辺も「法」の鑑賞スポットとして知られます。当日、この辺りが歩行者専用道路(19~21時)となることからも、人気の場所であることがうかがえます。
また、さらに東に進んで、高野川に架かる松ヶ崎橋(Google map)から下流方向に進んだところにある馬橋(Google map)周辺も「法」の鑑賞スポットとして知られます。当日、この辺りが歩行者専用道路(19~21時)となることからも、人気の場所であることがうかがえます。
船形(20:10点火)
「船形」は、西賀茂にある船山(Google map)にて、山の麓にある西方寺の鐘の合図とともに点火されます。上賀茂橋(Google map)から眺めてみると、くっきりと船形を確認することができました♪ 人出が多いようなら、賀茂川左岸の河川敷歩道に降りて鑑賞するのもおすすめです。
そして嬉しいことに、上賀茂橋の上から南東方向を振り返ると・・・ 遮るものなく「大文字」の火床が! まずは遠くに大文字を眺め、そして少し時間をおいて船形を鑑賞するという、“掛け持ち”も十分に可能のようです。
そして嬉しいことに、上賀茂橋の上から南東方向を振り返ると・・・ 遮るものなく「大文字」の火床が! まずは遠くに大文字を眺め、そして少し時間をおいて船形を鑑賞するという、“掛け持ち”も十分に可能のようです。
左大文字(20:15点火)
東山の「大文字」の点火から約15分後に点火される「左大文字」の火床は、京都市西部・大北山の大文字山(Google map)に位置します。鑑賞スポットとしては、金閣寺付近が最もポピュラーといえそうですが、界隈は住宅やビル、街路樹なども多いエリア。より綺麗な「大」を眺めるのであれば、非常に限られてしまいますが、金閣寺前(Google map)や西大路通と北大路通が交わる辺り(Google map)などがおすすめです。この辺りは交通規制などもない上に、歩道も広くはありませんので、鑑賞の際は十分にご注意ください。
鳥居形(20:20)
広沢池
最後に点火されるのが最も西に位置する「鳥居形」。標高約100メートルの曼荼羅山(Google map)にて火が焚かれます。鑑賞スポットとして知られるのは、大覚寺から歩いて20分ほどの東に位置する広沢池(Google map)。当日は灯籠流しが行われることでも知られ、なんとも幻想的な光景が広がります。
2本の柱の根元部分が、少し木々に遮られるようですが、渡月橋(Google map)周辺からも「鳥居形」を確認できます。実は渡月橋は、遠くに「大文字」が眺められることもあり人気の鑑賞スポットの1つで、当日は交通規制(19~21時)もかけられるほど。嵐山エリアでの観光を楽しんだ後に送り火鑑賞を… という1日も良いかもしれません。
今年は大文字山に登ってみませんか?
「大文字」の火床
記事の前半部分でもお伝えしましたが、送り火を終え、火床に残った炭を「から消し(消し炭)」と言います。このから消しを求めて、大勢の方が大文字山に登山されていることをご存じでしょうか。
今年の送り火が執り行われるのは土曜日。そしてその翌日は言うまでもなく日曜日となります。“絶好のカレンダー”である今年、大文字山に登ってみるのも良さそうです。
大文字山の火床までは、銀閣寺の北側から登山道が整備されています。とはいえ、少なからず歩きづらい箇所もある上に、夏場であるために十分な暑さ対策や水分補給は必須。また、必ず歩きやすい靴で挑みましょう。順調に歩けば約1時間で、火床に到着可能です!
ただし… から消し拾いは“大争奪戦”であるそう。さらに今年は日程が良いだけに「ささやかなものでも拾えればラッキー」といったぐらいがちょうどかもしれません。しかし、火床の前に広がる壮大な風景を眺められただけでも、十分なご褒美といえるでしょう♪
※大文字山は、送り火当日(8月16日)は入山できません。その他の山は通年入山禁止です。
大文字登山弁当 900円
さて、大文字山登山にぴったりのお弁当が、銀閣寺の近くにあるうどん屋・おめん 銀閣寺本店で販売されています。その名も「大文字登山弁当」(2日前までに要電話予約 ※定休日を除く)。2021年より販売がスタートし、令和5年(2023)に内容がリニューアルされました! おむすび2個に京都産卵の玉子焼き、塩麹漬け地鶏の唐揚げ、きんぴらごぼうと内容はシンプルではありますが、「登頂後においしい」を目指したお弁当なのだそう。売り上げの一部は、山の保全活動のため大文字保存会に寄附されます。未来の送り火に思いを馳せながら、ぜひ味わってみてください♪
※掲載内容は2025年8月4日時点の情報です。