今しか見られない! 曼殊院の宸殿復興と黄不動特別公開

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昨年(2022年)10月、約150年ぶりに、曼殊院に宸殿が再建されました。皇族関係者が住職を務める門跡寺院にとって、宸殿は本堂にあたる重要な建物。その復興を記念して、曼殊院が所有する不動明王像(国宝、以下、黄不動)の特別公開が行われています。今後は秘仏とされ、一切公開される予定は無いそうなので、この機会を見逃すことはできません。今回は、再建された宸殿と黄不動についてお届けします!

曼殊院とはどういうお寺?

勅使門

勅使門

まずは簡単に曼殊院の由来を。もとは最澄が比叡山に開いたお堂が起源で、その後、「東尾坊(とうびぼう)」と呼ばれましたが、平安時代後期に曼殊院と改称。室町時代以後に、今の金閣寺相国寺付近を転々とした後、江戸時代初期に現在地へと移りました。
室町時代の慈雲大僧正が入寺して以降、“門跡寺院”となり、妙法院、三千院青蓮院毘沙門堂とともに、天台宗五箇室門跡のひとつに列せられています。

再建された宸殿

宸殿回廊

宸殿回廊

回廊を歩けば、まだまだ心地よい木の香りが漂う宸殿。時間の流れとともに、いずれ周囲の風景に溶け込むかのような佇まいになるでしょうから、真新しい白木の姿を拝見できるのは今だけかもしれません。
宸殿は、かつてと同じ場所に再建されたそうで、工事の際、礎石も発見されました。ところで、本堂にあたる宸殿がなくなった理由はなんだったのでしょうか。

宸殿は“病院”になった?

宸殿外観(特別な許可を得て撮影させていただきました)

宸殿外観(特別な許可を得て撮影させていただきました)

京都の歴史でよく耳にする「応仁の乱」や「火災」が原因・・・ ではなく、なんと「材木が病院の建物に転用」されることになったから。少し意外な理由ですよね。現在の京都府立医科大学付属病院の前身である京都療病院の建設に際し、明治5年(1872)に材木が寄付されることとなり、宸殿はその姿を消すことに。
それから約150年・・・ 再建にかかる莫大な費用を賄う浄財(寄付)を募る12年にも及ぶ全国行脚などを経て、宸殿は復興を遂げることとなりました。

ご本尊様もお越しになりました!

宸殿内部(特別な許可を得て撮影させていただきました)

宸殿内部(特別な許可を得て撮影させていただきました)

「門跡寺院にとって宸殿は本堂にあたり、天皇や住職の位牌を祀るだけでなく、重要な法要を執りおこなう場所です」と、執事長の松景崇誓さんは話します。これまで実質的な本堂とされていたのは、丸みを帯びたむくり屋根が特徴的な大書院。この大書院に祀られていた本尊の阿弥陀如来立像や、“おみくじの祖“として知られる元三大師像などが、再建に伴い宸殿に移されました。

まだまだ復興は続きます

宸殿内部(特別な許可を得て撮影させていただきました)

宸殿内部(特別な許可を得て撮影させていただきました)

外観や内観を一見すると、宸殿の復興は完了しているかのように思われますが、まだまだ資金は追いつかず、一部の仏具や室内を装飾する水引幕などが不足しているそう。引き続き寄付も募りながら、「完全復興」は今後も続くこととなります。
 
\宸殿復興の一助に! 皆さまからの寄付を募られています/

曼殊院の新名所? 宸殿前に枯山水のお庭が登場

盲亀浮木(もうきふぼく)の庭

盲亀浮木(もうきふぼく)の庭

宸殿の再建に合わせ、前庭となる「盲亀浮木の庭」が作庭されました。“100年に1度、息継ぎをするために水面に現れる盲目の亀の頭が、ちょうど流れてきた木の穴に偶然すっぽりはまった”、という光景が表現されており、仏教に出会うことや人に生まれることの難しさを語りかけるお庭です。とても開放的で、晴れの日は西方の山並みまで眺めることができ、新しい見どころとなりそう。

黄不動とご対面!

黄不動(特別な許可を得て撮影させていただきました)

黄不動(特別な許可を得て撮影させていただきました)

いよいよ主役のご登場です。宸殿の「上段の間」に掛けられているこちらの黄不動は、滋賀県にある三井寺[園城寺]の黄不動を模写したもの。模写された例は他にも多く存在するそうですが、現存するものとして最古かつ絵画表現上の秀逸さから国宝に指定されています。近年公開されたのは、平成29年(2017)に京都国立博物館で開催された「国宝」展でのこと。展覧会を前に2年の歳月をかけ行われた修復の際、“本邦初となる大発見”があり話題にもなりました。
 
\黄不動修復の際に、初の事例となる“あるもの”が発見されました/

公開は“最初で最後”となる予定

黄不動(特別な許可を得て撮影させていただきました)

黄不動(特別な許可を得て撮影させていただきました)

「国宝」展以来の公開となる黄不動ですが、修復後のものが曼殊院で公開されるのは今回が“初”となり、2023年6月30日(金)までの間、その姿をご覧いただくことができます。
里帰りした黄不動ですが、今後公開される予定は一切ないとのこと! “あるべき場所”で、修復を終えた黄不動を拝むことができるのは、今回が“最初”で“最後”のこととなりますので、かなり貴重な機会と言えそうです。

黄不動がもう1体?

  • 黄不動の模写(左)と実物(右)(特別な許可を得て撮影させていただきました)

    黄不動の模写(左)と実物(右)(特別な許可を得て撮影させていただきました)

  • 黄不動(模写 特別な許可を得て撮影させていただきました)

    黄不動(模写 特別な許可を得て撮影させていただきました)

さて黄不動のお隣であわせて公開されているが・・・そう、黄不動です。実はこちらは、愛知県立芸術大学の卒業生らが3年をかけて制作したもので、見た目にもやや明るく鮮やかに描かれています。今後、秘仏となる黄不動に代わり、法要などで使われる予定であるそう。当然、二幅を同時に拝見できるのも、今回の公開が最後となりますので、この機会をぜひお見逃し無く!

気になる“あれ”も授与されています

御朱印「黄不動尊」500円

御朱印「黄不動尊」500円

寺院の拝観の際に気になるもののひとつが「御朱印」ではないでしょうか。曼殊院では、「黄不動尊」と「竹の内御殿」の2種が授与されています。お不動さまとご縁を結んだお参りの証に、拝受されてはいかがでしょうか。
 
【拝観時間】9:00~17:00(受付終了16:30)
【拝観料】600円
     ※5月13日(土)~6月30日(金)は1,000円
【電話】075-781-5010
【アクセス】市バス「一乗寺清水町」バス停から徒歩約20分 Google map
【公式ホームページ】https://www.manshuinmonzeki.jp
■国宝 秘仏 黄不動明王像 里帰り特別公開
【日程】2023年5月13日(土)~6月30日(金)
【料金】1,000円
※掲載内容は2023年5月26日時点の情報です。最新情報は掲載先へご確認ください。

Written by. カツオ

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