昨年(2024)、期間限定で特別公開され、人気の「ブルーボトルコーヒー」が境内に出店し、お庭を眺めながら一服ができるということでも話題となった西来院(せいらいいん)。2028年に、開山である蘭渓道隆(らんけいどうりゅう)の750年遠忌を迎えるにあたって「令和の大改修」が行われています。そして今年(2025)に入り、お庭の様相に変化があったのです。その一部始終をご覧ください!
\2024年の特別公開時の模様はこちら/
※現在、ブルーボトルコーヒーは出店していません
新年早々、大幅な改修工事がスタート
1月上旬のある日、「峨眉乗雲(がびじょううん)」と名付けられた本堂前庭の改修工事がスタート。これまでもモミジや苔の美しいお庭でしたが、今回、改めて大きな整備を行うこととなりました。
呆気に取られたのが、空から次々と運ばれてくるドウダンツツジ。成人男性の身長を優に超える大株が、境内の外に待機する大型クレーンに吊るされ搬入されてきました。最も大きいもので、なんと400キロを超えるそう!
祇園に“森”を作りたい
住職の雲林院さん
長い間、手つかずとなっていたお庭の整備に着手されたのが、2年前の6月に住職となった雲林院さん。同じく建仁寺の塔頭寺院で、近年では“甘茶のお寺”として人気の霊源院住職も兼務されています。「街中である祇園に、森を作りたかった」という思いから、整備に踏み切られたそう。
雲林院さん 「今回の改修でお庭は“一旦の完成”となりますが、この後もまだまだ植栽をしていきます。禅の教えでは『停滞は退化』。西来院は進化するお寺にしたいと思っています。『祇園の森、西来院』、良い響きでしょう?」
少しずつ作業が進むお庭を前に、期待に胸を膨らませているような表情が印象的でした。
現場を指揮する1人の男性
この日は、6株のドウダンツツジに加え、2本のしだれ桜などが植樹されましたが、植物を据える向きなど、事細やかに職人さんたちに指示を出す方の姿が。
“プラントハンター”として著名な西畠清順さん
作業を見守る雲林院さんと西畠さん
指揮にあたっていたのは、大阪府に本社農場を構える「そら植物園」の代表 西畠清順さん。国内だけでなく世界中に足を運び、珍しい植物を収集する“プラントハンター”として知られ、メディア出演や著書の出版も多数。国内外の政府機関や王族、そして企業からの依頼やプロジェクトに応じて植物を届けています。
雲林院さんとの出会いは2年前の7月のこと。お寺の開基である蘭渓道隆に因んだ「蘭」や、とても貴重な「枝垂れもみじ」を始め、境内を彩る植物が西畠さんを通じて西来院にやってくることになりました。
昨年末に「そら植物園」へ
昨年の12月下旬、雲林院さんは西畠さんが経営する「そら植物園」へ。この日、お庭に植樹する木々を見に行かれたのですが… 「今を逃すまい」と言わんばかりに、ドウダンツツジやしだれ桜を、その場で次々とお買い上げに(驚) そして、1月上旬の植樹の日程までもトントン拍子で決まってしまいました。この日からわずか20日ほどで、お庭の大改修が決行されることになったのです!
お庭の総合プロデューサー
植樹が行われた日、西来院には、造園家で中根庭園研究所の中根行宏さんの姿も。中根さんの祖父は、退蔵院や城南宮をはじめ、足立美術館(島根県)などの作庭で知られる中根金作。雲林院さんが住職を兼務する霊源院の作庭に続き、西来院のお庭作りにも携わられているのです。この日は、植えられていく木々の位置、高さや角度などを指示。この作業も、お庭の印象を決める大事なプロセスなのです。そして日を改め、1月下旬に中根さん指揮のもと、更なる大作業が行われることになります。
空から巨石を搬入。最も重いものは…
禅寺のお庭というと、石組も重要な構成要素のひとつ。お庭の西側にはすでに数石が据えられていましたが、東側にも石が配されることに。静岡県の天竜川で採られた天竜石で、現在では新たに採取できない非常に貴重なものであるそう。運び込まれた最重量の石は、約4トンにも及ぶのだとか!
お庭のシンボルともなりそうなのが、こちらの巨石。雲林院さんが「ひとめ惚れした」という一石で、インドから中国に禅を伝えた“達磨さん”を表現するものとして配されることに。どことなく人の表情にも見えませんか?
お庭への搬入自体が苦労の連続でしたが、作業はまだまだ難航を極めることになります。
微調整するのもひと苦労
この巨石を据える場所、そして微妙な傾斜角度を決めるために、中根さんはお堂に入ったり出たり、時にはかがんだり… 実は「石の正面」が、本堂に祀られる「蘭渓道隆坐像」と向き合うように、調整するためだったのです。
しかし、たとえ微調整であっても、重量のある石を動かすことは容易でありません。この石の設置が終わったのは作業開始から1時間半ほど。庭作りの途方も無い裏側を、目の当たりにすることになりました。
そして、ついに完成(?)しました
植樹と石組の作業を経て、雲林院さんの言う“一旦の完成”に至ったお庭は、現在開催中の「京の冬の旅」で鑑賞できます。そしてこの姿を見られるのは「今だけ」。というのも、3月の下旬頃に、西畠さんの「そら植物園」からさらに10本近くのドウダンツツジが運ばれ、新たに植えられるのだとか! まだまだ進化を続ける“祇園の森、西来院”の今後に、ぜひご注目を♪
特別イベントのお知らせ
2025年4月26日(土)に、貸切の西来院で、EX会員向けに西畠清順さんのトークショーを開催。お寺のシンボルともいえる「蘭」や「枝垂れもみじ」の植樹の背景や、世界中を旅した経験談、そして近年注目を浴びる“サステナブル”な取り組みに関してお話しいただきます。
また、ライトアップしたお庭鑑賞に加え、本プラン参加者限定のオリジナル切り絵御朱印をお受けいただけます。1日限りの貴重な機会に、ぜひご参加ください!
\プラントハンターが西来院に現る/
⇒【“蘭”に出会う寺・西来院】プラントハンター西畠清順トークショー
\西畠さんのインタビューも掲載/
⇒「京都サステナブルツーリズム」特設サイトはこちら
\プラントハンターが西来院に現る/
⇒【“蘭”に出会う寺・西来院】プラントハンター西畠清順トークショー
\西畠さんのインタビューも掲載/
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■西来院(通常非公開・「京の冬の旅」で公開中)
【公開期間】2025年1月10日(金)~3月18日(火)
【拝観時間】10:00〜16:30(受付終了)
【拝観料】800円
【アクセス】市バス「東山安井」バス停から徒歩約5分 Google map
【公式ホームページ】https://seiraiin.com/
【公式Instagram】https://www.instagram.com/seiraiin/
※掲載内容は2025年2月26日時点の情報です。最新情報は掲載先へご確認ください。