季節は初夏から夏へ。古来、京都で暮らす人々は酷暑をしのぐため、さまざまな工夫をし、五感で涼を取り入れてきたといいます。涼しげなお花を眺めるのも、心地よい夏の過ごし方のひとつではないでしょうか。雨に濡れ鮮やかさを増す紫陽花、水辺の睡蓮や半夏生、朝いちばんに愛でたい蓮など、涼を感じるシーン別に花めぐりをお楽しみください。
雨に濡れ、美しさが際立つ花【紫陽花】
6月、梅雨のシーズンに見頃を迎える紫陽花。しっとり雨に濡れた花々は美しさを増し、涼しげでもあります。京都の名所では、紫陽花のライトアップや花手水など楽しみ方もいろいろ。年によって咲き方が異なり、“ハート型の紫陽花”が登場することも。潤いに満ちたカラフルな絶景は格別です。
おすすめの名所
三室戸寺
京都屈指の“花の寺”といわれ、約2万株の紫陽花が咲き誇ります。数はさることながら種類も豊富で、カラフルな風景となり見応え十分。「お花に癒されてほしい」との思いから、ご住職自ら手入れに携わられています。週末限定開催の紫陽花ライトアップもお楽しみに。
【例年の見頃】6月中旬~下旬
善峯寺
西山の中腹に堂宇を構えるお寺です。「白山・桜あじさい苑」には、斜面を埋めつくすように咲く紫陽花。高台から見下ろすと山寺ならではの絶景が広がり、苑内の散策路から仰ぎ見るのもおすすめです。雨の日は境内に霧が立ちこめ、幻想的な雰囲気がただよいます。
【例年の見頃】6月中旬~7月上旬
三千院
京都市北部に位置するため、街中より少し遅れて紫陽花が見頃を迎えるスポット。金色不動堂の手前にある「あじさい苑」では、杉木立に咲く艶やかな花の散策路を歩きます。多彩な色の中でも、特に青い花が多く見られるのが特徴です。期間限定で可愛らしい「あじさい守り」も授与されます。
【例年の見頃】6月中旬~7月上旬
藤森神社
紫陽花名所の多くは郊外に位置しますが、藤森神社は気軽に訪ねることができます。例年6月上旬より1ヵ月にわたり「紫陽花まつり」を開催。紫陽花苑では、花々に包み込まれるように楽しめます。日にち限定で雅楽や蹴鞠奉納が行われ、参拝後は紫陽花の特別御朱印を拝受しましょう。
【例年の見頃】6月上旬~7月上旬
岩船寺
当尾(とうの)の里にたたずむ古寺で、別名「あじさい寺」。人の背丈ほどある紫陽花が池周りに咲き、しっとりとした風情ただよう境内に鮮やかに映えます。三重塔とのコントラストも見事で、雨の日には一層際立つ美しさ。スイレン鉢に紫陽花を浮かべた可憐な花手水も人気です。
【例年の見頃】6月上旬~7月上旬
柳谷観音 楊谷寺
長岡京の自然豊かな山中にあり、高台から境内を眺めれば、お堂がパステルカラーの花々に彩られます。ハートやクローバーの意匠が施されたベンチ越しに眺める紫陽花も美しく、写真映え抜群です。本堂と奥の院を結ぶ「あじさい回廊」など見頃が遅い場所もあるので、長期に渡って楽しめるのも魅力。
【例年の見頃】6月上旬~7月上旬
お堂から眺める花【桔梗・半夏生】
ジリジリとした夏の陽射しを避け、お堂のなかからお花鑑賞はいかがでしょう。腰掛けて眺めていると、時折、堂内を風が吹き抜けていきます。クーラーではない、自然の風は心地よいもの。桔梗や半夏生をさまざまな窓越しに楽しむのも一興です。
おすすめの名所
東福寺 天得院
京都駅からのアクセス便利な桔梗の名所。桃山時代作庭という歴史ある枯山水庭園に桔梗が咲き誇り、花頭窓越しに眺めるお庭はアートのようです。紫・白の花と杉苔のコントラストが美しく、なかには珍しい八重の桔梗が。見つけることができたら、幸運が訪れるかもしれません。
【例年の見頃】6月中旬~7月上旬
建仁寺 両足院
半夏生の寺として有名な、建仁寺の塔頭寺院。京都府の名勝に指定される庭園では、池周りを半夏生の白い葉が包み込み清涼感たっぷり。お庭散策もできますが、書院からゆっくり楽しむひとときは格別です。特にガラス戸越しの半夏生のお庭は、人気の撮影ポイントです。
【例年の見頃】6月中旬~7月上旬
廬山寺
『源氏物語』に登場する朝顔とは、現代でいう桔梗のこと。それにちなみ、紫式部の邸宅跡と伝わる廬山寺の「源氏の庭」には桔梗が植えられているそう。白砂のなか、緩やかな曲線を描く苔に咲く紫の花は風情があります。本堂前の縁側に腰掛けて、じっくり眺めてみましょう。
【例年の見頃】6月下旬~9月上旬
水辺に咲き誇る花【睡蓮・半夏生】
京都のお寺・神社には水をたたえる「池泉庭園」が多く、この時季は睡蓮や半夏生が彩りを添えます。水面に浮かぶのは、可憐な睡蓮。蓮に比べ、長期にわたり楽しめるのも魅力です。一方、池を包む水辺には半夏生。葉の半分がお化粧をしたように白く変化する植物で、辺り一面が清廉とした雰囲気になります。
おすすめの名所
平安神宮
四季折々に美しい自然豊かな神苑があり、中神苑の蒼龍池と西神苑の白虎池では、ピンク・白・黄色の睡蓮が涼やかに水面を彩ります。蒼龍池の北西では、葉に隠れるように黄色い花を咲かす河骨(こうほね)の群生も。小さくて可愛らしい花姿を探してみてください。
【例年の見頃】5月中旬~9月上旬
勧修寺
山科にたたずむ、知る人ぞ知る花の寺。観音堂前に広がる氷室池で、水を好む花が次々に咲き誇ります。鮮やかな睡蓮にはじまり、半夏生の時季は一面に雪が降ったような光景に。蓮は遅咲きの品種がメインで見頃は例年8月上旬から。池に泳ぐ鯉もお花を楽しんでいるようです。
【例年の見頃】睡蓮:5月中旬~6月下旬、半夏生:6月下旬~7月中旬、蓮:8月上旬~下旬
等持院
池を中心に東西2つの庭園があり、半夏生が多く見られるのは東の庭。草書体の「心」の字を象った心字池の岬を白く染め、その清廉な様子は奥深い庭の趣意を象徴するかのようです。風のない天気の良い日には、半夏生が水面に反射する素敵な写真が撮れることも。
【例年の見頃】6月上旬~7月上旬
朝に見たい花【蓮】
早朝に花開き、お昼には花を閉ざすという蓮。見頃の時季には拝観開始時間を早めるお寺があるほど、朝に愛でてほしいお花です。水面からまっすぐ伸ばす茎の先に、ふっくらとした大輪を咲かせます。咲きそろうと、まさに極楽浄土のよう。花名所の三室戸寺では、健康・長寿を願う「ハス酒を楽しむ会」の開催も。
おすすめの名所
旧嵯峨御所 大本山 大覚寺
人気の観光エリア「嵐山」のほど近くにある門跡寺院。境内東側の周囲1キロもある大沢池は、夏になると蓮の花が咲き誇り圧巻の風景が広がります。この蓮は「名古曾(なこそ)」と呼ばれる古代蓮で、寺独自の品種だそう。池周りを歩きながら心経宝塔や五大堂を望むと、絵になる蓮が楽しめます。
【例年の見頃】7月中旬~8月下旬
東寺
京都駅から徒歩圏内にあり、アクセスも便利。五重塔を背に咲く蓮の花は、夏の東寺を代表する景色となっています。早朝5時から境内の拝観が始まるのもうれしいポイント。早起きして訪ねてみれば、いくつものピンクの花が開花する幻想的な光景に出合えるかもしれません。
【例年の見頃】7月上旬~8月下旬
法金剛院
通称「蓮の寺」とも呼ばれる名所。蓮が見頃を迎える7月に「観蓮会」を開催され、期間中は7時半から拝観可能となります。本堂前の鉢植えに咲く蓮も見事ですが、特に見どころは国の特別名勝にも指定される回遊式浄土庭園。凜とした花々が咲きそろう光景はまさに極楽浄土のような美しさです。
※拝観日は公式ホームページでご確認ください。
【例年の見頃】7月中旬~8月中旬
【番外編】夏を感じる花
“涼”だけでなく、「これぞ、夏!」を感じるお花も見逃せません。夏の青空に映える、鮮やかな百日紅と向日葵は眺めているだけで、元気がわいてきそうです。
花と楽しみたいイベント
特別拝観
妙心寺 東林院【沙羅双樹】
朝に咲き夜には散ることから「一日花」と呼ばれる沙羅の花。京都で沙羅双樹といえば、妙心寺塔頭の東林院が挙げられます。本堂前に沙羅林があり、苔庭に散る様子は儚くも美しい。例年「沙羅の花を愛でる会」が行われ、抹茶(和菓子付)や精進料理を味わいながらお庭を楽しめます。
【例年の見頃】6月中旬~下旬
建仁寺 両足院【半夏生】
両足院の代名詞ともいえる草花が、半夏生です。池周りを真っ白に染め上げる、涼しげな半夏生の光景は京都随一。お庭は回遊式になっていて、様々なアングルから楽しんでみましょう。お土産には、特別公開でしか購入できない菓子工房・御菓子丸特製の「はんげしょうの宝珠」を。
【例年の見頃】6月中旬~7月上旬
東福寺 天得院【桔梗】
桔梗と紅葉の時季にのみ拝観ができる、東福寺の塔頭寺院。杉苔の庭園に桔梗が咲き誇り、コントラストの美しい風景を作りあげています。抹茶と桔梗をモチーフにした和菓子を味わいながらお庭を眺めると、より深い思い出になりそう。特別拝観限定の御朱印も用意されています。
【例年の見頃】6月中旬~7月上旬
夏の草花の開花時期
※開花時期は、鑑賞スポットによって異なります。
※写真はイメージです。
※掲載内容は2022年6月24日時点の情報です。最新情報は各掲載先へご確認ください。