国の登録有形文化財に! アートが散りばめられた「京都府立堂本印象美術館」をご案内

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金閣寺から龍安寺仁和寺へと続く「きぬかけの路」沿いに、ひときわ目を引く建物があります。京都出身の日本画家・堂本印象の作品を収蔵展示する京都府立堂本印象美術館です。
印象自らがデザインした建物は、今年(2025)8月、国の登録有形文化財に登録され、あらためてその価値が高まっています。堂本印象没後50年の節目の年にちなみ、現在は企画展も開催中。今注目を集める美術館を訪れました。

堂本印象とは

美術館の廊下には、堂本印象の写真が飾られています

美術館の廊下には、堂本印象の写真が飾られています

堂本印象は、明治24年(1891)に京都市で生まれ、大正から昭和にかけて活躍した日本画家。織物などの図案家として働きながら日本画家を目指し、27歳のときに京都市立絵画専門学校(現・京都市立芸術大学)に入学。翌年、第1回帝展に初出品した作品『深草』が入選。以降、風景・人物・宗教などを題材に幅広い作品を数多く残しました。

館内随所には、印象の抽象画が

館内随所には、印象の抽象画が

印象の画風は実に多岐にわたります。昭和初期は、仁和寺や東福寺東寺など有名寺院の障壁画を手がけ、戦後、大胆なデフォルメなど洋画的な新しい表現を取り入れるように。

そして、61歳のとき日本画家として戦後初めて渡欧。パリを中心にイタリアやスペインなどを約半年かけて周り、ピカソやレジェら現地の作家の芸術に感化され、多大なインスピレーションを受けます。帰国後はより躍動的な抽象作品へと変化し、墨など日本の画材を用いた印象独自の抽象画は、海外からも高い評価を得ました。

唯一無二の美術館をデザイン

白亜の壁面に施されたレリーフと黄色の装飾が特徴的

白亜の壁面に施されたレリーフと黄色の装飾が特徴的

昭和41年(1966)、75歳のときに自身の邸宅の隣に美術館を開館。当時、現役の芸術家が自身の美術館をつくるのはかなり稀なことでした。印象は自身の作品を広めるため、また芸術文化の振興のため美術館の構想を練り、ヨーロッパで巡った美術館や宮殿を参考に、外観や内装、ドアノブにいたる装飾品まですべて自身でデザインしました。
  • 建物のカーブは、衣笠山の稜線を意識してつくられたのかもしれません

    建物のカーブは、衣笠山の稜線を意識してつくられたのかもしれません

  • 印象直筆のレリーフ

    印象直筆のレリーフ

シンプルな建物が主流の現代において、堂本印象美術館は真逆。金工の装飾が美しいデコラティブなデザインが異彩を放ち、約60年前から唯一無二の存在感です。作家自身が創り上げたからこそ生まれた独創性が人々を魅了し続け、今年8月には国の登録有形文化財に登録されました。

堂本印象ワールドの館内へ

  • ガラス装飾『蒐核(しゅうかく)』

    ガラス装飾『蒐核(しゅうかく)』

館内に入ると、輝きを放つガラス装飾の作品に目を奪われ、これからはじまるアート空間に期待が高まります。
  • 木彫椅子

    木彫椅子

  • 印象のサイン

    印象のサイン

館内まるごとが印象によるデザインのため、至るところに作品が並びます。
2階の展示室の前には、木製の椅子がずらり。よく見るとすべてデザインが異なり、背もたれには印象のサインが入っています。

美術館デザインの際、印象が大切にしたのは“鑑賞者の視点に立つこと”。鑑賞の途中で休んでもらいたいという心遣いから椅子が配置されています。デザイン性だけでなく、座り心地の良さも魅力ですので、ぜひ、腰掛けてみてください。
  • ステンドグラス『楽園』

    ステンドグラス『楽園』

椅子のそばに展示されているのは、印象が昭和30年(1955)に福井県地方裁判所のエントランスホールに飾るために制作したステンドグラス『楽園』。こちらは実物の1/3に縮小したミニチュアです。
  • サロン

    サロン

  • レトロで可愛い案内表示

    レトロで可愛い案内表示

3階のサロンにも印象の作品が。椅子が並び、窓からは印象の旧邸宅や大文字山を見渡すことができます。

2階へと続くスロープ

2階へと続くスロープ

印象は、今では当たり前になっているバリアフリーを導入しています。一緒に暮らしていた足の不自由な母親のため、車椅子で回れるようにスロープを作りました。ここにも鑑賞者の視点に立つ印象の思いが宿っています。

ご紹介した木製の椅子やステンドグラス、サロンなど、館内は展示室以外、撮影可能なのも嬉しいですね♪

印象没後50年の企画展が開催中

展示室

展示室

美術館では堂本印象の作品を約2,600点収蔵し、年に4回、企画展を開催。企画展は常時60~80点の作品が展示されます。
  • 堂本印象《或る家族》昭和24年(1949)京都府立堂本印象美術館蔵

    堂本印象《或る家族》昭和24年(1949)京都府立堂本印象美術館蔵

  • 三輪晁勢《アゲハ蝶 鳳来峡》 昭和41年(1966)京都府立堂本印象美術館蔵

    三輪晁勢《アゲハ蝶 鳳来峡》 昭和41年(1966)京都府立堂本印象美術館蔵

  • 堂本印象《厨子入木造阿弥陀如来坐像》昭和38年(1963)京都府立堂本印象美術館蔵

    堂本印象《厨子入木造阿弥陀如来坐像》昭和38年(1963)京都府立堂本印象美術館蔵

今年の秋は、堂本印象没後50年を記念し、企画展「The Great DOMOTO —堂本印象の家族たち—」〈10月9日(木)~12月21日(日)〉を開催中。
印象には8人の兄弟妹がおり、長兄の寒星は古典芸能評論家、次兄の漆軒は漆芸家、義弟の森守明、三輪晁勢は日本画家、甥の堂本尚郎は洋画家という類まれな芸術一家。その堂本一族の作品が一堂に会する家族愛にあふれた企画展です。
妹と姪をモデルに描いた『婦女と卓子』をはじめ、15点もの初公開作品が登場。期間中は担当学芸員によるギャラリートークや室内楽コンサートも開催されます。日程・詳細は公式ホームページでご確認ください。

応接室。壁面の作品は印象が描いた『美しい星座』

応接室。壁面の作品は印象が描いた『美しい星座』

また、京都で大切に守り継がれてきたモダン建築を日時限定で特別公開するイベント「京都モダン建築祭」に今年から参画しており、11月8日(土)・9日(日)は「京都モダン建築祭」のパスポートを提示すると、普段非公開の応接室に入室できます。

⇒「京都モダン建築祭」の詳細はこちら

充実のミュージアムグッズを記念に

  • 印象がフランスでスケッチした鍵の絵がモチーフのキャンディ缶 各500円

    印象がフランスでスケッチした鍵の絵がモチーフのキャンディ缶 各500円

  • 印象と親交のあった近くの京菓子店「笹屋守栄」とコラボした焼き菓子。左手前が梅あん250円、ほか2つがつぶあん220円

    印象と親交のあった近くの京菓子店「笹屋守栄」とコラボした焼き菓子。左手前が梅あん250円、ほか2つがつぶあん220円

  • 印象が21歳の頃に描いた挿絵付きの短歌・詩集「いの字絵本」復刊1,500円

    印象が21歳の頃に描いた挿絵付きの短歌・詩集「いの字絵本」復刊1,500円

  • 京都のテキスタイルブランド「プティ・タ・プティ」とコラボしたグッズ

    京都のテキスタイルブランド「プティ・タ・プティ」とコラボしたグッズ

美術館といえば、ここでしか買えないミュージアムグッズも見逃せません。キャンディや京菓子、書籍やポストカード、ステーショナリー、京都のテキスタイルブランドとコラボしたオリジナルグッズまで幅広いラインアップです。

無料散策ができる庭園

  • 庭園

    庭園

建物横には無料で散策が楽しめる庭園があります。作品鑑賞の後は、印象デザインの椅子に腰掛け、ゆっくりひとやすみしてみてはいかがでしょう。

山のアトリエ(建物内は非公開)

山のアトリエ(建物内は非公開)

庭園の奥には、印象が実際に使用していた「山のアトリエ」が。じつは、こちらも美術館と共に国の登録有形文化財に登録された貴重な建物です。

堂本印象没後50年という節目の年に、国の登録有形文化財となった堂本印象美術館。さらに、来年は記念すべき開館60周年を迎えます。印象のパッションがほとばしる独創的なアート空間で、芸術の秋を楽しんでください!

■京都府立堂本印象美術館
【開館時間】9:30~17:00(受付終了16:30)
【入館料】一般580円 ※特別企画展の入館料は展覧会ごとに異なります
【休館日】月曜日(祝休日の場合は翌平日)、年末年始(12月28日~1月4日)※その他、展示替えなどで臨時休館することがあります
【アクセス】市バス「立命館大学前」バス停から徒歩すぐ Google map
【公式ホームページ】https://insho-domoto.com/
【公式Instagram】https://www.instagram.com/domoto_insho/

⇒京都国立近代美術館では「没後50年 堂本印象 自在なる創造」〈10月7日(火)~11月24日〉を開催中!
※掲載内容は2025年10月15日時点の情報です。最新情報は掲載先へご確認ください。

Written by. 「そう京」編集部

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