京都の紅葉名所「東福寺」、知られざる見どころをチェック!

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京都のお寺探訪 5


秋の紅葉、初夏の青もみじ。渓谷を埋めるカエデの美しさに、訪れる人の絶えないお寺・東福寺。でも、その魅力はけっして自然美だけではありません。京都を代表する禅寺だけに建築物やお庭など、境内のいたるところに“見どころ”がいっぱい。注目すべきポイントや、2020年秋の拝観情報について、ご紹介します。


【その1】京都駅からアクセス便利♪
まずは、“建物”のスケールを体感しましょう!


「京都駅」からJR奈良線の「東福寺駅」までは約3分。そこから歩いて約10分。臨済宗東福寺派の大本山・東福寺は京都駅から僅か15分ほどで到着できる、便利な場所に位置します。

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訪れたときにまず驚くのは、建物の大きさ妙心寺は「算盤(そろばん)面」、建仁寺は「学問面」、大徳寺は「茶面」、東福寺は「伽藍(がらん)面」と称されるほどに、スケールの大きな伽藍が特徴的です。

「伽藍」とは、お寺の建物のこと。お寺が備えるべき諸設備を「七堂伽藍(しちどうがらん)」と総称しますが、東福寺は禅宗のお寺としては最大級の大きさの七堂伽藍を誇ります。主要な建物をご紹介します。


■三門(国宝)


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境内の最も南にある「三門」。現在の門は応永12年(1405)頃に再建されたもので、禅寺の三門としては日本最古にして最大。国宝に指定されています。5つの柱と3つの入り口がある「五間三戸(ごけんさんこ)」という造りで、二階建ての構造です。

2009年の「そうだ 京都、行こう。」夏キャンペーンでは、この三門の楼上から親子が法堂(はっとう)を眺めていました♪

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二階の内部には、画家・明兆(みんちょう)の手による極彩画が描かれ、宝冠釈迦如来(ほうかん しゃかにょらい)などの仏像群が並びます。普段は拝観できませんが、毎年3月14日~16日の涅槃会(ねはんえ)の時などに特別公開されています。

★令和2年度「第56回京都非公開文化財特別公開」にて法堂・三門が特別公開されています。
【日程】2020年9月1日(火)~12月13日(日)
⇒詳細はこちら
 


■法堂


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三門の北に建つのが、東福寺の本堂である「法堂」。かつては、高さ15メートルもある釈迦如来像が祀られていたそうなのですが、明治の火災で仏殿も仏像も焼失。現在の建物は昭和9年(1934)に再建。ご本尊は塔頭寺院から移された、13世紀後期制作と伝わる釈迦如来立像です。


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内部には入れませんが、外からのぞくと、ご本尊様とともに、異様な龍の天井画が見えます。これは、日本画家・堂本印象がわずか16日間で描き上げたという、渾身の作。忘れずチェックしてくださいね♪

★令和2年度「第56回京都非公開文化財特別公開」にて法堂・三門が特別公開されています。
【日程】2020年9月1日(火)~12月13日(日)
⇒詳細はこちら


■本坊(方丈)


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禅宗寺院における僧侶の住居を指す「方丈」。東福寺では、法堂の北側に位置し、国指定名称に登録される「東福寺本坊庭園」で有名です。法堂と同じく、明治の火災で焼失しましたが、明治23年(1890)に再建。庭園は昭和14年(1939)、作庭家・重森三玲の手により、鎌倉時代の風格を基調にして完成されました。拝観の際には、写真右手の庫裏から入室します(東福寺本坊庭園 500円)。

■禅堂・東司・浴室


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禅堂


三門の西側に並び建つのが、「禅堂」「東司(とうす)」。どちらも明治の火災を免れ、中世禅宗建築の様式を今に伝えています。

「禅堂」は、日本最大にして最古の坐禅道場。毎週日曜日には、一般参加ができる「日曜坐禅会」が行われています。※掃除6時~、坐禅6時半~7時半。参加無料。臨時休会あり
「東司」は室町時代前期に建立された日本最古の“トイレ”。
そして、三門の東側に建つ「浴室」は、東大寺(奈良県)の大湯屋に次ぐ日本で二番目に古い建物。最大級・最古級を誇る堂宇が並び、長い歴史を感じるとともに、たくさんの僧が修行されてきたことを実感できます。


【その2】フォトスポットは、やっぱり“橋”。紅葉スポットもチェック!


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通天橋


東福寺で“絵になる場所”といえば、「橋」。境内を東西に横切るように「洗玉澗(せんぎょくかん)」という渓谷があり一筋の川が流れているのですが、その上に架かるのが、臥雲橋(がうんきょう)通天橋(つうてんきょう)偃月橋(えんげつきょう)の“東福寺三名橋”と称される3つの橋です。

橋の詳細については、下記のブログをご覧ください。
⇒【京さんぽ】2018年は“橋”にご注目! 渡月橋・宇治橋・通天橋など

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臥雲橋


「臥雲橋」は一番西側にある木造の橋。地域の方の生活道路ともなっているため、拝観料がかからずに通ることができます。そのため、紅葉のピーク時には特に賑わい、「撮影禁止」や、一方通行となることもあります。


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通天橋


「通天橋」は、三名橋のなかで最もフォトジェニックな橋。眺めの良さから観光用の橋と思われがちですが、けっしてそうではなく、本来は修行僧が渓谷を渡らなくてもいいように、本堂(仏殿)と開山堂をつなぐために架けられた“修行の橋”です。渡るには、拝観料が必要です(通天橋 1,000円※秋季)。


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偃月橋


「偃月橋」は、慶長8年(1603)につくられた木造の橋廊。方丈の東側にあり、塔頭(たっちゅう)寺院の龍吟庵(りょうぎんあん)や即宗院(そくしゅういん)へ行くための橋です。明治の大火で主要な建物が焼失した東福寺にあって、歴史を繋ぐ重要な橋ですが、普段は訪れる人の少ない“隠れスポット”です。

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撮影日:2019年11月29日


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撮影日:2019年11月29日


洗玉澗は、橋から眺めるのも素晴らしい紅葉景色が望めますが、晩秋の頃、散り紅葉に覆われる渓谷を歩くのも風情があります。

【その3】庭が現代アートに。重森三玲が手がけた“お庭”は必見!


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北庭


紅葉とともに最近人気を集めているのが、苔を配した市松模様の庭。そのお庭があるのが、「本坊」です。本坊の中心となる方丈をぐるりと囲むように4つのお庭があり、そのどれもが作庭家・重森三玲(しげもり みれい)の手によります。しかも、昭和13年(1938)、三玲43歳のときに作庭家デビューを飾った、記念すべきお庭です。数々の名庭を生み出していくはじまりの地と思うと、なんだかワクワクしてきませんか?



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南庭(左上)、東庭(右上)、西庭(左下)、北庭(右下)


方丈の前にあるのが「南庭」。東に仙人の住む島に見立てた巨石が配され、西には京都五山になぞらえた苔山が。

南庭からつづく「東庭」は少し小さなスペースで、北斗七星を表す石が埋め込まれています。

「西庭」は、さつきの刈り込みが大胆に配置され、北庭と比して「大市松模様の庭」とも呼ばれます。

「北庭」が、有名な市松模様のお庭。「小市松模様の庭」とも呼ばれる斬新な意匠が特徴で、“永遠のモダン”を追求していた三玲ならではのアートのようなお庭です。

80年ほど前に作庭されたお庭ですが、2014年に作庭当時の姿に戻され、今も若き三玲の情熱やイマジネーションを体感できるお庭となっています。


【その4】もう一歩踏み込んで、東福寺の“歴史”を知る!


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常楽庵


おおよその東福寺の見どころをめぐったところで、もう少し踏み込んだ知識を。

壮大な伽藍を特徴とする東福寺。実は、“奈良のお寺”を意識しているため、といいます。規模の大きさを誇る「大寺」と、優れた教えの「興寺」。この2つのお寺から名前を取り、当時の京都で最大規模の伽藍を目指し、嘉禎2年(1236)に工事がスタート。そして、建長7年(1255)に完成。なんと、19年もの歳月がかかりました!

公卿・九条道家が発願し、開山は「円爾弁円(えんに べんえん)」。鎌倉時代の高僧で、「聖一国師(しょういち こくし)」という国の師を意味する“国師号”を贈られた、最初の人物です。博多山笠の祖、静岡茶の祖、“日本で初めて作られたまんじゅうを食べた”など、様々な逸話を遺されている方なんですよ。


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聖一国師が祀られるのが、通天橋の先にある「常楽庵(じょうらくあん)」。門を入ると、眼前に開山堂があり、その左右には、「枯山水」と池を配した「鑑賞式」、二つの庭が広がります。角度によって別の顔がのぞめる、不思議なお庭です。


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聖一国師が宋(中国)から持ち帰ったといわれているのが、「通天もみじ」。唐楓(とうかえで)とも呼ばれ、葉先が3つに分かれているのが特徴。秋になると赤ではなく黄金色に染まりわかりやすいのですが、青葉の時季は探しにくいもの。洗玉間を中心に約2,000本あるというカエデの中から、ぜひ探してみてください♪


【その5】個性あふれる“塔頭寺院”をめぐる!


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芬陀院


東福寺の魅力は、お寺の周りを囲む25の塔頭(たっちゅう)寺院によって、さらに高められます。そのなかには通常公開や特別公開を行っている寺院もあり、いくつかの寺院をピックアップしてご紹介いたします。ぜひ、合わせて立ち寄ってみてくださいね♪

【光明院(こうみょういん)】 虹の苔寺と讃えられる。(通常公開)
【芬陀院(ふんだいん)】 雪舟ゆかりのお寺。鶴亀の石が配された苔庭がすばらしい。(通常公開)
【同聚院(どうじゅいん)】 藤原道長ゆかりの、2メートルを超える巨大な不動明王を祀る。(通常公開)

【天得院(てんとくいん)】 桔梗と杉苔、紅葉の美しさで有名。(初夏・秋に特別公開)
【龍吟庵(りょうぎんあん)】 日本最古の方丈建築があり、庭は重森三玲の作庭。(春・秋に特別公開)
【正覚庵(しょうがくあん)】 「筆の寺」として名高く、堂内に巨大な筆が祀られている。(通常非公開)

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紅葉だけではない東福寺の魅力。季節を問わず、禅の心と日本の歴史に触れられる、そして撮影スポットも多い東福寺を、訪ねてみてくださいね♪

■東福寺
【拝観時間】9:00~16:30(受付終了16:00)
※11~12月初旬は8:30~、12月初旬~3月は16:00まで(受付終了15:30)
【拝観料】本坊庭園500円、通天橋600円、本坊・通天橋共通1,000円
※秋季(11月10日~30日)本坊庭園500円、通天橋1,000円(共通券の設定なし)
【電話】075-561-0087
【アクセス】JR奈良線・京阪本線「東福寺駅」から徒歩約10分、京阪本線「鳥羽街道駅」から徒歩約8分  Google map
【公式ホームページ】http://www.tofukuji.jp/
【公式Instagram】https://www.instagram.com/tofukuji_zen_temple/?hl=ja


♪2020年秋の耳寄り情報♪ 

■東福寺 早朝先行特別拝観(往復新幹線+宿泊付プラン)
【実施期間】2020年11月22日(日)~12月7日(月)
⇒詳細はこちら

■東福寺夜間拝観(完全予約・三部制)
【実施期間】2020年11月18日(水)~30日(月)
⇒詳細はこちら
※定員となり次第締切

 

Written by. みさご

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